第15話 あいつが部屋を散らかす、一旦部屋に帰れや。片付けんと一緒に寝れんぞ


小松は近くのカフェで時間を潰し、平野と待ち合わせ、帰ってきていた。

アパートの前で視線を感じる。前のと一緒のようだ。平野の腕に抱きつく。

「小松?どうした?」

平野も警戒し小松を見つめる。

「平野くん…この前みたいに見られてる感じがする…」

辺りを見回すがそれらしい人影は見当たらなかった。

「このまま、離れずに家に入ろう。」

平野は川町の肩を撫でると、そのまま家に向かった。


アパートの入り口が見えたところで中型の黒い犬がいるのに気付く。

「…いぬだ」

「犬だね…」

「野良かな…」

小松は犬を見つめると少し考える

「どうした?小松?」

「……この視線って…この犬だったのかな…似てる」

「追い払うか?」

小松を心配し平野が言う。

「……大丈夫…咬まないなら…」


家に入ろうとすると、犬は自然と道を譲った。

「何もしないみたい…」

警戒しながら2人はそのまま庭に入る。犬はこちらを眺めてその場で寝そべった。

「変な犬だな?」

「そうだね?何なんだろう?」


アパートの前は車も通る道だ。そのまま寝そべると通行の邪魔になるかもしれないと平野が言う。小松も同意し、とりあえず庭に入れてみよと試みることにした。

「おいでおいで」

犬は小松の声掛けにむくりと起き上がりしっぽを揺らしながら、庭に入ってきた。

庭に入ってくると社のそばに行きふんふんと匂いを嗅いでいる。しばらくすると社のそばに寝そべった。庭に入れるのは成功したようだ。


勝手に犬が敷地に入ってることに西崎が驚くかもしれない。平野が報告にいくことにする。

小松はその場で犬を見張ることにした。

平野が居なくなると、犬は社にあるお供えのお菓子の匂いを嗅ぎだした。

「…?お腹すいてる?」

「…」

犬はしっぽをゆらゆら揺らす

「食べてもいいけど…身体に悪いものじゃないかな…」


「西崎さーん」

コンコンとノック音が響く。声で平野とわかる。すぐに扉を開けた。

「おお、平野。今日は忙しいな~。どうしたんや」

「アパートの前に犬がいたんで、道だと危ないから庭にいれたんですけど…」

「…ああ?犬やて!」

「あ!!すいません!ダメでしたか?」

犬を入れたことがダメだったと勘違いした平野が謝る。

「ちゃうねん、どんな犬や?」

「見たほうが早いですけど…黒い中型のです」

「そうか…」

「あと…、小松が感じてた視線の主と似ているようで」

「怪しいな…そいつ妖怪かもしれん」

部屋から出て、平野と連れ立って菊市の部屋に行く。

「は!?妖怪?犬ですよ?」

「まぁ、菊市に判断してもらおう」


訳が分からない平野を連れて、菊市の部屋をノックする。すぐに菊市が出てきた。

「まだ、回復してないよ」

「ちゃう、もう一匹来たみたいや」

「黒い犬なんですが、今庭に」

「仲間かもね」

「そうやろか?正体も分からんし見てくれ」

「そうだね」


菊市と庭に移動する。

菊市に気付くと犬は立ち上がり、菊市の匂いを嗅いで回った。

菊市が触れても嫌がるそぶりはない。

「白い仔犬の仲間みたいだね」

「てことは妖怪の類か。」

「菊市さん、妖怪って…?」

小松が若干警戒して犬を眺める。

「今日、消滅しそうな仔犬の妖怪が来てね、回復を試みてるところなんだ」

「消滅って…死にそうってことっすか?」

「ああ。私の気しか受け付けないみたいで、消滅は免れたけど、衰弱してる。一度に大量の気を受け取れなくてね。時間がかかりそうなだよ」

「消滅は免れたか…助かるんやな」

「そんなことがあったんですね」


犬のほうを見ると耳がこっちを向いていた。話をきいてるんやろう。

「おまえ、俺らの言葉も分かっとるんやな?」

犬はしっぽを軽く振った。

「わかっとるんやな」

話がわかってるなら庭に置いといてもええやろ。



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