第58話 新しい服
結局王都行きが決定したある日、私とビビアナは商店街に来ていた。
「あたし達は何度か王都に行ってるからそれなりに持ってるけど、アイルは普段着てる服しか持ってないでしょ? 向こうで観光する時まで冒険者スタイルで歩き回るつもり? 都会でも浮かないちゃんとした服を作ってもらいなさい、資金はたっぷりある事だし?」
「そうだね、折角だしちょっと良い服作ってもらおうかな」
「そうしなさい、あたしは弓をメンテナンスに出してくるからマルタの食堂で合流ね」
「わかった!」
ビビアナを見送り服屋に入ると、よく
ここの店は大蜘蛛の糸を使った布製の凄い伸縮性の服が売りで獣人御用達だったりする。
ホセが普段人型から獣化する時に着ている服がそのまま着ていられるのはその凄い伸縮性のお陰なのだ、なのでホセはピチピチでは無いけど結構身体にフィットした服の時が多い。
そして今回その素材で作って欲しい物がある、そう、この世界に来て数ヶ月経って着実に成長してきているお胸様のブラジャーを!
今まで手に収まるというかむしろスペース余ってる状態だったのが手にフィットするくらいに育ったのだ、これは確実にCにはなってる。(ビビアナはGカップくらいありそうだけど)
「いらっしゃい」
「こんにちは、半月後に王都へ行くから3着服を作って欲しいの。それと…下着も新調したくて…」
「ふぉっふぉっ、それじゃあ婆さんを呼んでこようかね、儂が測っても良いなら儂が測るが…」
ワキワキと手がイヤらしい動きをしている、ここの店主は憎めないキャラではあるが少々発言がセクハラ気味なのだ。
むしろ女の子とキャッキャしたいから服屋やってる感がある。
「そんな事言ってたらまた怒られるよ? ほらほら、早くイメルダさん呼んで来て!」
「やっぱり儂じゃあダメか…」
態とらしくションボリしながら店の奥へ入って行き、すぐにイメルダさんが出て来た。
イメルダさんのエプロンのポケットはいつも膨らんでいて、その中には持ち歩き用筆記用具セットとメジャーが入っている。
「下着と服を作るんだって? まずは採寸だね、ほらほらこっちにおいで」
カーテンで仕切られた採寸場所に移動すると、見事な手際でパンツ1枚の状態にされてしまった。
「はい、ちょっと手を上げて…おや、ちゃんと育ってるじゃないか、良かったねぇ」
「やっぱり!? だよねぇ! だから大蜘蛛の布の下着を作って貰おうかな~と思って!」
「ああ、それはいいね、サイズが変わっても伸縮するからそのまま使えるし、例え痩せて胸がち「それは無いから大丈夫! これからもっと育つ予定しかないから!」
不吉な事は言わないでほしい、言霊の概念がこの世界にあるかわからないけど一応ね。
クスクス笑うイメルダさんに採寸が終わってから王都の最新ファッションが印刷されている紙を見せてもらった。
冬服なせいか妙に野暮ったいんだよねぇ…、冬でモコモコしてるのは仕方ないけどもうちょっとシルエットがシャープになる様にこんな感じに出来たらなぁ。
「あと馬に乗りやすい様にロングコートの後ろに深いスリット入れて中に風が吹き込まない為の内布がお尻のとこに付いてれば馬の体温もあって結構下半身が暖かくなるんじゃないかなぁ、本来のダッフルコートみたいに脚に引っ掛けるベルトが内側にボタンで付いていたら捲れるのも防げるし…」
「そのアイデア貰った! いいねぇ、それでコート作ってあげよう。他に欲しいデザインあるかい?」
あ、また考えが声に出ちゃってた、気を付けないとその内異世界がどうとかって言っちゃってたらどうしよう。
とりあえず今回はイメルダさんが喜んでるからいいかな。
「小物だけどマフラーじゃなくてネックウォーマーが欲しいかな、ハイネックはあるけどそれだと大蜘蛛の糸使ってるやつだからあんまり暖かくは無いもんね」
「マフラーはわかるけどネックウォーマーって何だい?」
そういえば子供の頃はネックウォーマーって見てない気がする、三賢者の知らないアイテムだったか…。
その後、絵を描いてネックウォーマーと欲しい服の説明をしてからマルタの食堂へ向かった。
マルタの食堂は本当の名前では無い、口に出すのは恥ずかしいと皆が教えてくれないレベルのキラキラした名前らしい。
そして看板娘のマルタが居る食堂って事で通称がマルタの食堂になっている。
時々皆で食べに来るので常連と言ってもいいだろう、夏限定の茄子の肉味噌炒めが絶品の店だ。
久々にビビアナと2人だけで行ったら男性客から奢られてしまった、どうやらビビアナのファンらしい。
そして10日後、服と下着を取りに行く日になった、試着をさせてもらったがとても満足のいく出来だ。
特にちょっぴり寄せて上げる仕様のブラジャーが良い感じだったのでそのまま着けて家に帰った。
さりげなく食事の時とかさりげなく胸を張って違いをアピールしたが、誰も…何も気付いてくれなかった、ちくせう。
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