第266話 カリスト大司教、エドと対面する
旅に出てから思った事、それはカリスト大司教って本当は凄く凄~く偉い人だったんだなぁ…という事。
立ち寄った町(村だと教会が無い事が多い)でカリスト大司教が歩くと、その町の司祭や司教がダッシュで現れて跪いて挨拶をしに来るのだ。
そんな最初の1週間を過ごすと、到着するのは交易都市トレラーガである。
大司教という立場は当然の様に貴族級の扱いで門を通過出来るので長蛇の列に並ぶ事は無かった。
そして門番は確認を済ませると御者席の聖騎士とリカルドに言った。
「エドガルドさんより伝言を預かってます、大司教様御一行をお迎えする準備が出来ているので屋敷に滞在して欲しいとの事です」
「「「「…………」」」」
門番の声は馬車内の私達にも聞こえた、そして当然の様に動向を把握されている事に無言になる『
「エドガルドという方はこの町では有名な方の様ですね、ウルスカに向かう時に立ち寄ったこの町の教会の司教が彼の尽力によりこの1年以内で治安が格段に良くなったとか。1度お会いしてみたいと思っていたので嬉しいですね」
「そういえば俺もここに寄った時にその名前聞いたかも、ある日を境に人が変わったみたいに改革を始めて、今では領主からも信頼される程の人物だとか。何があったんだろうねぇ?」
「それはアイルと出会ったからだよ、エドガルドはそりゃもうアイルに心酔しているんだ。だからアイルがこの町で安全に過ごせる様にと私財を使って治安改善に尽力したんだと本人が言っていたよ」
にこやかに話すカリスト大司教とエンリケに何と返して良いかわからず無言になっていると、エリアスが素敵な笑顔を浮かべて説明した。
「おお、ではアイル様が賢者であると知る前から…!? さぞかし立派な方なのでしょうね、素晴らしい
「本当に! 是非とも語らってみたいものですね!」
カリスト大司教が感心した様に言うと、エクトルも興奮気味に頷いた。
これは…っ、真実を教えるべき!?
だけど変態だって知ったらそんな屋敷に泊まる訳にはいかないとか言い出すかな?
きっとエドの屋敷に泊まった事のある皆は宿よりエドの屋敷の方が良いって言うよね、食事も私のレシピ習得してる訳だし。
「うふふ、アイルが賢者だと知る前からエドガルドが心酔してるのは間違い無いわね、良い人かと聞かれたら素直に頷けないけれど」
「実物を見て判断して貰うしかねぇだろ」
「何だか面白い人みたいだね、会うのが楽しみになってきたよ」
肩を竦めて言うホセに、エンリケが笑顔で言った、本人に会ってもその笑顔が崩れないと良いけどね。
リカルドは素直にエドの屋敷に向かうらしく、馬車は
屋敷の前にはエドの手下その1、その2ことウーゴとセサルが居た様で、リカルドを見るとセサルが屋敷の中へ人を呼びに行ったらしい。
そして屋敷の前に馬車が停車すると同時にエドが玄関から出て来るのが小窓から見えた。
最初に私が馬車から降りるとエドに抱き締められ、挨拶のハグとして受け入れたが車内でガタッと誰かが立ち上がる音がした。
「よく来てくれたね! 半年は会えなくなると思っていたのに、こんなに早く会えるなんて嬉しいよ」
「またお世話になるね。明日出発したらそれこそ半年くらい戻れないんだ」
「聞いてるよ、教会本部まで行くんだろう? ついて行きたいが、さすがに半年もここを離れられないからね…、ちゃんと戻って来るんだろう?」
「もちろんだよ! 家はウルスカにあるし、早く戻らないとセシリオがビビアナと結婚する為に待ってるからね」
「ンンッ、アイル様、そちらのエドガルドさんとおっしゃる方とは親しいのですか?」
私達が話をしていて痺れを切らしたのか、カリスト大司教が咳払いをしながら馬車から降りて来た。
もしかしてさっきの音はカリスト大司教が立ち上がった音だったんだろうか。
「これはこれは、ようこそカリスト大司教様、お待ちしておりました。私としてはアイルを妻に迎えたい程にお慕いしているのですが、残念ながら私の片想いなのですよ。なので少しでも役に立って側に居られる様に努力している
妻に迎えたいとか初耳なんですけどォー!?
それとも私が覚えて無いとか聞き流してしまっただけで言われた事があったんだろうか、いやまぁ、聞いてたとしてもお断りなんだけどね!?
見た目だけは好みなので血迷わない様に気を付けねば、なぜなら今日はいつもより爽やかなスーツ姿で私のプレゼントしたカフス付きという姿だし。
カリスト大司教はエドが私をアイルと呼び捨てにしたり妻に迎えたいと言った瞬間、ほんの少しだけ眉がピクリと反応したけど、片想いだとか哀れな男という言葉を聞いて慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
「ははは、アイル様は人を惹きつける魅力をお持ちですからね、お気持ちはわかります」
カリスト大司教の後を追う様に出て来たエクトルとオラシオもさりげなくエドに対し、まるで私が家に彼氏を連れて来た時の弟の様な視線を向けていた。
しかし猫被り紳士モードの爽やかな笑顔でその視線を躱して挨拶を済ませると、私達を屋敷に招き入れた。
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