第463話 エリアスの企み
「俺は冒険者ギルドに何か連絡が入って無いか確認してくる、
エリアスと私が
「じゃあ俺もこのまま行ってこようかな、部屋は三階の突き当たりだったよね」
「あ、それならオレも行くぜ、財布だけ持って行くから荷物は頼んだ」
リカルドが出て行くと、エンリケも後を追う様に居なくなり、ホセも私に背嚢を手渡すとそそくさと宿屋から出て行く。
そして私とエリアス、エルフの三人が残された。
ガブリエルは何度もエスポナに来ているし、一人にしても問題は無い。
一番良いのはガブリエルが二人の案内をしてくれる事だ、それなら私とエリアスが宿屋で休んでいても本当にゆっくりできるかもしれない。
「ガブリエル達はどこへ行くか決まってるの?」
さり気なく三人を
「私はいつもの様に魔導具屋に顔を出して売れ行きとか改善点とか調べてくるつもりだよ」
「それなら私も行こう、これからは魔導具師としてガブリエルの助手をするのだから知っておいた方が良いだろう」
タミエルが満点の回答をしてくれた、これで残るはカマエルのみ!
サッとエリアスとアイコンタクトを取る、さっきまでは押し付け合っていたが、今となっては私達の心はひとつだ。
「だったらカマエルも一緒に行ってくれば? 流行りの魔導具を見れば王宮で務める時にどんな事を求められるか傾向がわかるんじゃないかな?」
「確かにそれはあるかも、魔導具が壊れたから修理が終わるまでの一時的な処置として魔法を使って欲しいって言われた時があったから。宮廷魔導師じゃなかったけど、陛下に頼まれちゃ嫌と言いにくいからねぇ…」
ガブリエルってばナイスアシスト!
だけど陛下からの頼まれ事なんて家臣としては普通嫌と言いにくいどころか絶対なんじゃないの?
一時期教育係をしていたからなのか、単に本来の空気の読めない性格なのか微妙なところだ。
「そうなのか? ならば共に行くか…」
「うんうん、三人一緒なら迷子になる事も無く宿屋に戻って来れるもんね。カマエルとタミエルはもしも
暗に迷子になっても自力で戻って来る様に言っておいた、わかってなくても言っておけば探索魔法使おうって思うだろうし。
「使いたければ好きに使って良いよ。それじゃあ私達も出掛けて来るね」
「「いってらっしゃい」」
私とエリアスは鍵を預かると笑顔で三人を見送った、そして姿が見えなくなるとどちらとも無くハイタッチ。
なんだろう、この達成感。
「さ、僕達は部屋でのんびり過ごそうか。自由時間な訳だし、一杯くらいなら僕は何も言わないよ?」
階段を上りながらエリアスが魅力的な誘惑をしてきた。
「えぇ~? でもォ、もしかしたら呼び出しがあるかもしれないしィ」
「一杯くらいなら問題無いって、むしろ酔っ払わなきゃ良いんだから二杯飲んでも良いくらいじゃない?」
長い足で私に追いつき、優しく語りかけながらそっと肩を抱くエリアス。
周りから見たら完全に私を口説き落とそうとしている様にしか見えないだろう、しかし私はエリアスがそんな事をするはずが無いという事を良く知っている。
無駄な労力を使って飲みたい気分の私にこんな事を言うのは何か頼みたい事でもあるのだろう、しかしすぐに誘惑に飛び付いてはエリアスの掌で踊らされている様で面白くない。
そんな訳でエリアスの本心を探りつつ焦らしてみる事にした。
「だけどホセが戻って来たら文句言うに決まってるもん、その時怒られるのは私をでしょ~?」
「大丈夫、僕を信じて全て任せてよ」
「本当に信じて大丈夫…? 一体何が目的なの?」
ガブリエルから渡された鍵で私達用の部屋に入り、ドアを閉めるとエリアスはニンマリと笑った。
「昼間はさ、僕が責任持って対処するから…」
「昼間は…?」
「そう、だから夜は僕の姿が無くてもガブリエル達の事はアイルが頑張ってくれると嬉しいなぁ~…なんて」
甘える様に上目遣いで瞬きしながらお願いされた、コレは耐性の無い乙女達なら二つ返事で頷いてしまうやつだろう。
しかし私はエリアスの顔を見慣れている、というか、その甘え方私の真似だよね!?
普通にお願いされたら昼間から飲酒という背徳的魅力も加わって頷いていたかもしれないが、私の真似をしたのはマイナスである。
「夜遊びする為にかぁ~、それだとホセやリカルドも一緒に出掛けて私とエンリケで三人を見てなきゃいけなくなるよねぇ?」
正直お酒二杯では割に合わない気がする。
「まぁまぁ、夜は寝るだけだし何も起こらないって。アイルはもし今から飲むなら何が飲みたい? おツマミは何にする? 並べて考えるだけなら契約は成立しないから大丈夫だよ」
「そんな事言って…、そう簡単に飲んだりしないんだからね? ホセに怒られた場合も約束が違うから話は無かった事になるんだよ?」
「わかってるって、
「えっと…コレとコレが多いかな…」
聞かれたのでストレージからボトルを取り出してエリアスに見せる。
数分後、気付くとハイボールを飲んでいる私が居た、エリアスの口の上手さに戦慄した瞬間である。
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