第331話 屋敷内の変化
翌日、トレラーガに到着した私達は門番に当然の様にエドの屋敷に「通信魔導具で連絡しておきます」と言われた。
何か…、どんどんエドの権力増してない?
ちなみにエドに関しておじいちゃんには皆から事前に情報が与えられている。
曰く、アイルの下僕
曰く、子供に手を出す変態
曰く、元裏の世界の人間で一応改心している
曰く、交易都市トレラーガの権力者
「あと隙あらばアイルをモノにしようと企んでるよね、アイルが賢者じゃなければとっくに手を出されてると思うくらい」
最後に放たれたエンリケの言葉におじいちゃんは私を守ると決めたらしい。
ホセにもしっかり守る様にと言っていたが、ホセは話半分で受け流していた様に見えた。
いいもん、自分の身は自分で守るから。
御者をしつつ
あ、うん、門番から連絡がしっかり入ってたみたいだね。
挨拶を交わしてサロンへと通されたので初対面のおじいちゃんを紹介する。
見ればわかっちゃうだろうからという事で、貴族なのは伏せて旅先でホセの身内が見つかった事だけを話した。
「では2人部屋にしてホセと同室になる様にしようか?」
そう言ってエドはソーサーを手に持ち、紅茶をひと口飲んだ。
「あ、おじいちゃんは私と一緒に寝るから別に部屋を準備しなくていいからね、あとホセも」
「え……っ!?」
パリーン
サロンにエドが持っていたカップとソーサーが割れる音が響く。
絶望、そんな言葉がピッタリな表情でエドは顔色を変えた。
控えていたメイドさんが割れた茶器をサッと片付けた、エドの屋敷には珍しい年齢の女性だ、確実に成人はしている、睨まれた気がするのは気のせいだろうか。
「そ、そそ、それはどうして…!?」
「えへへ、獣化して貰って一緒に寝る約束したんだ、ウルスカの家に帰ったらベッドが小さくて3人じゃ寝られないし」
動揺して瞳が揺れているが、獣化して寝るのならエドもそんなに心配もしないだろう。
なのにエドの顔色が戻らない。
「何故私は獣人では無いのか…!」
頭を抱えて唸る様に呟くエド。
あ、いや、エドが獣人でも一緒に寝ないと思う、寝てる間に悪戯されそうだもん。
「えっと…、そういう事だから…」
「く…っ」
どうしよう、まだエドが復活しない。
「あっ、そうだ! お土産渡すね! ビルデオって国で手に入れたこっちじゃ買えないお酒と、途中で討伐した海の魔物素材、美味しいからこれも商業ギルドにレシピ登録したの。今夜食べるなら作ってくるよ?」
「アイル手料理だね!?」
あ、復活した。
「う、うん。じゃあ厨房で手伝って来るね、食材も渡したいし。お酒はここに置いておくから飲んでても良いよ」
カンパリ
「お待ち下さい、ご案内します」
厨房へ向かっていると、さっきのメイドさんが追いかけて来た。
「ああ、大丈夫。何度も来てるから場所はわかるよ」
「いえ、お客様に勝手に屋敷内を歩かれると警備の面で不安がありますので」
ん? もしかして私が屋敷内で盗みとか余計な事するのを警戒してるって言われた?
内心ムッとしつつも、確かに私はこの屋敷の人間じゃないので口を
厨房へ行くといつもの料理人達が笑顔で出迎えてくれた。
「おお! アイルさんじゃないか! だから急に食事の人数が増えたんだな」
「さっきトレラーガに到着したの、いつも急でごめんね。食材はちゃんと持って来たから安心して! 食材は海の魔物なんだけど、向こうでレシピ公開したら凄く好評だったんだよ、それを皆にも食べて欲しいな」
「アイルさんのレシピなら間違い無いだろ、海の食材はどうしても干した物が多くなるから新鮮な魚介類は嬉しいねぇ」
「んふふ、コレは冷凍しても良いやつだから半分は切って冷凍しておくと良いよ、そうすれば解凍してすぐに調理も出来るしね。レシピは今から手本見せるから覚えてね、簡単だからここの3人なら問題ないでしょ」
そんな
何か気持ち悪いなぁ、ストレージから取り出したイカを1人に手伝ってもらいながらひと口大に切っている時に
「ねぇねぇ、あの人いつから居るの? 何か睨まれてる気がするんだけど」
「ああ、何年か前に昔ここに居たらしいよ。3週間前に奉公先が潰れたからまた雇って欲しいって泣きついて来たんだと」
「へぇ、そうなんだ…」
私達はメイドさんに背中を向けているのを良い事にヒソヒソと小声で話す。
何年か前という事はエドのお手付きの可能性が高いな…、私への好意を隠さないエドの態度のせいで敵意を向けられているという事?
昔散々可愛がられたからワンチャン
まぁ、私が居なくても年齢的にエドに以前みたいに可愛がられる事は無かったと思うよ。
昔の女ポジションから私に敵意を向けているのかと思うとモヤっとしたものが込み上げた。
何なんだろうこの気持ちは…、私がエドに色目を使ってるみたいに思われてる事へのムカつきだろうか、それとも彼女がエドの昔の女だから…なんて事は無いよね!?
いつの間にかエドに対して所有物に対する独占欲でも芽生えていたのだろうか、間違っても嫉妬じゃないと思いたい。
今夜は幸せのダブルもふもふなんだから嫌な気持ちは置いておこう、そう自分に言い聞かせてイカのバター醤油焼きとチーズイカ焼きを作った。
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