第49話 みんないろいろ考えている。

「それで私にってこと~?」


 星那さんから海菜の連絡先を教えてほしいと言われた旨を話した。


「海菜なら解決してくれるかもって」

「兄ちゃんのことしかわかんないんだけど~?」

「そうか?」

「ん~……兄ちゃんはどうしてほしい?」

「ちょっと考える」

「わかった~」


 海菜は自分の部屋に戻っていく。

 正直に言えば、宙音さんとそこまで深い関わりがあるわけでもないし、本当に困っているのかも定かじゃない。

 それに、本当に協力することになったとして、海菜に負担をかけてしまう。

 何より、宙音さんと一切関係のない海菜が進んで協力したがるとも思えない。

 個人的に、山梨海斗として協力することはできても、山幸うみとして協力はできない。


「……どうしようかな」



\\\



「……どうしようかな」


 扉越しにそんなつぶやきが聞こえる。

 それを聞いて、私は自室に戻った。

 『銀河水玉』のことは、コラボ依頼が来たときに少し調べた。

 『山幸うみ』について雑談の中で話していたこともあったが、それが新規視聴者を取り入れるための話題であった可能性も考えていたけれど、実際にファンだったらしい。

 コラボも一切していないのも、『山幸うみ』の真似なのかもしれない。

 もしくは、他のVを知らないか。

 実際に『山幸うみ』にどれほどのコラボ依頼が届いているのかは当然知らないだろうが、『銀河水玉』よりはコラボするメリットのあるVからも来ていることを想像するのは難しくないはずだ。

 それでも送ってきたという点ではそこまで嫌いではなかった。

 でも、今は嫌いだ。

 騒がしくするならよそで騒いでほしい。

 兄ちゃんを巻き込まないでほしい。

 最悪、『山幸うみ』を巻き込んでも、兄ちゃんの負担にならないでほしい。

 『山幸うみ』に群がってくる人間はネット上にはいくらでもいるのだから、現実でも纏わりついてくる可能性も考えていた。

 でも、兄ちゃんは優しいから、簡単に口を滑らす人間に対してもあまり注意していないのだろう。

 そういう意味で、私が忠告する機会として使うのは別に悪いことではないことかもしれない。

 どう転ぶにしても、私は兄ちゃんの意見を尊重するだけだ。



\\\



「宙音ー?」

「なに?」


 宙音はいつもと変わらない格好でベッドにごろごろしてる。


「大丈夫ー?」

「なにが?」

「配信辞めるの?」

「だーかーらー、休止だって」

「何かあったのー?」

「別に。ちょっと疲れたから」

「あのね、カイトに相談したんだけど」

「は?」


 宙音がいきなり飛び起きた。


「何してんの!?」

「だってー……」

「だってじゃないし! もー、どうしてそうやって……」

「あのね、カイトもカイトの妹の、海菜ちゃんに相談してるんだって! だから、連絡先教えてくれないかって言ったんだけど……」

「うみくんの相談相手……」


 なにか悩んでる?


「やっぱり、面識もない人に迷惑かけられない」

「やっぱり悩んでるじゃん。カイトにそういっておくからね」

「ほんとにやめて」

「せっかく協力してくれるんだから遠慮しなくていいんだよー?」

「それはお姉ちゃんが言うことじゃないでしょ」


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