第61話 関係

「え~っと、アイル? そちらはどなたかな?」



「おや、新しいメンバーが入ったとは聞いて無かったが…エルフとは珍しい。私はエドガルド、アイルの下僕「わぁぁぁぁ! イイ笑顔でなんて事言ってんの!?」



 おずおずと声を掛けてきたガブリエルに対し、エドガルドは立ち上がると色気を含みつつも爽やか風味の笑顔で胸に手を当てとんでもない自己紹介をした。

 ていうか、今聞いて無かったって言わなかった?

 もしかして私達の情報集めてたりするわけ?



「ふっ、下僕でなければ恋の奴隷とでも言うべきだったかな?」



「……ッ!」



 自然な動作でウィンクをひとつ、今日はピシッとしたスーツ姿なせいか今のエドガルドは素敵なイケオジ以外の何者でも無い。

 しかもこんなにハッキリ好意を示されるのは久々なので恋愛感情は無くてもドギマギしてしまう。



 既に『希望エスペランサ』の皆はエドガルドを無害だと認識しているせいで誰も止める気配はない、ある意味では危険人物という認識であはるけれど。



「彼はガブリエル、護衛対象でメンバーじゃないの。ところでどうして私達が居るってわかったの? 今日トレラーガに到着したばかりよ?」



「ははは、そんなのアイルが来たら私に報せが入る様にしているに決まってるじゃないか。それに冒険者ギルドにもアイル達のパーティがトレラーガ周辺に来る依頼を受けたら報せが来る様になってるしな」



「そ、そう…」



 なんというオープンなストーカー…!

 でもまぁ、この街とギルド関連限定だからそんなに実害は無いしいい…かな?



「ンンッ、ところで出掛ける話はどうなったのかな?」



 痺れを切らしたらしいガブリエルが咳払いした。



「あっ、そうだね。ごめんねエド、私達今から買い物に出掛けるの」



「それならば私が案内しよう、ウチの商会で欲しい物があれば是非プレゼントさせて欲しい」



「ダメだよ、私財を使って自警団を運営してるんでしょ? 私へのプレゼントよりそっちに使ってくれた方が嬉しいな、宿屋のお姉さんも安心して外を歩けるって言ってたし」



「はは、これでもやり手だと言われるくらいには有能なんだよ? 自警団に私財を使ってもアイルにプレゼントするくらいの甲斐性はあるさ。さぁ、一緒に買い物を楽しもうじゃないか」 



 エドガルドはさりげなく私の腰に手を添えてエスコートしながら部屋を出た、後ろで何やらガブリエルがブツブツ言ってるのが聞こえるけど仲間達が相手してくれてる様だ。



「先に私が約束していたのに何なんだあの男は…! ディエゴ以来久々に出来た友人をこんなにアッサリ掻っ攫われるなんて…」



「え? 友人なのか? 知人程度じゃねぇの?」



「な…っ、だってディエゴと同じくらい容赦なくキツい事言うし、さっきだって蹴ってきたんだよ!? これは気の置けない仲になったって事だよね!?」



「それって寧ろ嫌われ「シッ! エリアス、それ以上はダメよ」



「そ、そんな…!」



「大丈夫だろう、アイルは嫌っていたら話す時に表情が無くなるタイプみたいだしな。友人と思ってるかどうかは知らないが嫌ってはないんじゃないか?」



 そんな会話がされてるとは知らずに手持ちが減ってきた香辛料や調味料を買い足すべく、専門店へ向かっていたらガブリエルが突然背後から抱きついてきた。



「アイル!! 私達は友人だよね!?」



「わわっ! 何!? 突然どうしたの?」



「いいから! 私達は友人じゃないのかい!?」



 抱きついたままだからエドガルドから重い空気が漂って来てるんですけど…。



「うう~ん…、今のところ知人以上友人未満かな…。友人って用事が無くても会えば楽しくて、困ってたら無条件に手助けしてあげたくなる人だと思うんだよね。ガブリエルは困ってたら助けてあげようとは思うけど、暇な時会いに行こうと思わないから…うん、まだ友人未満だね」



 私の言葉にエドガルドは勝ち誇った笑みを浮かべているが、面倒な事になりそうだから口には出さないけどエドガルドも同じ程度だからね?



「く…っ! だ、だけどまだって事はこれから友人になっていくって事だよね!?」



「まぁ…、その可能性はあるね」



 ちなみに個人的に仲良し度合いを表す順番は親友、友達、友人、知人、顔見知りだが、『希望エスペランサ』の皆は親友と友達の間くらいかな。

 とは言っても残念ながら仲の良い友達は居たが親友と呼べる仲の子は今まで居た事は無いけど。



 だけどビビアナとホセはいつか親友と呼べる様な気がする。

 エリアスはよく余計な事言うから悪友で、リカルドは保護者の様なお兄ちゃんポジションかな?



 私の言葉に安心したのかやっとガブリエルが離れたので商店街に向かい買い物を楽しんだ。

 エドガルドの店も覗いたが、ドレスを主に扱っていて、所謂夜の蝶御用達の店というところだろう。



 以前リカルドが仕入れた情報でエドガルドは娼館や娼館を兼ねた酒場などを主に経営していて、自分の店で必要な物を安く仕入れる為にドレスや宝飾品を扱う店も持っているらしい。

 中には子供サイズなのにエロ…妙に露出度の高いデザインの物もあってちょっと引いた。



 エドガルドはちゃっかり夕食も一緒に摂ってから名残惜しそうに帰って行った、帰り際に何故かサイズぴったりのセクシーなイブニングドレスセットをプレゼントに置いて。

 こんなのいつ着ろっていうのさ!

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