第273話 船待ち(1日目)
「陽射しが強いね~。この
私は川釣りを楽しんだ翌日、村を出発して御者をしつつオラシオと話をしていた、そして聖騎士の鎧をヒントにホセの外套に空調の魔法式を刻み込んだ魔石を縫い付けて御者当番が交代で着ている。
私が着るとブカブカだが、全員分加工するより1番大きいホセの物なら1着で全員使えるからね、大は小を兼ねるのだ。
「次に船に乗る港町の辺りが1番暑いですよ、太陽に1番近い国と言われてます。暑いですが、その代わり珍しい果物なんかもあるので交易が盛んなんです」
「へぇ、南国ならバナナとかパッションフルーツとかドラゴンフルーツとかパイナップルとかかなぁ」
「さすがアイル様! よく知ってますね、今言った物は揃ってます」
「本当!? じゃあバナナは絶対たくさん買わなきゃ! アイスもチョコもあるし、ヨーグルトは大抵の国で手に入るし、バナナパフェが作れちゃうなぁ。マーブルパウンドケーキにバナナ混ぜ込んだやつも作らなきゃ…夢が広がるぅ~!」
「そんなにお好きなのですか?
「えぇ~? 何でだろう? 凄く美味しいし、栄養もあるから売れそうなのに…」
2人で首を傾げていた数日後、バナナのある国に到着してその謎は解けた。
種がある、原種というやつだろうか。
普段食べてたバナナは品種改良されて種がなくなってるやつだったと、そのバナナを食べて思い出した。
「おい、何でアイルはあんなに嘆いてるんだ?」
「さぁ? バナナっていう野菜だか果物を食べたかと思ったらああなってたよ」
ショックで崩れ落ちた私をホセとエリアスが首を傾げながら観察している。
私の知ってるバナナを食べさせれば彼らもこの嘆きが理解できだだろう。
ひと口食べては種を数粒吐き出すという作業をしながら食べ終え、私達は今夜の宿屋を目指した。
タイミングが悪く、大型船は1週間に1度で乗れるのは5日待たなければならないらしい。
2週間も乗るので大型船じゃないと辛過ぎるから仕方ない、しかし2週間と言っても今度は乗りっぱなしでは無く、途中の島に何度か寄って物資の追加と宿泊をするという。
「しかし…この暑い国で5日も足止めというのは厳しいな。宿から出たくないと思ってしまう」
「ははは、そうですね、私も教会に顔を出す以外は宿に居るつもりです。観光したい方はしてきても良いですよ、せっかく5日間も居るのですから」
リカルドがボヤくとカリスト大司教が心の広い発言をしてくれた。
その言葉に私が飛びつく。
「はいっ! 私観光したいです!! 食材も色々見たいし、出来ればバナナの品種改良を生産元に提案して来たい! あと普通に周辺の探索も!」
「俺はカリスト大司教についておくよ、この国も前に来た事あるし。こっちは任せてゆっくり観光しておいで」
「あたしも日焼けしちゃうからやめておくわ、カリスト大司教の護衛をするわね」
「俺も護衛で待機しておく。ホセとエリアスは?」
エンリケとビビアナとリカルドは待機組に決定し、話を振られたホセとエリアスは顔を見合わせた。
「アイルを1人ににすると不安だからな、コイツを見張っておくさ」
「僕もアイルについて行くよ、何だか面白そうな予感するし」
「あ、あの、カリスト大司教、私もアイル様に同行してもよろしいでしょうか? 何かあった時に聖騎士がいた方が安心かと…」
ホセとエリアスに追従する様にエクトルが言った、やはり1番若い分好奇心が旺盛なのかもしれない。
「わかりました、アイル様を頼みましたよ」
「はい!」
こうして滞在中の行動班分けが決定した。
その日は市場を回って南国フルーツを購入した、ちなみに市が終わる直前を見計らって残りを全部買うからとマンゴーとドラゴンフルーツとパイナップルを大量購入。
ドラゴンフルーツは味の薄いキウイみたいで味自体は特に好きでは無いが、スーパーフードと言って良い美容食なのでビビアナも食べるだろう。
マンゴーとパイナップルは小さめにカットして冷凍すればおやつにもなるし、シャーベット状のスムージーにしても美味しいよね。
帰る頃にはミキサーの魔道具が出来てるといいなぁ、ガブリエルは頑張ってくれているだろうか。
よし、出来て無かったらやる気が出る様にお土産としてトロピカルジュースを作ってあげよう。
「只今戻りました」
「おや、おかえりさないませ。お買い物は楽しめましたか?」
エクトルと一緒にカリスト大司教の部屋に宿屋に戻って来た事を報告に寄ったら、全員でのんびりお茶を飲んでいた。
「はい、とっても良い買い物ができました」
「アイル様の買い物は見ていて気持ち良いくらいでしたよ。今は既に終わっていますが、市の終わりかけに店主に声を掛け、ここにある物全部買い取ったら安くしてくれるかと交渉したのですが店主が信じずに全部だったらと損では無いでしょうが、凄く安い値段を提示したのです。そして店主に代金を払って全ての果物が一瞬で消えた時の店主の顔が…ぷぷっ」
「あはは、確かに凄い顔してたもんねぇ」
「ありゃ殆ど利益はねぇんじゃねぇの? 4割くらい安く無かったか?」
「大丈夫だよ、そう思って少し多めに渡しておいたから」
「楽しかった様でなによりですね、あと1時間もすれば夕食だそうです。それまでお部屋でおやすみになると良いでしょう、ネックレスをホセ殿に預けるのなら夕食でお酒を召し上がっても良いですよ」
「へ!?」
カリスト大司教はお茶目に私にウィンクしてにこにこ笑っている、残っていた3人に視線を向けるとビビアナとエンリケは微笑み、リカルドはビビアナを見た。
どうやら私の居ない間に色々と暴露されていた様だ、そして犯人はビビアナだろう。
観光しないという選択肢は無いが、私が居ない間にどれだけの事が暴露されるのかちょっと心配になった。
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