第256話 リークされたホセの秘密

「じゃあコレお昼ご飯ね」



「わかった、ありがとう」



 森の中に入り、二手に分かれる事になったのでエンリケのストレージに3人分の食事を預けた。

 組分けは私とリカルドとエリアスのチームと、ホセとビビアナとエンリケのチームになった、というかした。



 さっきアイアンクローを喰らったばかりなのでホセと離れようと思ったのだ。

 だからリカルドが口を開く前に2人の服の裾を掴んで無言のアピールをしたら、2人は苦笑いしながらも了承してくれた。

 そして既に探索魔法で位置を把握している大蜘蛛ビッグスパイダーの元へ各自向かう。



「それにしても…ホセとアイルは定期的に喧嘩してるよねぇ。ホセとビビアナだと子供の頃からの習慣なせいかホセが譲ってるけど、アイル相手だとどっちも譲らないもんね」



「そんなのホセが図星さされてムキになるからだもん、私が大人になって譲ってあげようと思っても余計なひと言のせいでそんな考えも吹っ飛んじゃうんだよ。だからホセが悪いの!」



「ククッ、まぁ…ホセは思った事を口に出し過ぎだとは思うが、あれでも色々考えてるから大目に見てやってくれ」



「本当かなぁ、さっきもあれだけ警戒してたクセに、相手が女の子だってわかったら油断してたしさ。あの子達に引っかかったら絶対笑ってやるんだから!」



 周囲を警戒しながら森を進みつつ、私達は会話を続ける。



「いやぁ、ホセは引っかからないと思うよ。駆け出しの頃に色々あったみたいだから、そういう意味では割り切った付き合いしかしない分安全かな。実際ちょっとした遊び相手がいた事はあっても恋人が居た事無いはずだし」



「おい、エリアス」



「おっと、話し過ぎたかな?」



 リカルドがエリアスをたしなめたが、私は既に聞いてしまった。



「エリアス、その色々あったっていう辺りをもっと詳しく教えて?」



 期待に満ちた目を向けると、気不味そうに目を逸らされた。



「えぇ~? ホセにバレたら面倒な事になるからさぁ…」



「そんな事言わずにさぁ、バレたりしないから大丈夫だって! 夕食のリクエストの優先権3回分でどう!?」



「うぅ~ん…」



 結局ホセの秘密は夕食リクエスト5回分で売られる事になった。

 せめて食後に話させてというので、午前中に張り切って5体程討伐し、そして昼食後。



「ってわけ、絶対僕が言ったのは秘密にしてよ!?」



「わかってるって!」



 ふ~ん、そっかぁ…、ホセってば逆ナンされて何回かデートして初めて夜のデートに誘われたと思ったら娼館への同伴で、しかも結局性欲に負けてそのまま娼婦を買って筆下ろしを済ませた挙句、暫く通って貢いでたのかぁ。



 しかも慣れて自信を持った頃にトレラーガの同族の娼婦に性的な意味でコテンパンにされて自信を無くして、そのお姐さんに手取り足取り腰取り優しく技術を伝授して貰ったとか……………面白過ぎるでしょ!!



 面白過ぎて顔のニヨニヨが止まらない、あぁダメだ、ホセを見たら生温かい目で見てしまいそう。

 ダメよアイル、誰にでも若気の至りっていうのはあるんだから知らないフリしてあげるのが大人ってものでしょう!?



「知らないぞ…」



 リカルドがニヤつく私を見て、呆れながらエリアスに言った。



「まぁ…、いざとなったら夕食リクエスト2回分譲ってゆるしてもらおうかな…」



 話の内容を思い出しては吹き出してる私を不安そうに見ながらエリアスが呟いた。

 そして午後からも数体討伐したので、冷たい果実水を飲みつつ休憩。



「とりあえず俺達の分だけで最低限の依頼はこなせたから、暫くは大蜘蛛の依頼を受けなくてもいいだろう。結構奥まで来たし、そろそろ戻るとするか」



「そうだね、向こうも森の入り口に向かってる頃だろうし……って、アイル、まだ笑いがおさまらないの? もう行くよ」



 まだ思い出してはニヨニヨしてる私にジト目を向けるエリアス、だってこんな面白いネタ1週間は笑えるって。

 歩き出したリカルドとエリアスを慌てて追い掛ける。



「大丈夫! バレない様に違う理由考えとくから!」



「何がバレない理由だって?」



「ひゃうっ!?」



 いきなり真後ろから声を掛けられてピョイと前方へ飛び上がった。



「はははは、どんだけ驚いてんだよ」



 お腹を抱えて笑うホセ、普段なら驚かさないでよと怒るところだが、今の私はホセに寛容になっている。



「もぉ~、ホセがいきなり声掛けるからでしょう?」



「っ!?」



 普段ならプリプリ怒りながら言うセリフを生温かい微笑みで言ったせいか、ホセが怪訝けげんな顔をした。



「そっちも終わったみたいだね、ビビアナとエンリケはどうしたの?」



「え? あ、ああ、お前らを呼び止める為に先に来ただけだからすぐ来るさ、ホレ」



 ホセが親指で差した先には手を振るビビアナとエンリケが見えた。

 しかし、さすがエリアス、ホセが私の態度について聞く前に他の話をふるとは。

 エンリケから魔物を受け取ってウルスカまでの帰り道、私は吹き出さない様に頑張った、しかし時々ホセに生温かい視線を送ってしまったのは仕方の無い事だろう。



 ギルドに到着すると今朝の女の子4人組が私達を待っていたのか、チラチラとこちらを見て来た。

 もしかしたらエンリケが言ってたみたいに男性陣を誘おうとしているのかもしれない。



 今朝の私だったら不機嫌になってたかもしれないけど、今の私なら大抵の事は受け流す自信がある、むしろ彼女達がどんな行動に出るか楽しみにしてると言えるだろう。

 解体場へ納品を済ませ、リカルドがカウンターでの受付も終わらせたので帰ろうとした時、予想通り彼女達がこちらへと向かって来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る