第155話 出迎えたのは
エドにお土産を渡した後、ミゲルにも赤鎧を渡して(ミゲルより父親のドロテオが飛び跳ねて喜んでいた)宿屋に戻ると丁度夕食の時間帯になっていた。
夕食を食べつつ次に来た時はエドの所に泊まる約束をしたと皆に報告したら、残念なモノを見る目を向けられてしまった。
私としてはとりあえずテディが無事で良かったと思うしかない。
うん、本人はキョトンとしてたけど無垢なまま育って欲しい。
翌朝には恒例行事となったエドの見送りでトレラーガを出発した。(エドがテディに興味持たなくて肩透かしを喰らったが)
道中キャンプ場で野営をする、トレラーガの向こうの山道と違ってちゃんとした街道沿いにあるから井戸もあるし他の冒険者らしき人達もチラホラ。
テントは男3人と女性2人プラステディに分かれて使用、テディが同行してからホセは狭いのが嫌でテントで獣化している。
テディはまだ獣化出来ないらしいが、もし獣化出来たとしても熊なので体積が倍以上になるはず。
私がテディの獣化をモフる日は無いだろう、きっと毛皮も大人になったらゴワゴワだろうし。
時々朝起きたらテディがビビアナの胸で窒息死しそうになったりもしたけど、とうとうウルスカに到着する日の朝になった。
「じゃあ今日の予定を確認するぞ、ウルスカに到着したらまず馬を返す。その後教会へ行ってテディをマザーに預けてからギルドへ行く。異論はあるか?」
「「「「無し」」」」
「…………」
朝食後にリカルドが皆に確認した、テディだけは少し不安そうにしている。
「安心しなさい、マザーはあたしやホセを育ててくれた優しい人よ」
「怒ると怖ぇけどな」
「それはホセがバカな事ばっかりやるからでしょ」
「………」
ビビアナとホセがテディに話しかけるが表情が暗い、やはり知らない所で暮らすとなると不安が大きいのだろう。
「私もマザーを知ってるけど、優しい人だよ。孤児院の子達にも冒険者やってる子達がいるんだけど、留守にしてる私達の家の管理を今も任せてるんだ。時々顔を出すから結構私達とも仲良しなの、テディもすぐに皆と仲良くなれるよ」
よしよしと頭を撫でるとテディが顔を上げた。
「また…会えるの…?」
「うふふ、会えるわよ。食材の魔物が多く獲れた時にもお裾分けを持って行くし、今後も家を長期で空ける時は管理を指名依頼するしね。大体同じ町に住んでたら偶然会ったりもするんじゃないかしら?」
「そっか…、そうなんだ…」
「そうだよ、会おうと思えばいつでも会えるからね」
ビビアナの言葉にテディはやっと安心した様に微笑んだ、どうやら私達と会えなくなるのが寂しかった様だ、可愛い奴め。
ムギュッと抱き締めて頭に頬擦りをする、ホセに教わった(?)獣人の甘やかし方だ。
ホセのジトリとした視線を感じる、わかっていてもついお世話をしすぎて何度か注意されたもんね。
今も甘やかし過ぎだと言いたいのだろう、でも今日で最後なんだし許して欲しい。
旅も楽しいけど、やっぱり早く自分の部屋でゆっくり休みたい。
それに今回の報酬で貯蓄プラス仕込み靴の予算が貯まったからブラス親方に頼みに行かなきゃ。
ガブリエルにもお土産の赤鎧を届けに行かないと、大量の赤鎧もある程度すぐ食べられる様に茹でて解体しておきたいし、暫くは結構忙しいかも。
「さぁ、もうひと踏ん張りだ、行くぞ」
リカルドの号令でキャンプ場を後にした。
明らかに冒険者な出立ちなせいか、盗賊に遭う事も無く時々出てくる食材魔物を討伐してはストレージに放り込みつつ進んだ。
知ってる道なせいか心なしか馬達の足取りも軽い気がする。
「帰ってきた~!」
思わずウルスカの外壁を見て大きな声を出した、すっかりウルスカは私にとって帰る場所になったんだなぁと実感する。
森に探索に行った冒険者達が帰るには少し早い時間だったお陰であまり待つ事も無く門を潜れた。
貸し馬屋に馬達を返し、暫くは休ませてやって欲しいと少し余分に代金を払った。
テディもずっと乗せてくれた馬に愛着が芽生えた様で別れを惜しんでいる。
貸し馬屋の主人がガブリエルの作ったスライムジェルシートをガン見していたが気付かないフリしてサッと収納。
十数年前まで魔法を使える人達がまだ生きていたからシートの存在は知っていたのだろう、しかしコレは私のお尻の為にも譲れないのだ。
そして皆で教会へと向かった、マザーは無事に戻って来た事を喜んでくれて、
そしてテディを紹介してマザーにだけ事情を話すと快く引き受けて貰えた。
テディには道中買った服や小物、あとテディが道中仕留めた魔物3体を渡した。
解体はマザーが出来るとビビアナから聞いているので任せて大丈夫だろう。
ホセが並べた獲物はテディが1人で討伐したと説明したので、既に一目置かれている様だった、これならすぐに馴染む事が出来ると思う。
家の管理を頼んだ子達に明日家に寄ってからギルドへ依頼完了の報告に行く様に言ってギルドへと向かった。
テディには敢えてアッサリと別れを告げた、あまりしんみり別れると気軽に会えなくなると心配になるかもしれないと思ったし。
孤児院の子達に囲まれてしんみりって雰囲気でも無かったから丁度良かったのかもしれない。
そしてギルドに向かった私達は、少し見ない間に更に寂しくなった様に見える頭のディエゴに迎えられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます