第25話 情報収集
「じゃあ食事に行こうか」
「あの酒場で食おうぜ、ほら、前に行った2階が連れ込み宿になっイテッ」
ホセがビビアナに頭を叩かれた、リカルドとエリアスもチラッと私を見てから半目になってホセを見ている。
「あの、私気にしないよ? むしろそういう所の酌婦兼娼婦だと色んな情報知ってるから時間を買い取って情報貰うのって有りだと思うの。娼婦も楽できるから色々話してくれるんじゃない? 気が合えばそのまま…ねぇ?」
「情報か…、大きな市があると言っていたし、そういう時はゴタゴタが起きやすいからこの辺りの力関係を把握しておいた方がいいかもしれないな」
リカルドが顎に手を当てて真面目に検討し始めた。
「じゃあ酌婦に声をかけられた人が情報収集って事でいいんじゃないかな? 僕ら3人の内誰かは声掛けられるんじゃない? 複数だったら情報を擦り合わせてより正確に把握できるしね」
エリアスがにっこり微笑んでそう言った、3人のタイプが違うから1人は好みにヒットするだろうという事かな?
それとも皆美形だから声を掛けられるのは当たり前とか…そっちの方が正解かもしれない。
「じゃあアイルとあたしはゆっくりできるわね、先に宿に戻ってきてもいいし」
「はい、決まり決まり、早く行こうぜ席が埋まっちまう。あそこの料理美味かったからな」
ホセの言っていた酒場は結構な広さで、冒険者らしき人達や職人ぽい人達が多かった。
2階の連れ込み宿のせいか客の中に子供は居らず、そのせいか童顔な私は凄くジロジロ見られてしまったけど。
そしてこの世界にしては露出多めのお姉さん達がお酒を注いで回っていて、時々お客と2人で2階に上がって行く姿を見かける。
この身体はともかく中身は生娘でも何でもないので何とも思わないけど、周りの客やリカルド達は私を気にしてくれてる様だ。
客が酌婦と2階に向かう度に階段に視線が行かない様に話しかけてくる、でも視界には入っているから見えちゃってるけどね。
料理はホセがまた行きたいと言うだけあって凄く美味しかった、山には
串焼きの火加減と塩加減が絶妙でいつもより食べちゃう。
「ホセが言うだけあってこの店美味しいね! お腹いっぱいでこれ以上食べられないのが悔しいくらい」
あきらかに普段よりぽっこりしたお腹を摩りながらふぅ、と息を吐いた。
「あらぁ、料理を気に入ってくれて嬉しいわ。皆さん食事は済んだのかしら? 素敵なオニイさん、2階でもう1杯ワタシと飲まない?」
妖艶なオネエさんはリカルドの顎をスルリと撫でた、こんな色気は一生かかっても私には出せないだろう。
この人がこの店で1番の美人さんだと私は思う、リカルドはオネエさんと視線を絡ませるとニコリと微笑んだ。
「せっかくのお誘いだから行ってくるよ」
「先に帰ってるからゆっくりしてきていいぜ~」
ホセがニヤニヤしながらそう言うと余裕気な笑顔を見せてオネエさんと階段に向かう、すると周りの客からリカルドにヤジと激励の言葉が掛けられる。
それに笑顔で手を振りながら応えるという大人な振る舞いで2階に消えて行った。
私達はそれを見届けて宿に戻ると、馬車移動の時と同じ様に洗浄魔法で綺麗にして寝支度をした。
こういう宿屋はお風呂が無いらしい、桶でお湯を買って拭くだけで、お風呂に入りたければ銭湯に行くかもっと高級宿に泊まらなきゃいけないらしい。
尤も銭湯は濾過装置なんて付いてないから朝に行かないとお湯が汚れてる、なんて事があるというので行くのをやめた。
パジャマに着替えるのはエリアス達と背中を向け合ってサッと着替えた、見えない様に着替えるのは得意だけどね。
「あれ? ホセは着替えないの?」
「寝る時獣化して欲しいんだろ? だったら寝る直前に全部脱ぐから今はいい。それよりアイル、お前気付いてるだろ?」
「え? アイル何かあったの?」
ホセの言葉に反応してエリアスが聞いてきた、ビビアナも首を傾げて私の言葉を待っている。
「て事はホセも気付いてるって事よね?」
「まぁな、匂いが違うしよ。あっちもお前が気付いた事に気付いてたよな?」
「あ、やっぱり? そんな感じはしたんだよね」
「もうっ! 一体何の話なの!?」
私とホセのやりとりにビビアナが痺れを切らして聞いてきた。
「さっきのリカルドと2階に行ったオネエさん…、男の人…だよね?」
「「えぇっ!?」」
ビビアナとエリアスが驚きの声を上げ、ホセはそんな2人の反応にお腹を抱えて笑っている。
無理もない、私は今までにオネエさん達の居る店に飲みに行った事が何度もあるので見分けがついただけだ。
そうじゃなきゃあんな美人が男だなんて気付かないと思う、きっと激励してた客達は男だと知っているんだろうな。
道理でリカルドの時だけ囃し立てていた訳だ、だって他の人は全員女性だったし。
「まぁ…、暗ければ男ってバレないテクニックがあるらしいけど…」
「う…っ、そんな事知りたくなかった…。むしろ何でアイルがそんな事知ってるわけ!?」
「それは秘密。女の過去を聞くなんて野暮よ?」
少し意地悪くニヤリと笑って言ってやった。
それにしても妙にエリアスが動揺している、もしかして過去に女性かどうか怪しい娼婦でもいたんだろうか。
フラフラとベッドに潜り込んで出て来なくなったしまった。
「結果は明日の朝にでもリカルドに聞けばわかるわ、もう寝ちゃいましょうか」
「うん」
ビビアナが部屋の灯りを小さくした、このくらいならリカルドが帰って来ても自分のベッドの場所は見えるだろう。
私もベッドに上がるといつの間にか獣化したホセも上がって来た、久々のモフモフタイムに癒され、移動の疲れもあっていつの間にか眠ってしまった。
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