第171話 お部屋訪問
ワンチャン嫌がらせとしてアルトゥロがこの部屋を準備したという線もなきにしもあらず…、そう思いつつトイレのドアを開けた。
細部にまで拘ってやがりますね、嫌がらせでここまで細やかな心配りをするなんてあり得ない、てことはやっぱりエドだよね。
次にバスルームのドアを開けた、そこには猫足バスタブが鎮座していて、ひと目で高級品とわかるシャンプーやトリートメント、石鹸が並んでいる。
しかも脱衣所にはパジャマ…? いや、これはネグリジェか、丈が短かったり透けてたらベビードールと言えるモノがバスタオルと一緒に置かれていた。
こ、コレを着て寝ろと…?
コレ新婚初夜の夜着と言われても納得するやつなんですけど。
肩紐こそ幅広いが、膝丈キャミワンピの形でピンクのシルクっぽい生地に白いレースとリボン、さり気なく片側に太腿までのスリットが入っている。
ドレスと言い、エドってばスリットフェチなの!?
一応セットらしいガウンもあるけど、可愛らし過ぎて着るにはちょっと勇気が要るヤツだ。
部屋に鍵は…付いてるね、よし。
あれ? でもエドの屋敷だからマスターキーを持ってるのはエド…だよね。
大丈夫だとは思うけど一応結界張って寝た方が安全かもしれない、鍵穴に鍵が入らない位置に張れば開けられないよね。
ところで男性陣の部屋はどんな感じなんだろう、夕食にはまだ時間があるし、ビビアナを誘って見に行こうかな。
部屋を出てビビアナの部屋をノックしたが、返事が無い。
ドアノブを回すとドアが開いて部屋の奥から水音が聞こえて来た、どうやらお風呂に入っている様だ、高級なシャンプーとか試したくなったのかもしれない。
お風呂にも鍵は付いていたけど不用心ではなかろうか。
でもエドの家はセキュリティしっかりしてそうだから大丈夫かな?
そっとドアを閉めて階段を挟んだ反対側へと向かい、1番手前の部屋をノックした。
この部屋は誰が使ってるのかな?
ノックした後、1歩下がって待っているとドアが開いた。
出て来たのは頭からタオルを掛けて髪を拭いているバスローブ姿のエリアスだった。
「あれ? アイルどうしたの?」
「あ、ごめん、シャワー浴びてたんだね」
「さっき出たところだから大丈夫、夕食はまだだよね?」
「うん、えへへ、部屋がね…、こっちはどんなのかな~と思って見に来たの。ビビアナも誘おうと思ったんだけどお風呂に入ってるみたいで1人なんだ」
「なるほどね、見たかったらどうぞ。そっちとは違う?」
エリアスが部屋に招き入れてくれたのでキョロキョロと見回す、広さは断然私達の方が広い。
こっちは8畳程の広さにベッドとお茶を飲む為であろう小さなテーブルセットとシャワールームとトイレのドア。
何となく高級宿屋の一室という感じで落ち着くといえば落ち着く雰囲気。
「うん…、私達の部屋の方が広かったよ、でもこっちの方が落ち着くなぁ。あ、でもこっちはシャワーだけなんだよね? 向こうは浴槽もあるからお湯に浸かれるんだ、女性が身体を冷やさない為の気遣いかな?」
「へぇ、僕もアイル達の部屋見に行こうかな、行ってもいい?」
「うん、じゃあ髪を乾かしてあげるよ。階段挟んだ最初の部屋だから着替えたらおいでよ」
「お願いしようかな」
「『
少し髪が風に煽られた様に揺れたと思ったら、次の瞬間には良い感じに乾いている。
これは弱めに掛けないと髪や肌がカサついてしまうので要注意なのだ。
「ありがとう、じゃあ後でそっちの部屋に遊びに行くね」
「わかった、………部屋を見ても笑わないでね?」
部屋を出てポツリと呟く様に言ってからドアを閉めた。
エリアスが遊びに来るなら今からお風呂は入れないし、洗浄魔法で綺麗にして着替えだけしちゃおうっと。
私はすぐにエリアスが来るだろうと思って急いでワンピースに着替えを済ませる、なのに思ったより遅くにドアがノックされた。
「はぁい」
ドアを開けると男性陣3人が揃っていた、そしてドアの隙間から室内を見た瞬間エリアスは明らかに笑いを堪え、リカルドは目を見開き、ホセは大爆笑し出す。
「ぶっ、わははははは! 何だこの部屋!! おまっ、お前この部屋で寝るのか!?」
くっ、リカルドとホセを誘ってたから遅くなったのか、笑わないでって言ったから逆に面白いモノが見られると思ったのかも。
私は即座にドアを閉めた、が、鍵を閉める前に勢いよくドアを開けられてしまい、反動でドアを開けたホセに突っ込んだ。
抱き止めてくれたものの、そのまま抱き締める形で拘束されて3人は部屋の中になだれ込んだ。
「うわ~、凄いなぁ、コレってエドガルドの趣味だよね? アイルってば愛されてるねぇ~」
「この広さで1人部屋かよ…、ビビアナはどこなんだ?」
「ビビアナは隣の部屋だよ、ここと広さは同じで落ち着いた感じの家具が置かれてた…」
説明しつつ諦めて身体の力を抜くと、やっとホセが離してくれた。
「はぁ…、という事はこの部屋はアイルの為だけに準備されたという事か、凄く重い愛というか…見返りを求められた時に大変な事になるんじゃないのか?」
感心とも呆れとも取れるため息を吐いてリカルドが言った。
「ふっ、こういうのはエドが勝手に準備したのであって私がお願いした訳でも何でも無いんだから借りだとか思わなくていいの! むしろ泊まりに来て欲しくて準備した部屋に泊まってあげるんだから無駄にならなかったと感謝されてもいいくらいなのよ!」
こういうのはアレだ、気にしたら負けなので気まぐれ猫気質なキャバ嬢の如く貢がれて当たり前、気が向いたら褒めてあげるわってくらいの心構えじゃないとダメだと思う。
故に胸を張ってキッパリと言い切った。
「うわぁ「「悪女…」」」
3人の戦慄した様な呟きがハモった、違うもん!
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