第471話 発見がいっぱい
「先生、ご足労頂きありがとうございます。賢者アイル殿もありがとう。カマエル殿とタミエル殿…だったか? 二人もよく来てくれた、改めて歓迎しよう」
「ふふふ、私の知っているいつもの陛下に戻りましたね。そういえばハニエルは失礼な事をしませんでしたか?」
にこやかに挨拶する王様を見て、ガブリエルは嬉しそうに微笑んだ。
謁見の間だともっと偉そうというか、威厳ある対応していたもんね。
「ハニエル殿? 彼はいつも礼儀正しく親切ですよ。今回もセゴニア王には適当に言い包めておくから安心して欲しいと……」
なん……だと……!?
あのハニエルが礼儀正しい!?
「どうしたアイル、そんなに目を大きく開けて。何か驚くような事でもあったか?」
カマエルが固まった私に声を掛けてきた。むしろなんで三人は驚いてないの!?
「ああそうか。ガブリエルは話を聞いて知っているが、アイルは今のハニエルしか知らないからだろう。昔のハニエルはとても礼儀正しくて可愛らしかったのだ、ハニエルの幼い頃を想像してみろ」
言われて私はハニエルの幼少期を想像する、王様も視線を天井に向けているから想像しているのだろう。
黙っていたら女性に見えるハニエルの幼少期……、しかも礼儀正しい……。
「やだ! そんなの可愛いに決まってるじゃない! 可愛がらない方がどうかしてるよ!」
「そうだろう、そうだろう、そんな幼少期を知っている我らだからこそ多少態度が変わっても可愛がらずにはいられなかったのだ」
カマエルは我が意を得たりとばかりに、満足そうに頷いた。
どうせなら厨二病に目覚めず、そのまま育ってる状態のハニエルに会いたかったよ。
せめて誰かがある程度の年齢で軌道修正してくれていたら……!
「確かにハニエル殿の幼少期ならば愛らしいのは間違い無いだろうな、ははは」
おっと、王様を忘れて興奮してしまった。そんな私達に気さくに対応してくれる王様の好感度はかなり高い。
セゴニア王に比べても対応が丁寧なんだよね。
改めてソファに座ってなごやかな雰囲気で話していると、ノックと共に侍従長の声がして王太子がひょっこり顔を出した。
さっき見た時に大きくなっているのは気付いたけど、既に私より身長が大きい。
「父上、失礼します。ガブリエル殿、お久しぶりです、アイル……殿も」
おお、以前と態度が全然違う!
お子様な雰囲気は鳴りを潜め、王太子と言われて納得の落ち着きを見せている。
子供の成長は凄いなぁと、思わず目を細めた。
「その微笑ましいものを見るような目をやめろ!」
王太子の外ヅラはアッサリと剥がれ、顔を真っ赤にしながら私を指差した。
王様と同じでこっちの素直な方が素なんだね、そういえば怪談風に話した冒険譚もいいリアクションしてくれてたし。
「こら、賢者殿に失礼な態度をとるんじゃない。申し訳無い、アイル殿」
「いえいえ、今は公式の場ではありませんし、王太子様が成長なされていたのが嬉しいのです」
「アイルが丁寧な言葉を……!」
「礼儀正しくも出来るのだな、驚いた」
カマエルとタミエルがヒソヒソ言ってるけど、聞こえてるからね!?
確かに二人の前で敬語使った事無かったかもしれないけどさぁ!
「ふふふ、ガブリエル先生以外のエルフはあまり人付き合いを好まないと思っていたが……。実際ハニエル殿も礼儀正しくはあるが分厚い壁を感じるというのに、アイル殿は随分と打ち解けているようですね」
キッと二人を睨んでいたら、王様が笑い出した。打ち解けているというより、ただ単に二人が失礼なだけなんだけど。
「そりゃあアイルはエルフの里で長老達にも気に入られていたからね! 長老達どころか妖精にまで気に入られていたし」
「「妖精!?」」
ガブリエルがドヤ顔で言った言葉に、王様と王太子が驚きの声を上げた。常に穏やかな微笑みを湛えている侍従長すら、一瞬目を見開く程衝撃の言葉だったらしい。
考えてみればエルフが世界樹の存在を隠しているんだから、その管理者である妖精も秘密にしなきゃいけないんじゃなかろうか。
「あ。えっと……その……」
明らかにガブリエルが狼狽え出した、やっぱり秘密なんじゃない!
そこへタミエルが助け舟を出す。
「長老達はこの国に里があるからと、王になら話しても良いと言っていたぞ。王太子であれば未来の王、聞かれても問題無かろう。だが……」
チラリと侍従長へ視線を向ける。侍従長は内心ドキドキだと思うが、静かに目を伏せたまま佇んでいる。
侍従長を鑑定したけど、忠誠心もあるし真面目で口も堅いから聞かれても問題無いと思う。
「侍従長なら聞かれても問題無いよ。王様の側に居る人なんだから言って良い事と悪い事の判断は出来るに決まってる。でしょ? 王様」
「あ…、はい! さすがアイル殿、賢者と呼ばれるだけあって素晴らしい慧眼ですね」
おや、どうやら王様の中で私への好感度が上がったようだ。そりゃ王様だって大きな事を聞いたら、相談出来る相手が居ると居ないとでは全然違うよね。
息子に相談するには父親の威厳というモノが邪魔をするだろうし、頼れる侍従長が共有してくれたら心強いだろう。
一方、許可が出たガブリエルは世界樹と妖精の事をイキイキと話し始めた。
物語でしか知らない妖精の話を聞くつもりでいた三人は、世界の根幹に関わる内容を聞いてしまい、事の重大さに顔色を変えていたのはご愛嬌である。
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