第34話 なかよくなかよくなかよくなかよく

「宙音ー?」

「……」

「そーらーねー!」

「わっ!? 何、お姉ちゃん!?」


 私に気づいた宙音がヘッドホンをとってこっちにむいた。


「もー! 何! いま忙しいんだけど!」

「パソコン見てただけでしょ!」

「今うみくんが配信してるの!」

「カイトが?」

「うみくんが!!」

「ふーん。私も見たい」

「自分の部屋で見てよ……」


 イヤホンに変えて片方渡してくれる。


「やっぱりカイトの声ー」

「ほんと羨ましい……ウチもお姉ちゃんと同い年がよかった……」

「双子じゃないとむりでしょー?」

「はぁ~」


 ものすっごく深いため息をつかれた。


「そんなこと言ってるからかなー」

「はぁ……」

「そういえばねー、サインはダメだってー」

「え、何の話?」

「サインほしいって言ってたでしょー?」

「ちがっ!? 直接聞くなんて思わないでしょ!?」


 なんか怒られた……ほしいほしいっていってたの宙音なのに。


「あとはー、えっとー、コラボしたらーって」

「コラボ? うみくんがそういったの?」

「んー、初華が先に言ってたようなー? でもカイトもさんせーしてたー」

「そう、なんだ……」

「どうかしたのー?」

「ううん、ウチじゃ仕方ないかなって」

「???」

「って、そんな話してる場合じゃないから! 集中して!!」


 首をパソコンに向けられた。





 ……カイト、いつもより楽しそうだなー。



\\\



「はよー!」

「おはようございます」

「カイトー?」

「はい」

「私といて楽しくないー?」

「はい!?」


 なんでいきなりそんなことを教室で?

 お隣さんびっくりしてこっち向きましたよ?


「んー……ちょっとここじゃ話せないかなー」

「何の話してるのよ……」

「あっ、初華! はよー!」


 初華さんも机にかばんをかけてこちらに来た。


「お昼にまた話すねー」

「わかりました」


 星那さんは離れていった。


「海斗くん、どうかしたんですか?」

「さあ?」



\\\



「カイトってさー、私達と話すとき全然楽しそうじゃなくなーい?」

「え?」


 空き教室の椅子に座ってもしばらくお弁当箱を開かずかたまっていた星那さんがそう言った。


「そんなことないですけど……」

「星那、いきなりどうしたの?」

「だってー、配信と全然違うじゃん」

「そうですか?」


 結構、素の反応してる……しちゃってるんだけど。


「なんかさー、テンション高いし、声も大きいしー」

「それは配信だからですよ?」

「私達と話すとき敬語だしー」

「配信も敬語ですけど……」

「たまに敬語じゃなくなるじゃん」

「そうですね……」


 意識してじゃなくて興奮して出ちゃっているだけなので恥ずかしいんですけど。


「それに初華もさー」

「私も?」

「カイトには敬語使っててさー」

「そうね」

「大して仲良くないのかなー、私達-って」

「そんなことないと思いますけど」


 仲いい人なんていなかったので。


「だから、今日あそぼ!」

「今日は、その……」

「カイト、今日の配信ないでしょ! あそぼーよー」

「あはは……」


 まあ、今日は水曜なので朝配信したんですけど。


「あそぼーよー!!」

「そうですね、どこか行きましょうか」

「いいんですか?」

「まあ、はい」

「やったー! いってみるもんだねー!!」

「次からはもう少し余裕をもっていってくれるとありがたいですけど」

「毎日あそぼ!」

「小学生じゃないんだから……」


 遊びに行くことになりました。

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