第42話 おつかれさま

「ふぅ……」


 ヘッドホンを外し、椅子の背もたれに体重をかけた。


「おつかれさま~」


 海菜が扉を開けて入ってきて、後ろから手を回してくる。


「最後テンション高かったね~」

「見てたのか」

「うん。最初から最後まで見てた~」

「そうか……」


 時間を見れば、いつもなら夕飯を食べ終わっているような時間だった。


「お母さんとお父さんも楽しかったって」

「みんなで見てたのか」

「ご飯食べながらね~」


 お腹がすいてきた。


「持ってくるね~」

「いや、下行くよ」

「いいからいいから」


 さっさと部屋を出て行ってしまった。

 スマホを開いて、配信についたコメントや、いくつかのSNSに来ていたメッセージを眺める。


「持ってきた~」

「ありがとう」


 机に夕ご飯を置いてくれる。二人分?


「海菜も食べてなかったのか?」

「一緒に食べよっかな~って」

「待たせてごめんな」


 小さな机なので海菜が正面に座る形になる。


「兄ちゃん、スペチャ読みのことは明日になってからの方がいいと思うよ~」

「そうだなー」


 まだ感想を送ってくれている人たちがいるので、それが落ち着いたころに知らせないと。あまり待たせすぎるのもよくないし。


「すごいあるから、1週間後がいいんじゃない~?」

「そんなにか?」

「兄ちゃんが配信とスペチャ読み別にするからでしょ~? ほんとなら明日の配信をスペチャ読みにすればいいのに~」

「それは流石にな~」

「なら~、やっぱり来週の休みがいいよ~」


 流石に次の土曜は今日ほど長時間の配信をする予定はないので。スペチャ読みの時間を作れる。


「そろそろ月末だから次やってほしいゲームのアンケートもしなきゃでしょ~?」

「あ、もう月末か……忘れてた」

「配信ばっかりやってるからだよ~」


 海菜と話しながらではあったけど、思っていたよりお腹が減っていたのか、すぐに食べ終えてしまった。


「兄ちゃん疲れてるし~、お風呂入って早く寝た方がいいよ~」

「……そうする」


 今日ははやく寝よう。


「海菜はゆっくり食べろよ?」

「わかってる~」



\\\



 歯磨きなども終え、部屋に戻ってくると布団が膨らんでいた。

 布団をめくれば、海菜が寝ている。夕ご飯の前に風呂も済ませていたみたいだ。

 少し海菜を動かして、布団に入る。


「ん~……」


 体を動かされてしまったからか、海菜が小さく声を出す。

 目も少し開いたかと思うと、手を巻き付けてくる。


「ありがとぉ……さいごまで、やって……くれて……」


 起きていたのか、寝ていたのか。その後は寝息を立てるだけになってしまった。

 海菜の柔らかい髪を撫でる。


「こっちこそ、楽しいゲームをありがとう」

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