第464話 我慢も出来るんです
『お客様、お休みのところ申し訳ありませんが、エリアス様に大通りの魔導具店に来て欲しいとお連れ様からご連絡がございまして…』
ノックと共に申し訳無さそうな声がドア越しに聞こえた。
「エリアス、ご指名で呼び出しだって。約束だからいってらっしゃ~い」
ほろ酔いの私は機嫌良くエリアスに向かって手を振った。
エリアスはジトリとした視線を向けてきたが、諦めた様にため息を吐くと立ち上がる。
「はいはい、約束だから僕が行ってくるよ。だけどガブリエルならアイルを呼び出しそうなのに、どうして僕を指名したんだろう? ネックレスはここに置いておくけど、僕が居なくなったからってストレージに片付けたり三杯目を飲んだりしちゃダメだからね? 三杯目を飲んだら僕は責任持てないから絶対ダメだよ?」
「わかってるよぅ、いってらっしゃい」
サイドテーブルに置かれた魔石のネックレスを確認しつつ頷く、私に疑いの眼差しを向けながらもエリアスは部屋を出て行った。
「ヌゥ…、そういえば防具をつけたままだったっけ」
エリアスの話術にしてやられ、
「うんうん、やっぱり飲む時は全力で寛がないとね!」
ベッドに腰掛けグビグビと喉を鳴らした。
「はぁ…、美味しいなぁ、だけど二杯までって約束したもんね」
名残惜しくてほんのりウィスキー味の氷をひとつずつ噛み砕いていき、最終的にグラスには
「ダメだよねぇ…。『
ジッとグラスの中を眺めていても仕方ないので未練を振り切る様に洗浄魔法をグラスに掛けるとストレージに収納した。
ほろ酔いでちょっぴりふわふわした気分だし、このままちょっと寝ようかとベッドにゴロリと転がる。
エリアスは鍵を置いて行ったから部屋のドアに鍵は掛かって無いよね、だけど貴族も泊まるこの高級宿で他人の部屋に勝手に入って来る人なんて居ないだろうし、皆もその内戻って来るだろうからこのまま寝てもいいかなぁ。
ああ、血の巡りが良くて枕に耳を着けるとビュン、ビュンと脈拍に合わせて血流の音がする。
顔が熱いせいで涙も
ウトウトしていたらいきなり部屋のドアが開いた音で目を覚ます、どれくらい
「ん…!? 酒くせぇ…!?」
「ホセおかえり~」
ホセが帰って来たのがわかったので声を掛けた、寝ていたせいか声が掠れている。
まだ眠いから目を
「おい、何で飲んでんだよ?」
怒っているホセの声、どうやら戻って来たのはホセだけで他の誰も居ない様だ。
エリアスが責任取るって言ったのに、本人が居なかったらどうするの、状況的に1人になった隙に私が飲んだくれただけみたいじゃない。
「ホセ、エリアスが…」
私じゃないんだよ、エリアスが私を
その瞬間何故かホセはギョッとした顔をする。
「どうした!? エリアスに何かされたのか!? それともエリアスに何かあったのか!?」
どうしてそんなに慌ててるんだろう、そう思った時、妙に熱い涙が目尻から流れ落ちた。
あ、もしかして私が泣いてると思ったのかも、声も掠れてたし。
このパターンは危険だ、心配した分大した事無いとわかった瞬間怒り始めるやつ。
紛らわしい状況を作り出してるとはいえ、勝手に心配したホセに怒られるのは理不尽だと思うの。
しかし上手い言い訳を思いつけず、そ~っと布団の中に再び潜り込む。
「おい、大丈「いや~、まいったよ~、呼び出しの理由が店を出た途端に巨乳の女性に声を掛けられたせいで店に引きこもって出ようとしないからだなんてさぁ。あれ? ホセだけ戻ってたの? またアイルを襲ってるとか? あははは」
ホセが私を覗き込もうとした瞬間、ドアが開いたかと思うとエリアスが戻って来て余計な事を言った。
「また襲ってるって何だ! 襲った事なんてねぇだろ!!」
「え? 忘れたの?」
エリアスが戻って来たので布団から顔を出すと、ニヤつきながら
ビルデオで噛み付かれたのは確かに襲われたと言っていいやつだよね。
「あっ、あれは酔ってたせいだろうが! しかもやられたから仕返ししただけだしな!」
怒っているせいなのか、恥ずかしいからなのかホセの顔が赤くなっている、私としては矛先がエリアスに向いたのでヨシ。
「ホセがアイルを襲ったってどういう事だい!?」
ドアが開いていたせいでガブリエルにも聞こえたのだろう、エリアスのすぐ後ろに居たカマエルとタミエルを押し退け乱入してきた。
「襲ってねぇよ!」
昼間の事はエリアスが責任持ってくれるって言ったよね?
ゴチャゴチャと言い合っている三人が面倒になった私は
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