第201話 不要な褒美はゴミ同然
「セゴニア王、褒美に対する希望は聞いて頂けるのでしょうか? 望まぬ褒美を押し付けるというのならばこのままこの国を出て2度と足を踏み入れるつもりはありませんが」
「待て、褒美の希望はとりあえず聞こう。それより何故セゴニアにもう来ぬと言うのだ?」
戸惑いながらも答えるセゴニア王、ふぅん、とりあえずなんだ…。
でも一応聞く耳持ってるだけマシかな、もう来ないっていう理由がわからないのは強制的に連れて来るのが当たり前と思っているのか、それとも迎えに行く様に言って後は丸投げしてるからか。
「私達はここへ意見も都合も聞いて貰えず強引に連れて来られました、この時点で既に関わりたくないと思うのは当然でしょう。だというのに移動中には誰に唆されたのかわかりませんが心の籠らぬ言葉で私を籠絡しようとする殿下方の思惑が透けて見えて不快でした。あまつさえ到着と同時に仲間達と分断されて部屋には監視が潜んでいたのですよ? 今朝は私が泊まるはずだった客間で騒ぎがあった様ですし?」
私が言葉を紡ぐ度にセゴニア王の眉間の皺が深く刻まれていった、どうやら全てがセゴニア王の命令で行った事では無さそうだ。
でもまぁ、殿下達の行動を把握して無かったのは減点だよね。
周りの貴族も知らなかったのか、王の前にも関わらずザワザワと話している。
「ふむ…、どうやら其方らをもてなすべき者達が相応しくない行動をした様だな。詫びの代わりに其方らの希望する褒美とやらを検討しよう、言ってみるが良い」
セゴニア王の言葉に騒めきがピタリと止んだ、私が何を言うのか気になっているのだろう。
「では…、我々『
「何と…! ではパルテナでは以前から其方が賢者だと知っていたのか!?」
「いいえ、私が騒がれたくなくて隠しておりましたのでパルテナ王も知らなかったはずです(ガブリエルがこっそりバラしてなきゃね)、手柄を立てた時に褒美として願い出ましたところ、パルテナ王は快く聞き入れて下さいました」
満面の笑みで言い切ってやった、ドヤァ。
「む…、ではその許可証を発行すれば今後も我が国に参るのだな?」
「そうですね、実は賢者サブローの子孫とは個人的に知り合いでして、この後もコルバドへ赴いて色々と買い付けて来ようかと思っております。許可証が頂けるのならば時々行き来する事になりますので必然的に立ち寄る事になりますね。最悪パルテナ国内の交易している都市に行けば商品は手に入りますけど」
絶対コルバドまで行かなくても平気だもんね、という事をしっかりアピールしておいた。
行き来するなら許可証出さなくて良いって思われたら困るし。
「そうか…」
「あ、私が居なかったとはいえ部屋を襲撃した事に対するお詫びとして発行して下さってもよろしいのですよ?」
その時侍従らしき人がセゴニア王に何やら耳打ちした、きっと私の客間での出来事の報告だろう。
内容を聞いたセゴニア王は怒りで顔を赤く染め、諦めた様にため息を吐いた。
「わかった、其方の言う通り許可証を発行しよう。代わりに数日我が国に滞在して色々と話を聞かせて欲しい」
私はチラリとリカルドを見ると、コクリと小さく頷くのを確認した。
「仰せのままに」
その後、騒つく謁見の間を後にして滞在中の要望などを聞かれたので皆と同じ場所にして欲しいとお願いした、あと集まって話せるサロンも。
誰かの部屋に集まっても椅子とか人数分無いからベッドに座ったりして話辛かったんだよね。
ついでにあの失礼な大臣とはもう顔を合わせたくないという要望も忘れてない。
数日滞在する事になったのでギルド経由でウルスカとか、カタヘルナのギルマスに状況を教えておくべく着替えた後王都の街中へと繰り出した。
[アイルの客間 side]
「きゃあぁぁぁっ」
賢者である小柄な少女を起こしに来た侍女が声を掛けたながらベッドのカーテンを開けると、そこには男性2人が眠っていたので思わず悲鳴を上げた。
その声を聞いてドアの前に控えていた侍女や騎士が何事かと部屋に雪崩れ込んだ。
彼らが見たものは抱き合う様に眠る第6王子のカンデラリオと王孫ロドルフォ、侍女の悲鳴にも起きなかったので侍女が肩を揺すると2人は目を覚ました。
「「うわぁっ!?」」
お互いを認識して飛び起き、辺りを見回して集まっていた人数に2度驚いた。
「ア、アイル殿は!?」
カンデラリオが絞り出す様に問うと侍女は首を振った。
「賢者様を起こしに参ったのですが…いらっしゃらずお2人がこちらで眠っておられたのです」
「「…………」」
2人は昨夜何が起こったのか理解した、お互い似た手口を使ったが為に起こった悲劇だという事も。
お互いチラリと見合って頭を抱えたところで呼び出された侍従長が仁王立ちで2人を見下ろした。
侍従長は2人にとって世話になっているという点ではある意味父親よりも頭が上がらない存在だったりする。
侍従長は他の者にはアイルの捜索を命じて部屋から出すと、洗いざらい喋らせた。
幼い頃から世話をしてきた侍従長から見れば嘘をついたかどうかなどひと目でわかるのでアイルの行方以外全てが明らかになり、侍従長は頭の痛い思いで謁見の間に居るセゴニア王へと報告に向かった。
その後、2人は謹慎という名目で軟禁される事になる。
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