前のエピソード――第51話　海菜せんせー

　今、ウチは山梨さんの妹の、海菜さんに色々教えてもらっていた。

　今まで気にしていなかったことばかり飛び出してきて、こういうのを目から鱗が落ちるというのかもしれない。

「配信でのなれなれしい口調も今まで通りでいい。今後変えたりしたら今いる視聴者は少なからず離れる」

　ただ、少し口が悪い気がする。

　山梨さんは優しいと言ってた気がするけど、身内びいきってやつだったのかな？

「でも、何か変えないと何にも変わらない……さっきの男女比も強みではあるんだろうけど、今の形を崩そうとするのには邪魔だし……」

　こうやって山幸さんのことも手伝ってたりするのかな？

「何かしたいことある？」

「え、う、ウチ？」

「そう」

「え、えっと～……」

　したいことは、もうすでに結構やってる気もする。

「ないなら……もういっそはっきり男性向けと女性向けに配信分ける手もある。ま、それをするなら配信時間は2倍にしないとだけど」

「に、2倍！？」

「仮定の話。見る側、例えば女の視聴者にたまたま時間ができたとかで、配信見ようとした時に、男性向けの配信してたとかで離れてくこともあるだろうし。特に、間に合ったと思ったら、やってたのが異性向けの配信で、同性向けのは終わっちゃってたとかだと落胆する。そういう些細なことで登録者は離れる。代わりがいるから」

「つまり……？」

「……これもなし。純粋に配信時間を伸ばすのは、誰でも思いつくけど一番成功の可能性が高い方法でもある」

「け、結構単純なんですね」

「誰でも思いつくけど、実行するのは難しかったりする。これからの配信全て1時間伸ばすだけで負担はかなり大きくなる」

　1時間は、確かにやろうと思えばできる、と思う。

　けど、すぐにバテると思う。

　途中で今と同じくらいに戻っていたりしそう……

「それで？」

「え？」

　じっと海菜さんがこちらの目を覗き込んだ。

「な、なんですか……？」

「どうしてコラボしない？」

「え……そ、それは……」

　うみくんを目標にしてるからです、なんて……

「『山幸うみ』を真似しているなら今すぐやめるべき」

「……」

　バレてるし……

「『山幸うみ』は、コラボをしないことによるメリットとコラボをしたことによるデメリットを考えて、今の形になってる。でも、『銀河水玉』は、コラボすることによるメリットが大きいように思える。それとも、特別な事情がある？　別に個人的な理由でもいい。他人とうまく話せないとか、そういうくだらない事情でも許す」

「く、くだらない……」

「苦手なら苦手じゃなくなるまで、たくさんコラボすればいい。どうしても治らないような、病院で診断された病気なら、それをネタにして周知すればいい。それで、コラボに誘われるのを待って、誘われたら参加する。うまくしゃべれなくても誘ってきた相手のせい。こっちの事情をよく知らずに誘ってくる相手なら一度だけのコラボで切っていい」

「ひ、ひどくない……？」

　結構、なんていうか、強烈な子だなぁ……

　まあ、さっきから少しそう思っていたけど、ここまでとは。