第326話 船旅終了
「やっと…、やっと船から解放されるのね~!!」
下船してすぐに珍しくビビアナが叫ぶ、私達はやっとパルテナに到着したのだ。
「ビビアナは船が苦手なのに頑張ったよね、後は陸路だけだからもうひと踏ん張りだよ」
エリアスがビビアナの背中をポンポンと叩いて
「馬車の準備出来たよ! さぁ乗って」
馬車は丸ごと預けるより、馬だけ預けた方が安上がりなので馬達を引き取ってからストレージから出した本体に繋げた。
おじいちゃんも船には飽き飽きしていたせいか、今は凄く機嫌が良い。
「あたしが御者するわ、陸地に居る事をしっかり実感したいから」
張り切るビビアナに御者を任せて私達は急いで馬車に乗り込んだ、何故なら港に到着した時から遠巻きに騒ついていたからだ。
パルテナ国内は全ての町や村に私達の姿絵が出回っているのですぐに気付かれてしまった、船に乗ってた人達も気付いていたしね。
「あとひと月もすればセシリオに会えるからかビビアナは張り切ってるな」
御者席から私が時々歌っている曲の鼻歌が聞こえてきて、リカルドはクスクスと笑った。
「ウルスカに帰ったら結婚式するんでしょう? その後はセシリオも家に住むんだよね? だけど帰ったら結婚式の前でも暫くは何日か泊まるだろうね」
エンリケが言った事はきっと現実になるだろう、また搾り取られてセシリオがやつれないか心配だ。
連泊する様なら精がつく様にニンニクや
「あ、そういえば王都に到着したらラファエルのところに寄る? イカ…海の魔物をお裾分けしてあげようと思うんだけど」
「ラファエルとは? 名前からしてエルフの様だが…」
「あ、そういえばおじいちゃんには話した事無かったね。説明するには先にガブリエルの事から話さないとね、パルテナの伯爵で魔導具の王立研究所の元所長なんだけど、今は私達の住んでるウルスカで支所長しているエルフの友人がいるの。そのガブリエルの従兄弟が王都の屋敷を管理してるから、その屋敷にお土産を渡しに行こうと思って」
「ん? 所長から支社長に降格させられたのか? エルフが?」
「世渡り下手なんだよ、空気読めないし。今の王様が王子だった頃に教育係していたら、その間に所長の座を奪われたらしいから」
「何とも…、発展させる事を考えればエルフをそのまま
「そうかもね、だけど本人はウルスカで好きな事してるから楽しそうだよ。私も作って欲しい魔導具の事相談出来るし、今王都に戻られると困るかも」
「それはまぁ、パルテナ王家としてもアイルと繋がりのあるガブリエルを王都に呼んでしまったら繋がりが切れてしまうと考えるだろうから、
「だろうな、アイツ王都には友達が居なさそうだったしよ」
リカルドの意見にホセも頷いた。
こうもハッキリ言われてるのを聞くと何だか目頭が熱くなってくるよ、ガブリエルが
道中にがりを抜いて苦味の無くなった塩を恩人価格で安く買い付け、途中の村で1泊して王都に入った。
ちなみに宿泊した村でカリスト大司教に連絡を入れたが、お互いの近況を話している最中に会議に他の人は既に揃っていると怒りながら部屋に入って来た助祭の声がバッチリ聞こえてしまった。
ちゃんとお仕事優先しようね、カリスト大司教…。
昼過ぎに王都に入ると歓声が聞こえた。
左右にある覗き窓から外を見ると、どうやら御者席の方に視線が集まっている様だった。
少しだけ御者席の小窓を開けて覗くと、御者をしていたエリアスが爽やかな笑顔で手を振っているのが見えてそっと小窓を閉じた。
「どうしたんだ?」
無言で席に戻った私にホセが尋ねる。
「エリアスが女性達に笑顔を振り撒いて楽しそうだった」
「まぁ…、エリアスだからな。久々に都会の女に騒がれて嬉しいんだろうよ、都会の方が割り切った女が多いらしいからな」
「田舎だとどうしても噂になるし、そうなると親はすぐに結婚させようとするものね。道中もエリアスが女の子に声を掛けてたのは大きい町だけだったでしょ?」
ビビアナの言葉にエリアスの行動を思い浮かべると、確かに言われてみれば港町や王都みたいに大きい町だと嬉々として出掛けて行ってたかも。
逆に小さな村や島だと私達から離れなかった気がする。
「それじゃあエリアスの為には暫く王都に滞在した方が良いのかな?」
「んなこたぁねぇよ。一晩遊べばそれで満足するだろ、サッサと土産を渡して宿を決めたら姿を消すだろうからな。賭けてもいいぜ?」
「そんなの賭けにならないでしょ」
「ククッ、違いねぇ」
ホセの賭けの申し出に全員同じ意見だったらしく、私の言葉に頷いていた。
ラファエルにお土産を渡しに屋敷に行くと、ガブリエルから頼まれているからと泊まっていく様に言われてお世話になる事になった。
ガブリエル
到着したのがまだお昼の早い時間だったので以前も行った大山商会と取引のある商店に買い出しに行くと、予想はしていたが途中でエリアスが朝までには戻ると言い残して姿を消したのは言うまでもない。
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