第19話 こっそり撮った、うにちゃんと明智の写真を待受に…和む。


数日後、アパートの小さな社に二匹の狛犬の石像が鎮座するようになった。


社が小さいので台座は平らな石を敷き、磨き上げられた狛犬を設置。狛犬は二つとも事故で一部割れており、修復し磨いたところ、本来の大きさより小さくなったみたいや。社がますます可愛くてええな。


にしきの回復には一週間ほどかかり、今は元気に駆け回れるようになっとる。地力の吸収も徐々にできるようになってるが、まだ菊市の力が必要そうや。とりあえず、二人とも菊市と谷村が面倒をみている。谷村が案外世話に慣れており、菊市にアドバイスしとる。オレも世話をしとるぞ。

この間、人型もとれるようになったが、基本は犬の姿、ながれは5才くらいの黒髪の子供姿で、にしきは3才くらい白っぽい髪の子供だった。もう安心だろう。


ながれとにしきにはお供え物のほうが地力の吸収に効率がいいようで、ご飯は社に少し置いてから部屋に持ち帰り食べるという形をとっとる。

おにぎりが好評や。さすがに外でドッグフードは完全に犬じゃないのであかんやろと話し合いで決まった。ながれはどら焼きも好きやな。


ドタドタと菊市の部屋から騒がしい声が聞こえとる。

「こら、それはにしきの分!にしきの!」

「わぅ!わぅ!」

「ハウス!!」

…おいおい、狛犬にハウスはあかんやろ。


おにぎりでも差し入れにいったろ。きっとにしきが食い損ねているはずや。

「うにゃ、にゃん?」

うにちゃんをもふもふしていたが、膝から降ろし、炊飯器の蓋をあけた。


「に、西崎、助かるよ…ぜぇ…ぜぇ」

「わう!わぅ!」

ながれが飛び込んでくる、そのまま外へ連行するためおにぎりの皿を菊市に渡す。

社には一回置いて、柏手を打ってきたものや。

「ながれ、お前のは一個や!」

後ろからにしきが、とてとてとやってきたのを軽く撫でる。ふわふわやな。

おにぎりを高く掲げた皿から一個手に取りながれを外へ出す。

「お座りせんとオレが食べるで~」

「…わふっ!」

「抗議しても一緒やで……待てやで!!」

「ふっ!」

「まだ…まだや………よし!!」

手からおにぎりを口で奪い取るとがつがつと食べ始めた。おれは…何を相手にしとるんやろうな。うにちゃんには及ばないがこいつも可愛い。すぐに食べ終えたながれの耳の後ろを掻く。気持ちいいか?


「西崎さ~ん、オレにもおにぎり頂戴~」

後ろから明智の声がする、やり取りをみていたんやろう。

「明智…お帰りさん。米もうないねん」

「え~!」

「お前、米かって来い」

「まぁ…いいよ~このまま買いに行く」

「ついでに豚肉も買ってこい」

「え!生姜焼き!?」

耳としっぽが見えた…気がする。

「あ…そうや…」

「いってきま~す♪」

こいつも犬みたいやな…


そろそろ、またリフォームの時期が来たなと思う。

二階もぶち抜くとこも決まったし、昔馴染みの大工さんに明日にでも見積もりに行こう。

田嶋が足りないなら資金を出すようだから、妥協しなくていいだろう。田嶋の部屋からやな。

内装を少しいじるのも楽しみになってきた、にしきたちにも住みよい家にするぞ。

部屋で一生懸命ご飯をはむついているだろうにしきを思い、オレはながれを連れて自室にもどることにした。


「にし…にしざ…ふぁう」

「お?ながれどうした??」


「西崎!…どら焼き!…食べたい!」

「お!!今しゃべったか!?」

「うん!おれ!」

ながれが飛びついてきた。わしゃわしゃと首筋を撫でる。


「よかったな…!!話せるようになったか!」

「おれ!また、話せるようになってる!うれしい!」

ながれは千切れんばかりにしっぽを振り、びょんびょんとジャンプしている。

「うれしい!うれしい!」

ながれから嬉しいタックルを何度も受ける。た、倒れる…!!

「わかった、わかった!」

思考はまだまだ犬に引きずられているようや。

「ながれ、おいで。後で菊市に会いに行こう、びっくりするで!」

「うん!びっくりする!!」

うにちゃんはながれに慣らしたから、怖がらない。一緒に遊んどいてくれ。

「にゃ~ん!」


今日は明智の好きな生姜焼きだ。明智にどら焼きも買って来るように電話しよう。

心地よい風が吹いとる。今日も一柳荘は賑やかや。




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