第13話 スペチャと胡桃とクッキーと

エンディングが明け、スペチャをくれた視聴者への名前呼びを始める。


「『そらさち』さん、ありがとうございます!」


「『猫カフェ店長(自称)』さん、ありがとうございます!」



¥¥¥



「ど……? ど、『怒痢餡どりあん』さん? 読み方あってますかね? ありがとうございます!」


「『サーターアンダギー信者』さん、ありがとうございます!」


 次は、えっと……


「……『胡桃くるみ初華はつはな』さん? はつかさんですかね? ありがとうございます!」


 ……主張激しいなぁ。


「『初心者物書き』さん、ありがとうございます!」



¥¥¥



「『さいならいおん』さん、ありがとうございます!」


 最後の名前を呼び終える。


「最後まで見てくださってありがとうございました。また会いましょうね! それでは!」


 配信を閉じ、伸びをした。


 ……なるほど、「また明日」ってそういうこと。

 でも、結構特徴のある名前だけど、配信で見たことなかったような……


「兄ちゃん、おつかれ~」

「海菜」


 後ろから腕を回してくる。


「見てたよ~、うまくなってた~」

「そうか?」


 頭に手を伸ばして撫でる。


「お母さんと見てた~」

「結局見てたのか……」

「うん、元気ねっていってたよ~」

「少し恥ずかしいな」

「兄ちゃん、めーつぶって~?」

「目?」

「いいから~」


 言われた通りに目を閉じると後ろからごそごそと衣擦れの音がする。


「なにしてるの?」

「口開けて~」

「……あー」

「はい」


 口の中に何かあたたかいものを入れられた。そのまま食べる。


「クッキー?」

「うん、兄ちゃんの配信見ながらつくったの~」

「ありがとうな、美味しいよ」

「やった~」

「あったかいクッキーって新鮮だな」

「兄ちゃんは、休んでてね~。残りのクッキー作ってきちゃうから、また持ってくるね~」

「楽しみにしてるよ」

「うん!」


 手を振って部屋を出ていく海菜を見送り、俺はベッドに倒れこんだ。疲れた。時計を見ると6時半を少し過ぎたころ。ひと眠りできるかな。



¥¥¥



「兄ちゃ~ん、起きて~」


 体を揺らされ、目を覚ました。


「ぎゅっ」

「重い……」


 乗っかる海菜をどかしながら、海菜にも伝えようと思っていたことを思い出した。


「海菜、この前話した人のことだけど」

「うん? うん」

「胡桃初華さんって人なんだけど、配信にそのままの名前で来てた」

「……ネットリテラシー知らないんだね~。それで、大丈夫だった~?」

「うん。連投コメントとかもあんまりなかったし。普通の視聴者って感じ」

「そっかぁ~。なら、そのままでいいか~」


 ブロックなどは必要ない。問題行動もしてない……現実ではしてたけど、配信上でしていないなら大丈夫、だよな?



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