自由に生きようと転生したら、史上4人目の賢者様でした!?〜女神様、今の時代に魔法はチートだったようです〜 web版

酒本アズサ@自由賢者2巻発売中

第1話 プロローグ + 森川愛留、最後の日

書籍チラ見せ!?

本来無かった書籍版プロローグをweb版に追加しました!!

どうぞお楽しみ下さい ⸜(*ˊᗜˋ*)⸝


◇◇◇


「全部巣に戻ったか?」



「ああ、とりあえず今は巣の中以外から羽音はしてねぇ」



 私が所属する冒険者パーティ『希望エスペランサ』の剣士であり、リーダーでもあるリカルドが、パーティメンバーで狼獣人のホセに確認した。獣人のホセは人族の私達よりうんと耳が良い上に鼻も利く。



 治癒師からの依頼で岩蜂ロックビーという魔物が持つ麻痺毒を森へ採取しに来たが、気付かず岩蜂ロックビーの警戒範囲に足を踏み入れてしまい、先程までおびただしい数の岩蜂ロックビーが巣の周辺を飛び回っていた。

 今は茂みに隠れて岩蜂ロックビーが落ち着くまで待機している。



「はぁ……危なかったぁ。通常は解毒ポーション準備して、誰かが刺される前提で革袋に巣を詰め込むらしいからね。報酬が良いのは解毒ポーション代の分上乗せされてるって事かな、僕たちには関係ないけど、ね?」



 槍使いのエリアスが肩をすくめた後、にっこり笑って私を見た。



「そうね、あたし達にはアイルがいるもの。頼んだわよ?」



 弓士のビビアナが私の肩に手を置いて艶やかにほほ笑んだ、ビビアナに頼まれたら張り切るしかないよね!



「まかせて! 『凍結フローズン』! か~ら~の~『風斬ウインドカッター』!」



 魔法を放って岩蜂ロックビーが飛び出て来ないように巣を氷漬けにし、巣がくっついている木の枝ごと風魔法で切り落とした。ちょっぴり魔力操作を誤って威力が大きくなっちゃったけど……。



 ドサッ


 ミシミシミシミシ……ズゥゥゥン



「アイル! お前枝だけでいいのに何で幹ごとぶった斬ってんだよ! 魔法でやった事バレたらどうすんだ!」



 七メートルくらいの木が三メートルくらいになってしまい、ホセが怒った。



「だ、大丈夫だよ、きっとリカルドなら剣でこの木くらい斬れるから誤魔化せるって!」



 私は救いを求めるようにリカルドを見た。リカルドは氷漬けになって転がっている岩蜂ロックビーの巣と、地面に落ちて来た直径五十センチ程の木の幹を交互に見て首を振る。



「無理だな。正面で斜めに斬るならともかく、この高さで水平に斬るには剣聖と呼ばれるくらいの実力が無いと」



「あはは、大変だねぇ。どうやって誤魔化す?」



 エリアスが他人事のように笑った。私が困ってるの絶対楽しんでるよね!?



「いっその事、全部地面に埋めちゃえば?」



 笑ってるだけの誰かさんと違い、名案を出してくれたのはビビアナだ。



「さすがビビアナ! 『風斬ウインドカッター』『地操作アースオペレーション』」



 ズバンッ


 ゴゴゴゴゴゴゴ



 地面スレスレで木を切断し、土を操る魔法で人工的な地割れを作りだすと周辺の地面が揺れて木に居た鳥や隠れていた小型の魔物が一斉に逃げ出した。ちょ~っとばかり思ったより周りに影響が出ている気もするが、とりあえず倒れている幹や切り株を地中に埋め込んだ。



「だ・か・ら! お前は魔法を隠す気あるのか!?」



 ホセが私の頭を掴んで指先に力を入れる、最近おなじみとなってきたアイアンクローが炸裂した。



「痛い痛い! 隠す気あるから証拠隠滅したんだもん!」



「アイル、見て」



 反論したら、エリアスがイイ笑顔で地面を指さした。

 そこには木を埋め込んだ部分だけ雑草が無くなり、明らかに何かあるとわかる跡。



「えへへ……、三日もすれば雑草が生えてくるよ。大丈夫、うん、大丈夫」



「はぁ、きっと今日の冒険者ギルドは謎の地響きの話題でもちきりだろうな……。わかってるのか? 人族で魔法が使えるなんてバレたら王族やら貴族やら豪商やらがこぞって迎えに来てもおかしくないんだぞ」



「う」



 リカルドに叱られ、反論出来ず思わず声が漏れる。



「だよねぇ、きっと取り込む為に王族と結婚させられちゃうんじゃない? だけど平民だから側室にしかなれないだろうなぁ、一生軟禁生活……なんて事になったりして」



「やだ、やだよ」



 エリアスの恐ろしい予想にブルブルと首を振った。



「なんだ、てっきり王宮から迎えに来て欲しいから、あんな目立つ魔法使ったのかと思ったぜ」



 ホセがニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべている。言い返したいが、実際やらかした後なので下唇を噛み締めてこらえた。



「あんたたち、いい加減にしなさい! アイルも反省してるってわかってるでしょう!?」



 ビビアナが庇うように抱き締め、私の顔はマシュマロの如く柔らかな胸に埋もれた。



「ありがとうビビアナ、私も落ち着いて行動しなきゃダメだってわかってるんだけどね……。つい焦って空回りしちゃうから反省しないと」



 ついビビアナの優しさに甘えてしまいそうになるが、二人の言う事も間違ってないのだ(ホセのはただの意地悪なので数に入れない)。



「ほらぁ、落ち込んじゃったじゃない! 特にエリアスとホセはいつも調子に乗りすぎなのよ、大体ねぇ……」



 私がマシュマロ……ではなくビビアナの胸に埋もれたまま、エリアスとホセが謝るまでビビアナのお説教は続く。

 段々とホセの耳がヘタり、尻尾が力なく垂れ下がるのを横目に見ながらも、いまだにここに居るのが夢なんじゃないかと思ってしまう。



しかし確かに失ったモノがあり、それが夢ではなく現実だと訴えて来るのだ。

 失う前のあの頃は異世界に来るなんて思ってなかったなぁ……。

 私は頬に柔らかな弾力を感じながらに来た日の事を思い出した。





【1話】


「やっぱり愛留あいるが好きなんだ、ヨリを戻してくれないか?」



 家の近くの川沿いの道路で待ち伏せしていたこの男は、数ヶ月前に私の幼馴染の誘惑に負けて乗り換えた浮気男だ。

 今の私は先日愛犬が死んだばかりで浮気男の事なんて考える余裕は無かった。



「ヨリを戻すって言うと思ってるの? 付き合う前に散々警告したって言うのにアッサリ浮気したあなたと? ふざけるのもいい加減にして」



 関わりたく無くて元彼に背を向けて歩き出した瞬間、耳慣れた、そして大嫌いな幼馴染の声と同時に身体に衝撃を受けた。



「何でアンタばっかり! 皆そう! 結局アンタの方が良いって言うのよ! いっそ死んでよ!」



 嘘でしょ!? ここの川はお世辞にも綺麗とは言えないのに…!

 視界の端に元彼が手を伸ばすのが見えたが、突き飛ばされた私の身体は虚しくガードレールを越えて5m程下の川へと吸い込まれて行った。








 私を突き飛ばした幼馴染は加奈子という生まれた時からお隣さんで同級生だった。

 小さい頃は仲が良かったけれど、保育園で加奈子が好きだったまーくんが「あいるちゃんはお顔だけじゃなくて名前もかわいいね」と言った事により変わってしまう。



 それ以降というもの、私が花壇にお水をあげれば「加奈子がお水あげておいたよ」と手柄を横取りし、ある事ない事を悪意でコーティングして周りに吹聴した。

 小学1年の時に弟が産まれて、弟の物心がつき始めた頃から私を押し除けベタベタに甘やかしては私の悪口を吹き込み続け、弟は悪い事をしたら叱る私の事を嫌う様になってしまった。



 成長するにつれて童顔の私と違い加奈子は母親によく似た美人に成長し、1人っ子の強みでブランド物を纏っては何かとマウントをとってきた。

 幸い成績は私の方が優秀だった為、高校のランクを上げて別の学校に行こうとしたが、私の志望校を知ると家庭教師をつけて猛勉強し、繰り上がり合格で入学してきのだ。



 入学したと同時にそれまで唯一の味方だった祖母が亡くなり、あまりに元気が無くなった私を見かねた母が犬を飼おうと言い出して私と弟が世話係に任命された。

 動物嫌いの加奈子は紀州犬のそらを飼い始めてから家に近寄らなくなり、空は新たな私の心の拠り所となった。



 そんな私が気に入らなかったのだろう、高校で告白されて初めて出来た彼氏に加奈子が手を出したのだ。

 初めての彼氏で2週間でキスもしてなかったゆっくりな関係だったせいなのか、加奈子が既に身体の関係を持ったという事を匂わせてきた。



 彼氏に問いただすと「別れてほしい」のひと言だけで私達の関係は終わった。

 その後暫くは周りから捨てられた女だと嘲笑され、悔しくて悲しくて体重が3キロ落ちた。



 それから学年が変わる頃には加奈子が破局したと噂で聞いたがどうでも良かった、何故なら新しく彼氏が出来たから。

 同じ轍は踏まない為に加奈子の事はタイプではないかと聞いてから付き合い始めた。



 が、またもや加奈子は身体を使って彼氏を奪っていった。

 加奈子の事を苦手だと言っていた人と付き合った時も結局は同じだった、強引に迫られたと言っていたがそんなのは関係無い。



 幸い大学は迷っているフリをしてギリギリまで家族にも秘密にし、アパートを借りて県外の大学にした為、4年間は加奈子に殆ど関わり無く過ごせた。

 お陰で友人も出来たし恋人も出来て真っ当なお付き合いというものも経験した。



 もういい加減私に対する執着も無くなっただろうと大学を卒業して地元に就職したが、大学からの恋人にプロポーズされたと母が加奈子の母親に報告してから再び歯車が狂い出す。



 加奈子の猫被りを未だ見抜けない弟を利用し、お祝いがしたいからと私の恋人の連絡先を入手したのだ。

 そして驚かせたいからお祝いの相談に乗って欲しいと恋人を呼び出し、酔わせてホテルに連れ込んだという。



 恋人には泣いて謝られたがただの浮気ではなく加奈子が相手だという事が許せなかった。

 もしも許して結婚したら加奈子は自分と関係を持った男と結婚したと周りに吹聴するだろう。



 その後も結婚話が出たりしたが、結局加奈子が根も葉もない事を吹き込んだり手を出したりして27歳になるまで独身のままだ。

 いっそ加奈子が先に結婚してしまえば手を出す事も無いだろうけど、私の恋人を盗るのが忙しいのか加奈子も独身でいる。



 そして冒頭の出来事が起きた、水にぶつかる衝撃に備えて身を硬くしたが、何故かポフンとフカフカの安全マットかエアマットに落ちた様な感触がした。



「やだぁ、なんていいタイミングなのォ!? あ、寧ろタイミングが悪かったと言うべきかしら?」



 声のした方を見ると真っ白な空間に金髪緑眼のギリシャ神話に出て来そうな格好の美女がそこに居た。



◇◇◇


重い話はここまでです、8話くらいまで読んで頂けたらこの話のテイストがわかるかと(*´∇`*)

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