第341話 女神様との邂逅(3回目)

「おじいちゃんは私の隣の部屋ね、おやすみ。あ、そうそう、さっき紹介したセシリオはビビアナとこの家の主寝室使ってるから絶対ドアを開けちゃダメだよ? ベッドに防音の魔導具付いてるからどんなに静かでもナニしてるかわからないからね!」



「わ、わかった…。おやすみアイル」



 この家で最も大事な事を伝えて私も自室に戻った、私がガブリエルのところから帰るとセシリオが来ていて今夜は泊まるとの事。

 私は先程リビングから2人の寝室に連れ込ま…れんこ…共に向かったセシリオを心の中で敬礼をして見送った。



 明日は休みを代わって貰ったと言ったセシリオは覚悟を決めた顔をしていた、明日の朝は朝食の時間に起こすなんて野暮はしないから頑張れ!

 暫くは精力のつく食べ物を出してあげる方が良いかな…。



 パジャマに着替えてベッドに倒れ込む、移動の後に孤児院に行ってバレリオのラーメン食べてガブリエルのところでご飯も作って…、今日の私結構頑張ったよね。

 おじいちゃんも疲れてたみたいだし、今夜はきっと皆グッスリ眠るだろう、ビビアナとセシリオ以外は。



 久々の自分のベッドの感触に早々に睡魔に襲われた私は久々に明晰夢めいせきむを見ていた。

 この感覚知ってる、確か女神様に会った時もこんな感じだった。

 どうしてだろうと思ったが、そういえば昼間教会でお祈りしたんだっけ、という事を思い出した瞬間久々の美声が耳に届いた。



「あっ、来た来た! あっちの現状知らせてくれてありがとね~! まさか魔法使える子が産まれなくなってるなんて驚いちゃったぁ!」



「お久しぶりです、女神様」



 相変わらず神々しい美女が結構軽い感じで重大発表をした、もしやと思ってたけど、やっぱり魔法使えない人しか産まれてないって知らなかったのね。

 3度目ともなると少しは落ち着いて対応出来る様になってきた、とりあえず神様なので90度のお辞儀じぎでご挨拶。



「やだぁ、ついこの前会ったばかりじゃない。それはそうと、今の子達が魔法使えない原因考えたんだけど、産まれた時から普通は私に魔力を少しずつ奉納するはずが、私が居ない事によって魔力の出口が作られなかったみたいね。あなたの記憶を見せて貰ったところ、魔導具は使えているから直接魔石に触れると流れてるのよねぇ…」



「え…、あの…!?」



 ちょっと待って、一瞬初めて言葉のキャッチボールが出来た事に感動しそうになったけど、また爆弾発言したよね!?

 記憶見たの!? どこからどこまで!?



「幸い私が作ったあなたの身体があっちにあるからチョチョイといじってぇ~」



 そう言いながら女神様は空中でヒョイヒョイと人差し指を動かした。

 弄る!? 弄るって私の身体に何するの!?

 


「ちょっと待って下さい!」



「お~わりっ! これで今度から産まれる子達は適性さえあれば魔法を使える子が産まれるわ。今使えない子達も生活魔法程度なら少しずつ魔法が使える様になるはずよ、年齢と共に魔力回路が固くなるから全員とはいかないかもしれないけれどあなたに近い程魔力が引っ張られるから早く使える様になるかもね」



 遅かった…、どうやら私の身体の魔改造が終わってしまった様だ、その説明だと私にどんどん魔力が集まって来ちゃうんじゃ…!?



「集まった魔力は…」



「あっ、魔力はあなたが受け取れない分は私に流れて来る様にしたから安心してちょうだい。うふふ、これまで以上の無尽蔵の魔力が手に入るわよ! これであっちと繋がりが出来たから教会で神託を告げる事もできるわね」



 何その私の身体が便利道具にでもなった様な言い方、電波塔か何かになったワケ!?



「あの、私の身体はどうなって…」



「そうだわ! こっちの世界のゲームやお話で出てくる転移魔法を前から試しに構築してたのが完成したの、これまで大掛かりな魔法陣が必要だったけど魔法だけで転移できるわよ! 転移する距離や体積で消費魔力量が変わるけど、あなたの魔力量なら問題無いと思うわ。だけど流石に軍隊とか丸ごと転移させたら魔力枯渇起こすかもしれないわね、うふふ」



「転移魔法ですか!?」



 それは凄く嬉しい!!



「今までの女神の加護持ちから女神の化身に変わった分、見た目にも変化があるかもしれないからよろしくね」



 美しい笑顔でヒラヒラと手を振る女神様。



「えっ!? ちょ、待っ…」



 思わず手を伸ばしたところで目が覚め、天井に向かって伸ばされた自分の手が暗闇の中うっすらと見える。

 見た目の変化って…もしかして女神様並みに胸のボリューム…は無いな…。

 両手で自分の胸を鷲掴んでみたが、変化は殆ど無い、だけどちょ~っとだけ育ったかな? 

 ううむ、気のせいかもしれない。



 ハッ、もしや身長がこの世界基準になったのでは!?

 ガバッと掛け布団をめくりベッドの脇に立つ、そして家具と普段の目線の高さを確認して膝から崩れ落ちた。



「く…っ、全然…変わって無い…!」



 確か見た目にも変化がって言ってたもんね、って事は無いかもしれないって事か。

 ちぇ、期待して損した。

 暗いから見えにくいけど、髪の色が変わっている訳でもなさそうだし。



 ガッカリした私は朝になったらカリスト大司教に連絡すべきかという考えを押しやり、再びベッドに潜り込んでふて寝を決め込んだ。

 そんな私の見た目の変化が発覚するまであと数時間…。

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