第41話 ばいばいサメくんお元気で
正直に言えば、この画面に飽きてくるころだろうし、はやくクリアしたいのだけど、全力でやってこれなわけで。
「うわっ! またさっきと同じ死に方しちゃいましたー……」
深呼吸をして、肩を回して、再開。
歯や触手をかいくぐって。
「さてさて、ここからですね!」
たしかにコメントの通り、サメくんのえらの位置が光っている。
「さて、これどうすればっと!」
触手を避ける。
「って、これですか! もしかして!」
ほかの触手はバラバラの動きをしているのに、一本だけイワシ子ちゃんを追いかけるように伸びてきて、曲がっても追尾してくる。
「これ、あれですね! ウミネコ要素!」
一度下方向に動き、サメくんのえらに向かって斜めに上昇、えらギリギリで避ければ……
「よっし! 初めて体力減らせました!!」
触手が当たった瞬間にさらに暴れ始める。
そして、次は背びれの方が光り始める。
「これ、回り込まなきゃダメですよねー」
えらに触手がくっついたままなので、サメくんの後ろを通って上に行かなければいけない。結構急がないと、うまく当てられないかもしれない。
「サメくんもうちょっと、左側行ってくれないかなぁぁ」
狭い。が、行けなくもない。
「今回でクリアしますよっ!!」
うまく当てられて、次はサメくんの腹。
歯の数が増えたり、スピードが上がったり、触手が伸びたりしているけど、もう慣れた。
「いけますいけます!」
腹に当て、次に行こうとして、サメくんが暴れた。
上下に動くサメくんに付いた触手もつられて動く。
そして、触手が外れた。付いていた場所から血が流れ、海を汚す。未だ飛んでくる歯をさらに覆い隠す。
「これはー、初めからですかね……」
再び、えらが光りだす。
でも、落ち込んでいる場合じゃない。タイマーは動き続けている。つまりこれはタイムアップによるものではなくて、そういうイベントなのだ。
「いきます」
もういちど、さっきよりも余裕をもって、えら、背びれ、腹。
体力バーは残り少し。
サメくんの尾びれ、くびれている場所が光り、上下から一本ずつ触手が出た。
動き出す様子が無いので一度近づけば、追ってくる。
下側の触手が巻き付けば、サメくんの体勢が斜めになり、歯の飛んでくる位置が変わる。
でも、集中力は最高潮に達していた。
避け、後ろを通過、触手を引っ張ってきて。
「これで、終わりです!」
最後の誘導を終える。
サメくんは触手に引っ張られながら左側へ消えていった。
体力バーが光を失う。
タイマーが止まり、消えた。
「やりましたっ!!!」
『STAGE CLEAR』の文字の後ろをいかちゃんが通り過ぎていった。
「はぁはぁ、っ、さて! ありがとうございました!」
今までろくに見れていなかったコメント。
ようやく見れば、祝福のコメントで溢れていた。
「いやー、がんばりましたね! おめでとうもお疲れ様もありがとうございます。 支えられました! 結構伸びちゃいましたので、今日は配信終えようと思います! 『しっかり休んで』? ありがとうございます! 今回は本当に休みます! さて、4週間続けてきました『それいけ イワシ子ちゃん』の実況は今回で終わります! イワシ子ちゃんに最後のいかちゃんも! これからどうなるんでしょうか。続きはリリース後、皆さん自身が体験してみてください。さて、ではでは、今日も、お疲れさまでした! 最後まで見てくれてありがとー!!」
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