第16話 田嶋は酒を色々飲むけど、たまに付き合うオレはめっぽう弱い
「わ!犬だ!!」
川町と田嶋が部屋から騒ぎを聞きつけて出てきた。
犬は構わず社のお供え物を口で咥え、その場にポトリと落とす。
「お供えを欲しがるんですけど、あげて大丈夫ですか?」
「大丈夫、お供え物の力が欲しんだろう。あげてもいいよ」
小松は落としたどら焼きの包装を破くと食べさせた。犬はすぐにかぶりつく。
「もう一つ食べる?」
小松が聞くとしっぽを振った。
しばらく食べているのを見ていると、犬がびっくりして外を眺める。
どうしたのかと思っていると、パカパカパカと馬のような足音が響いた。
「「「「……」」」」
「……」
明智が白馬と帰ってきた
その場にいた面々が騒然とする。
「西崎さーん、ただいま」
「…はぁあ…!?何がただいまやねん!おま…それ!」
「なんか、連れていけって言われたから~」
西崎は頭を抱えた。
明智…何を連れて来とんねん…!!うま…!!お馬さん!?正直笑いたい!
「お馬さんだ~!!きれーい!」
川町ははしゃいでいるがそれどころじゃない
馬はカツカツと敷地にはいると、犬はその場に伏せ頭を下げた。馬は犬に向かうとぶるると犬の匂いを嗅いだ。
「突然の来訪であったが、うちのが世話をかけたようだ。」
菊市に向かってしゃべりだす。おおお!しゃべったな!
みんなポカーンとしている中、菊市は慌てて返事をした。
「は…はい。ここにはどのような御用でしょうか」
菊市が自然と緊張している。白馬さんは、格が上のようや。
「うむ。そこな犬、我の狛犬でな」
「ということは、神馬さんか、神様やな…」
思わずつぶやく。近くに明智がよってきた。
「して、にしきは助かるか?」
「にしき?ああ…ええ、他の気は受け付けないけど、私の気は吸収できるようです。ただ、時間がかかると思いますが…」
「良い。僥倖だ。そのまま頼んでよいか」
「ええ、こちらもそうしようと思っています」
「うむ。」
神様は犬に身を寄せると、犬がしゅんとしてしまった。
「くぅ~ん…」
「あ、あの!な、何があったか聞いてもいいですか…」
川町が声をかける
「うむ、…良いぞ。して…酒はないか?少々喉が渇いた」
「田嶋、日本酒持ってるか?」
「ああ、いいぞ」
田嶋は部屋に戻ると日本酒を持ってきた。西崎も深皿を部屋に取りに行く。
白い深皿に酒を注ぎ、菊市が皿を向けると神様は酒をごくごくと飲んだ。
「ふう、久しぶりに外に出てな、たまには良いのぅ」
「して、そこな地霊は我と縁があるようだ」
「え?」
「水を飲んだであろう」
「!?ええええええ!?馬と犬があああ!」
帰ってきた谷村が叫ぶ。一般人の反応はこれだろう。
「…え?…菊市さん…なにこれ…。」
「谷村、うるさいよ!静かに!」
「今からそれを聞くとこなんや、すまんが、黙れ」
「ひゃい…」
「良いか?続けるぞ?」
「はい、すみません」
「水はまだ我の領域のものであったころだ」
「菊市がその都度弱ったときに、貰ってきてた神社の水や」
「そうか…」
「ああ、それで縁ができておる」
田嶋も納得した。
「最近我の社が土地を移ることになっての。」
「土地開発の件ですね」
「我の珠は新しい土地に無事に移ることができての、そこの社にも馴染んできておる。しかしな」
「はい」
「氏子が新しい狛犬を奉納しての…若いが、これから鍛えていくところだ。」
「え…そしたら、この子たちは!!」
川町が声をあげる。
「我も、珠の移りで動けなくてな。その時に元の社に、…悪い気をまとった乗り物が突っ込んでの…狛犬が割れたんじゃ」
「え!それじゃあ…」
小松はしゅんとしている犬を見つめた。
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