第235話 エドガルドの屋敷にて
午後からセシリオとエドが馬に乗り、エリアスが御者をしてトレラーガに入った。
エドの顔パスですんなり通され、そのままエドの屋敷に向かうと玄関にアルトゥロ達が待ち構え…出迎えていた。
「お帰りなさいませ、門からの無事到着の報せを聞いて安堵致しました。エドガルド様は急ぎの案件を処理して頂かなくてはいけないので皆様は夕食までお部屋でお寛ぎ下さい」
目の奥が全く笑って無い笑顔でアルトゥロがそう言うと、エドガルドはあれよあれよと言う間に連行されて行った。
私達がこの屋敷を出発した時よりやつれていたから大変だったんだろうなぁ。
「ボスにはまた夕食で会えるからあんたらは前回と同じ部屋で休んでてくれ、そこの2人の部屋も準備してあるからよ」
以前より更に小綺麗な格好になったエドの手下その1、その2が部屋まで案内してくれた。
何だか初めて私がこの屋敷に来た時より所作が洗練されていて、初対面の時に下卑た笑みを浮かべていたのが信じられないくらい変わっているが、言葉遣いまではなかなか変えられない様だ。。
階段を上がりリカルド達が左、私達が右に向かうとガブリエルとセシリオが戸惑った。
「え? あれ? 違うところに行くのかい?」
「あたしとセシリオは同じ部屋で良いからこっちよ」
ビビアナがセシリオの腕を絡め取る。
「あ~、そういやエルフの旦那はお貴族様だったな。広い部屋が良いなら一応使える様にしてあるし、そっちに行くか?」
「広さは特に気にしないけど、アイルの近くの方がいいかな」
「わかった、セサル、エルフの旦那もそっちの部屋へ案内してくれ」
「おぅ、じゃあついて来てくれ」
セサルと呼ばれた手下その2にガブリエルはビビアナ達の部屋を挟んだ私の反対隣の部屋に案内された。
「7時から夕食だから呼びにくるぜ、何かあったら屋敷の人間捕まえて言ってくれりゃ良いからよ」
「あ、エドが商業ギルドに登録したレシピを料理人に教える様に指名依頼するって言ってたから、いつから始めるか確認をお願い。あと私が厨房使える時も教えて欲しいな」
「わかった、夕食の時にわかる様にしておく」
「よろしく~」
夕食までの間に厨房使わせてもらうお礼としてクリームコロッケのレシピを書き出した、このレシピもウルスカに戻ったら商業ギルドに登録しておこうかな。
基本さえ知ってれば赤鎧だけじゃなくコーンで作ったりして店ごとに特色出しやすいから良いかも。
冷やす時間が必要だからもう今日は無理だね、明日の朝食後に厨房が空いてる時に下拵えしようっと。
持ってる食材の確認とついでにここで作り置きしておきたい献立を考えていたらクゥとお腹が鳴った、時計を見るとあと数分で7時だったのでドアを開けたら……ビビアナとセシリオが自分達の部屋の前でキスをしていた。
無言でそっとドアを閉める私。
何で!? 部屋なら好きなだけ2人きりでイチャつけるんだから室内でキスでも何でもすればいいじゃない!?
身内がイチャついてるところを見た時ってこんな気持ちなんだろうなぁ、他人よりも見ちゃいけないモノを見た気になってしまう。
暫く動揺を鎮める為にドアの内側で待機していたらセサルの声が聞こえた。
「うお、姐さんなんで廊下でイチャついてんだ!? 部屋の中でヤりゃ良いのに、目の毒だぜ」
「うふふ、そしたら夕食を食べ損ねちゃうじゃない」
「へぇへぇ、お熱いこって。もうその夕食だから呼びに来たんだよ。アイルお嬢さん食事の時間だぜ」
聞き耳を立てていたドアが叩かれてビクッとなったが、平静を装いドアを開ける。
「ありがとう、お腹空いちゃったから夕食が楽しみだよ」
「へへ、久々にボスが帰って来て料理人も張り切ってたから楽しみにして良いと思うぜ。エルフの旦那~、食事の時間だぜ~」
セサルはニカッと笑うとガブリエルを呼びに向かった。
目撃されたのが恥ずかしいのか、セシリオの顔が赤い、そんなセシリオをビビアナは愛おしそうに微笑んで眺めている。
もしかしてこの恥ずかしがるセシリオが見たくて廊下でイチャついていたんじゃなかろうか。
全員揃ったので食堂へ行くと『
席に着くとたった数時間でやつれたエドが姿を見せた、説教でもされたんだろうか。
「待たせたね、ここまで移動で疲れてるだろうから暫くはこの屋敷でゆっくり過ごして鋭気を養ってくれれば良い。ちゃんともてなしはさせてもらうよ」
そんな言葉と共に夕食会が始まった、明日から私はこの屋敷とエドが経営している食堂の料理人に商業ギルドに登録した料理を教える事になり、その手続きの為にリカルドは明日冒険者ギルドへ向かう事になった。
「明日はアイルの言ってたカニクリームコロッケは食べれるのかい?」
ガブリエルが期待した目で聞いて来た、何だかんだガブリエルも結構な食いしん坊だよね。
「まだ商業ギルドに登録してないから教えるのはどうかなぁ、ちゃんと料理人が居るのに私の料理を食事に出すっていうのも…」
「それならエリアスに商業ギルドへ行ってもらって先にレシピを登録しちゃえば良いんじゃない? エリアスに任せたら安心でしょ?」
「僕は構わないよ、それで早く新作料理が食べられる訳だし」
ビビアナの提案にエリアスを窺うと笑顔で了承してくれた、これで明日の昼食にカニクリームコロッケが出せそうだ。
食事が終わり、エドの手下その1が男3人を連れてススッと男性陣に近付いた。
「兄さん方、これから楽しめるところへ案内しますぜ、ここまで移動ばかりで不自由して来たでしょう? イイ
まだ女性である私とビビアナが居るというのにその話題はどうかと思う、しかしビビアナをチラリと見るとセシリオが居るせいか気にもして無かった。
ガブリエルも全く興味が無い様で、私に帰りの道中に食べたい物をリクエストしている。
「娼館かぁ…、明日は早めに商業ギルドに行った方がいいだろうし…」
「まぁまぁ、気に入らなきゃ早めに切り上げて来りゃいいってもんですぜ。おい、エロイ、イケル、パコ、(※実際にスペインで使われている名前です)ちゃんとご案内するんだぞ?」
「「「へい」」」 「ブフゥッ、ゲホッゲホッ」
3人の男達の名前に思わず吹き出してしまった、わざとなの!? 狙ってその名前の男達を用意したの!?
「アイル、大丈夫かい!?」
咽せる私に慌ててエドが背中をさすってくれた。
「あ、うん、大丈夫、ちょっと咽せただけ…グゥッ」
ダメだ、3人セットで見ちゃうと笑いが抑えられない、既に食事は終えていたので部屋に戻る事にした。
その日の夜は仲間達が娼館に行った事より、3人の名前のインパクトが強くてふとした瞬間に思い出してはお腹を抱えて笑い転げ、部屋が防音である事に感謝した。
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