第55話 制御装置を探せ

「馬に乗って出かけるのなんて数十年ぶりかも~! あ、戦闘になっても私の事は気にしなくていいからね、自分の身は自分で守れるから安心して」



 ヘラルドの村からの帰りと同じく2列になって馬を走らせようとしたらガブリエルはリカルドとは反対隣に馬を寄せて来た。

 自作のリュック型マジックバッグを背負って完全に遊びに行く感覚の様だ。



「ねぇねぇホセ、こっちの方向ってヘラルドの村と同じ方だね、最後に犬達を操作してた場所から動いてないのかな?」



「かもな、犬達が使えなくなって呆然としているか、それとも犬達が殺されて意味が無くなった制御装置を捨てて行ったのかもしれねぇな…」



「もし捨てて行ったのなら魔導具の知識が無い奴だろうね、私の様に知識があるなら研究対象として絶対手元に置いておくだろうし」



 軽くスルーしていたらホセとの会話にガブリエルが割り込んできた、なんだろう…ずっと構ってオーラが半端ない。



「ねぇ、ガブリエル?」



「何だい!?」



 話しかけられてパァァと効果音が聞こえそうな笑顔を向けてくる。



「もしかして研究所の人達ってガブリエルとあんまりお話しないの?」



「う…、実はそうなんだ、皆研究に関しては凄く饒舌なのに世間話になった途端に凄く無口になっちゃって…。私がいくら話しかけても頷くだけとか大抵ひと言しか返事してくれないんだよ~! だからディエゴや君達と話すのはとても楽しいんだ」



「そ、そうなんだ…」



 これは…ウザがられてほぼ無視状態なのか、それとも研究オタクのコミュ障が集まってるのか判断がつかないな。

 もしコミュ障だったらこんなにグイグイ来られたら苦手になっちゃうんだろうなぁ、あれ? ウザがられてる場合でも結局好かれてないんじゃ…!?

 可哀想な現実を知ってしまった気がする、ちょっとだけ優しくしてあげてもいいかな。



「む…、森の方を示しているが迂回出来るかもしれないからこのまま街道を進んでみよう。とりあえずもう少ししたら休憩するか」



「了解。森の中に潜伏してるとは考えにくいし、操作したその場で制御装置を捨て去ってない限り森の中にあるとは考えにくいもんね」



 リカルドの提案にエリアスが答えた。

 探索魔導具を確認しながら移動している為ゆっくり移動していた分お昼までほぼずっと移動している。

 ゆっくり進んでいるとはいえお尻が限界突破していたので馬から降りてすぐにこっそり治癒魔法を掛けた。



 森の中と違って風を遮るものがないので3人用テントを出してその中にローテーブルとお弁当を出す。

 昨日作っておいたスープは野菜スープというよりゴロゴロ野菜のポトフにしてある、他の料理も作りたかったので手を抜いたとも言う。



 この後もすぐ移動なのでポトフの他はハンバーガーとポテトのセット、ハンバーガー食べる時にいつも食べてたせいかポテトが欲しくなっちゃうんだよね。

 季節的にレタスとトマトが手に入りにくくなって来たから代わりにキャベツを使っている。



「コレ美味しいよ、ハンバーグをパンに挟むなんてアドルフもびっくりだね!」



「そういえばハンバーグは賢者アドルフが伝えたんだったわね、賢者サブローは知らなかったらしいけど、どうしてアイルは知ってるの?」



 ハンバーガーを頬張りながら言ったガブリエルの言葉にビビアナが首を傾げた。



「ん~、私もそんなに詳しくないんだけど、元々洋食…えーと、ハンバーグ自体がアドルフやソフィアが住んでた国の方の料理だったのよ。このハンバーガーは当然ハンバーグより後に開発された料理で、今では世界中に広まってるはずよ。サブローの時代と違って今の私の母国は飽食ほうしょくの国って言われるくらい色んな国の料理も食べられるの」



「へぇ、サブローのって言うくらい文化が変わったんだね。益々話を聞くのが楽しみだなぁ」



「ガブリエルの口の軽さが改善されるまでは話さないからね! 数分で約束を破る人は信用できないもの」



「話したのはあの通信だけだよぅ、どうせ話す予定だったんでしょ? 早く話が進む様に気を回したつもりだったんだ…」



 言い訳するガブリエルに対してツーンとそっぽ向いてやる、多分許した瞬間ケロリと何事も無かったかの様に振る舞うのは簡単に想像出来たからだ。



「今後何かをお願いする時に対価としてなら話してもいいわ、だけど当然秘密厳守よ?」



「もちろん! そういう事ならいつでも頼ってよ」



 口の端をソースで汚したままガブリエルは自分の胸を拳でドンと叩いた。

 昼休憩も終わり再び馬を走らせるが、見覚えのある道をどんどん進んで行く。



「リカルド、このまま進んだらヘラルドの村に着いちゃわない?」



「ああ…、だがこの魔導具が示している通り進んでいるだけだからな」



「だけどあんな長閑な村にあんな凶悪な犬操る様な奴居るかぁ?」



「ふふふ、人族はどんな善良な者でも切っ掛けひとつで変わってしまうものさ。200年でそんな光景を何度も見て来たよ、それこそたったひと言で…ね」



「…ふっ、そういやそうだな、例えば…貧乳と「何で今その言葉を言ったのよ!? バカバカバカ!!」



「イテッ、痛たたた、やめろって、ははっ、こういう事だろ?」



 私は肘を曲げてウエストを左右に捻りホセの脇腹に肘打ちを何度も叩き込んだ、しかし大してダメージは無いらしく笑いながらガブリエルに問いかける。

 しかしヘタに答えて私の機嫌を損ねるのを警戒したのか何も言わずに曖昧な微笑みを浮かべただけだった。

 そうこうしている内にとうとう私達はヘラルドの村まで戻って来たけど、まさか…ねぇ?

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