第53話 向き合いましょう

「あなたは多分コラボに向いてる」

「え?」

「普通のVは使いやすいから」

「普通……」


 それって悪口なんじゃ……?

 まぁ、ウチだって自分が何か特徴あるとは思ってないけど。

 さっきから何回も普通といわれるとへこむ。


「わかってないみたいだから言うけど、個人で一万超えれる方が小数」

「そうなんだ?」

「普通知ってるべき」

「だ、だって……」

「どうでもいい」


 うみくんしか見てないからと言おうとしたのに遮られた。


「そもそも、Vは新規を取り入れるのが難しい。箱が存在しない個人は特に」

「箱?」

「……まぁ、いい。とにかく、コラボをするのは、コラボ相手から視聴者をとってこれる可能性が生まれる」

「とってくるって……」

「あなた、学校は行ってる?」

「あの……今更ですけど、名前で呼んでもらって大丈夫ですよ?」

「そう、じゃあ、宙音。学校は?」

「行ってますけど」


 行かないと配信とかさせてもらえないし、成績が下がってもやめさせるって言われてる。


「友達はいる?」

「い、いますよ?」

「それは非オタ?」

「えっと、オタクよりですかね……」


 本当はガチガチの腐女子だけど。


「わかってると思うけど、非オタにアニメ絵はきつい」

「ま、まぁ、そうですよね」

「最近は漫画を読む人、アニメを見る人も増えたから嫌悪感は少しずつ減ってるけど、それでも残ってる。冷静に考えればこれだけ目の大きい人間なんていない」

「そ、それは元も子もないんじゃ」

「そう。元も子もない。だからこそ、イヤな人は一生見ない」

「それはそうですけど……」

「テレビ番組だったら、嫌いな人が一人出ていても、その番組が好きだったり、別の出演者が好きだったりすれば、その番組を見続けたりすることはあるかもしれない。でも、配信者は嫌われたら終わり。戻ってなんかこない」


 それは、そう。

 最初の方に見に来てくれていた人の名前を見なくなったなと感じるときはあった。


「ただでさえVはハンデを背負ってると思った方がいい。それに、登録者を他のVにとられるなんていくらでもある話。一日は24時間しかない」

「だから、コラボをするんですか?」

「そう。コラボ相手は当然Vなんだから、その視聴者はVにそこまでの抵抗感がない。全員が一つ目の壁は突破してる」

「それは、でも……コラボですか」

「『銀河水玉』とコラボしたいって相手も同じことを考えてる。少しでも視聴者を奪ってやろうって」

「そんなこと」

「……なら、これは性格が悪かったらって考えて。もし性格が良かったとしたら……『銀河水玉』のファンだとか、大人数で遊ぶのが楽しいとか?」


 急に適当に……


「でも、コラボは両方に得がある。単純に、視聴者にアピールができる」

「アピールですか?」

「そう。これは、コラボの主催者が一番恩恵を受けるだろうけど、まずは、『自分はこれだけ人望がありますよ』ということ」

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