第33話 あっさりさらさら

「お腹すいたー」


 星那さんのお弁当は今日も大きかった。


「あの、山幸うみのことなんですけど、俺が中の人です」

「「ぶっ!?」」


 言うならさっさと言った方がいいし。


「そ、ソウダッタンデスカー」

「カイト、隠してたんじゃないのー?」

「隠してるので他の人には言わないでください」

「それはもちろんです。死んでも話しません」

「りょーかいー」

「はい、おねがいします」

「でも、どうしていきなり話そうと思ったんですか?」

「二人とも気づいてたので?」

「そっかー」

「えっと俺が伝えたかっただけなので、今まで通りでお願いします」

「わかったー」

「これからもあんまりうみくん関係は離さない方がいいですよね?」

「そうですね。誰が聞いてるかわからないので、メッセージとか形に残るものを残したりとか、周りに人がいるときには話さないでいただくと……」

「そっかー。気を付けないとー」

「おねがいします」

「今は大丈夫ってことだよねー?」

「まあ、大声で話さないなら大丈夫です」

「じゃーさー、サインちょーだい?」

「星那!?」

「えっと、サインないです」

「そーなの? 宙音が欲しがってたんだけど」

「私も欲しいです」

「書いても本物かわかりませんよ? 今までサイン書いたことないので」

「そういえば、そういうグッズ販売もほとんどないですよね」

「はい」


 キーホルダーやアクリルスタンドなどは海菜がいろいろしていて、俺はほとんど手を入れていない。


「えー、サイン出さないかなーって宙音ずっと言ってたよ?」

「ごめんなさい」

「そっかー。じゃあさ、コラボは?」

「山幸うみはコラボしないので……」

「宙音が断られたって言ってたー」

「企業勢とはコラボしないって決めてるんですけど、個人勢はあんまりコラボしないというか、メリットがなかったりして」

「あー、登録者の数がっていってたー」

「そうですね。それもあります。でも、一番気にしてるのはコメントを読む時間が減っちゃうので」

「コメント?」

「あっ、わかります。うみくんってコメントよむ時間長かったんですね?」

「そうなんだー?」

「結構長いみたいですね」


 最初は全然人がいなかったこともあって、ほとんどのコメントに反応していた。それを続けようとしていたら、ある時海菜によむ時間が長いと指摘された。自然とそうなってしまうので仕方ないんだけど。


「じゃーさ、宙音の登録者が増えたらコラボしてくれるのー?」

「どうでしょう……」


 登録者増えてから初コラボ相手が異性Vとかいろいろ言われそうなんだよね。


「もー、ダメじゃん!」

「あはは、ごめんなさい」

「あっ! ならアドバイスとかあるー?」

「アドバイスですか?」

「ほら、登録者のこと気にしてるみたいだったからさー。なんか宙音に教えてあげてくれない?」

「うーん、山幸うみはちょっと特殊なので……」


 星那さんがゲーム作ればいいんですよ、なんて簡単にできるものではないし。


「えー! なんかないのー?」

「それこそコラボすればいいんじゃない?」


 初華さんが食べ終えたのか、お弁当箱をしまっていた。


「コラボ?」

「そう。星那にいわれて少し、銀河水玉の配信みてたんだけど、コラボしてないわよね?」

「そうなのー?」

「コラボ相手の視聴者から少しでも取れればいいんじゃない?」

「カイトもそー思う?」

「そうですね。登録者を増やしたいなら見てくれる人を増やすしかありませんし……」

「そっかー。じゃあ、そ―言ってみるねー?」

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