第16話 さて、仲良くなりましょう

「はよっ!」


 昇降口で 星那さんに 出会った。 どうする?


「……おはようございます」


 流石に無視できないし、したら怖いし。


「なんかかたーい! 肩こってんのー?」


 後ろに回り込まれ肩を揉まれた。


「かたーい! あーでも男子ってこんな感じなのかなー?」

「わかんないです……」


 こ、これが陽キャ……? 消えちゃうよぉ……


「なに海斗くんに絡んでるの?」

「あっ、初華はよ~!」

「おはよう。ここじゃ邪魔でしょ」

「そか。いこーいこー」


 背中を押されながら歩いていたけど、周りの視線で我に返る。


「うわっ! いきなり避けないでー」


 星那さんはつんのめっていた。


「なに、トイレ?」

「あー、そんなところです」

「じゃ、先いってるねー! 初華、いこー?」

「そうね」


 誤魔化せるようにトイレに行きながら考える。

 星那さんは俺がVtuberをやってること、というか、Vtuber自体知ってるかわからないけど、俺はバレたくないので、普通に人目の着くところで話しかけたりされるのは少し困る。かといって、説明できないし。

 そう考えると、察してもらうしかない……? そんなことできる?



\\\



「そーいえば、なんで教室で食べないのー?」


 パンを食べながら星那さんがそんなことを言った。


「海斗くんが人目につかない場所で食べたいみたいだから」

「カイトが?」

「その、教室で食べるのはちょっと……」

「カイトって今まで教室で食べてなかったっけー?」

「それは、そうなんですけど……」

「ふーん、ま、いっかー」


 星那さんはそこまで気にしていないみたいだけど、俺は内心気まずかった。


「カイトも自分でつくってるのー?」

「いや、妹が……」

「えー、いいじゃん。私の妹なんて作ってくれたことないし、いっこもらうねー? ……わー! 甘いやつじゃん!」


 二人とも何か卵焼きに恨みでもあるんですかね……まぁ、俺も好きだから入れてもらってるんだけど。


「あんがとー! はい!」


 星那さんはパンをこちらに向けてくる。


「……」

「食べないの?」

「……いただきます」


 不思議そうにこちらを見られていることに耐えられずに、一口貰った。


「いちごじゃむダメだったー?」

「大丈夫です……」

「そー?」


 不思議そうに首をかしげながらそれを口に運んでいた。


「星那は他の友達いいの?」

「あー、うん。カレシとかと食べてるみたい? 初華はいいのー?」

「うん、大丈夫」


 いや、友達大事にして? 


「カイトは部活やってんの?」

「やってないです」

「一緒じゃん」

「……いえい」

「カイトのそれって何なの?」


 俺の適当な陽キャのイメージに付き合ってハイタッチしてくれる。優しい。


「カイトって一人でいるのが好きなんだと思ってたー」

「間違ってないです」

「でも、一人も二人も変わんないっしょ?」

「変わりますよ?」

「海斗くんは静かな場所が好きなんですよね?」


 違います。くそぼっちなだけです。


「あー、私、邪魔かなー?」

「大丈夫です」


 やめてやめて。罪悪感みたいなもの感じちゃうから。


「そっか。じゃー、放課後どっかいくー?」

「え」


 配信あるんです……


「私部活あるんだけど」

「あー、じゃ、初華はまた」

「あわせてよ」

「えー、しかたないなー。いつがいいのー?」

「……日曜とか?」

「日曜ねー、カイトは?」


 土曜に長時間やって、日曜は大丈夫? 夜にすれば、まあ。


「……日曜なら?」

「じゃ、そーしよー!」

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