第287話 寄り道の予定
「間もなく到着しまーす! 荷物を
大陸が近付いて来たので眺めに来たら、船員が何度も言いながら船上を歩き回っていた。
昨日はエリアスがビビアナに「退屈なのはわかるけど、2人を
ホセも船に乗った辺りから妙に絡んで来るからビビアナに叱ってもらうべきか…。
船の中に居ると
「……………あれ?」
もしかしてエリアスが叱られてたのって私とホセの2人を嗾けてたって事!?
衝撃の事実に気付いてクワッと目を見開く。
「アイル、どうしたの?」
「あ、エンリケ。船を降りる準備は終わった?」
「うん、皆いつでも降りられるよ。暫く海から離れるから見納めしてるのかい?」
「いや、ちょっと衝撃の事実が発覚して…。どうやら私とホセはエリアスに喧嘩する様に仕向けられていたみたいなの…」
「あははっ、やっぱり? リカルドなんかは暇があると軽い手合わせや剣の手入れしてる姿をよく見たけど、エリアスは暇そうにしてるな~って思った時はホセやアイルに話しかけにいって、大体その後2人が喧嘩してたから…ククッ」
「酷いっ! わかってたなら止めてよ!」
「だって本気の喧嘩じゃないし、楽しそうだったからさ」
「それってエリアスがでしょ」
クスクスと笑うエンリケにジト目で言うと笑いがピタリと止まった、どうやら図星の様だ。
「さ、もう着岸しそうだから皆に声を掛けて来ようかな」
「あっ、逃げた!!」
エンリケが笑顔を貼り付けたまま船内へと入って行ったので視線を陸へと戻して眺めていると、段々港に居る人達の姿が見える程近付いて来て私の目はそちらへ釘付けとなる。
その後、着岸したのでホセとエリアスが馬車を取りに行き、甲板から動かない私をビビアナとエンリケが迎えに来た。
「アイル? もう降りるわよ、行きましょ」
「うん…、ビビアナ、ビビアナ…!!」
「え!? 何!? どうしたの!?」
突然抱き着いた私に驚きつつも抱きとめてくれるビビアナ、マシュマロ乳に埋もれて落ち着きを取り戻して顔を上げる。
「獣人! 獣人がいっぱい居るの!」
込み上げる嬉しさを
「あらホント、5人に1人くらい獣人じゃないかしら?」
「でしょ!? 凄く多いよね!」
興奮のあまりビビアナの手を握ってピョイピョイと飛び跳ねる。
「そりゃそうだよ、変わって無ければここの隣国は獣人が王様だからね。獣人の国って言っても過言じゃないよ」
「「獣人の国!?」」
エンリケの言葉に驚く私とビビアナ、やどうやらビビアナも知らなかった様だ。
そんなパラダイスがあったとは…!!
「ねぇ、ビビアナ、エンリケ」
「帰りよ、帰り!」
「ビビアナ大好き!」
ビビアナは言いたい事をわかってくれた様だ、嬉しくて思わず抱きつく。
「ああ、アイルは獣人の国に行きたいんだね。俺もずっと行って無いから行きたいな」
「じゃあリカルドに提案しなきゃ! リカルドはどこ!?」
リカルドを探してキョロキョロと辺りを見回す。
「もう船を降りてるよ、さっき降りるからってアイルを呼びに来たんだもん」
「早く行こう!」
エンリケが指差した先には馬車と合流しているリカルドと教会関係者達の姿が。
私は2人の手を取って引っ張りながら急いで船を降りた。
「あ~、やっぱり興奮してるねぇ」
合流すると開口一番に苦笑いしながらエリアスが言った、恐らく獣人がたくさん居る事に私が興奮している事を予想していたのだろう。
「リカルド! 帰り! 教会からの帰りに隣の国に寄ろう!」
ビビアナとエンリケから手を離してリカルドの腕をガシッと掴む。
「何しに寄るってんだよ、どうせ色んな獣人を見たいだけだろ? だったらここでも好きなだけ見られるじゃねぇか」
リカルドが答える前に、ホセが
「そういえば今のビルデオの王は狼獣人でしたな、2代前まで獅子獣人でしたが。確か正室に姫しか産まれず、側室だった狼獣人との間に産まれた王子が今の王だそうです、その時は揉めて教会本部も巻き込まれたので大変だったそうです」
「カリスト大司教はその時居なかったんですか?」
「ははは、私が産まれたくらいの話ですから。今は獅子獣人の正室との間に10歳になる獅子獣人の王太子がおりますので国内はかなり落ち着いているとの事です。代々獅子獣人が王になってきた国なせいか早く世代交代させたい勢力もあるそうですが…」
「私は今の王を好ましく思いますけどね、賢王と評判ですし」
どうやら獣人の国の名前はビルデオと言うらしい。
アルフレドは能力主義なだけあって種族は気にしない様だ、無能な獅子獣人が王になるくらいだったら賢王と呼ばれるくらいの人なら狼獣人でも問題無いと私も思う、それにしても…。
「同じ狼獣人でも賢王と呼ばれる程の人も居れば食いしん坊と呼ばれる人も居るんだから種族は関係ないと思うんだよねぇ…、ぷぷっ」
「お・ま・え・は! お前だって賢者のクセにほぼただの食いしん坊だろうが!」
御者席に居たはずのホセはいつの間にかすぐ側に居て、私の頭を掴んで指先に力を込めた。
「痛い痛い! ちゃんとお役立ち知識も披露してるもん!」
「ほらほら、注目されちゃってるわよ? ホセもアイルも馬車に乗っちゃいなさい」
教会本部が近いせいか、カリスト大司教の顔を知っている人も居る様だ、それなのに同行者の私達が騒いだせいで多くの人に気付かれてしまったらしい。
ビビアナに半分押し込まれる様に馬車に乗り込み、次の港へと向けて出発した。
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