第14話 お・と・も・だ・ちっ!

「海斗くん、おはようございます!」

「……」

「お・は・よ・う!」

「おはようございます……」


 登校して早々、胡桃さんに捕まり、空き教室に連れ込まれた。


「どうしたんですか?」

「? 何がですか?」

「何か用があって話しかけたんじゃないんですか?」

「? 友達に挨拶するのは当然では?」


 あー……そんな話になったんだった。


「あの、胡桃さん?」

「……海斗くん?」

「はい」

「どうして、私が名前で呼んでるのに海斗くんは『胡桃さん』なんですか? 初華って呼んでください」

「名前呼びはちょっと……」

「私たち、友達ですよね」


 脅されてます。


「初華さん……」

「きゃぁぁ! ……いえ、違いますよ。ちょっと男子に名前呼ばれたことに興奮しただけですから」

「……」

「それより、お話ししましょう」

「してますけど」

「私が好きなものなんですけど、海斗くんってVtuberって知ってますか?」

「……しってますけど」

「私、Vtuberの山幸うみって子が好きで、ずっと追ってるんです!」

「……そうなんですかー」

「海斗くんは知りませんか?」

「名前を見かけたことはあるかもですねー」


 つらい。初華さんは絶対気づいてて、俺が認めないからこうなってるから、俺のせいではあるんだけど、つらい。


「昨日も配信しててですね、本当にかわいいんですよ! なんというか、小学生の男の子が遊んでるのを見ている感じで!」

「しょ、小学生……」

「配信でやってたゲームとか私もやってみたいなーとか。あっ、私ばっかり話しちゃいました。次は海斗くんの番ですね!」

「俺……」


 趣味は……配信? ゲームも配信以外ではやらないし……


「初華さんは何か部活されてるんですか?」

「私ですか? 女子バレーボール部ですよ」

「バレーボールですか」


 初華さんの背は俺と同じくらい?


「すごいですね」

「あ、今度、県大会あるんですよ! よかったら応援来てください!」

「ひ、暇だったら……」

「はい! いいとこ見せちゃいますよ!」


 サーブするふりをして笑う初華さんに苦笑いで返す。


「海斗くんは得意なスポーツとかありますか?」

「ないです……」

「じゃあ、バレーしましょう! 楽しいですよ!」

「いえ、大丈夫です」

「優しくしますよ?」

「いえ、大丈夫です」

「その何回もおんなじ返事するのやめてください。雑に扱われてる感じして泣いちゃいますよ?」

「本当に勘弁してください」


 周りに知られたわけではないけど、この前はすっごい気まずかった。

 チャイムが鳴った。


「あっ、そろそろ教室に戻りましょう! 海斗くんを遅刻させるわけにはいかないですからね!」

「……そうですね」













\\\






 あれって、初華と……誰だっけ?

 教室でいっつも一人の……?

 二人で、しかも空き教室で、何してるんだろ?

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