第11話 子猫さんはツンデレ?威嚇されたけどご飯は食べた、最初はこんなもんだろう
「…私は…この家の主なんだ…。」
「ぬし…って?神様なの?」
「川町くん…神様ってのよりは精霊のほうが近い…かな?」
「家の主ってのも違う気がするで、土地の地霊ってのが近いと思う。うちの社があるやろ?」
「はい…、たまにお供えしてます」
「あ、ありがとうね、小松くん」
「昔な、じいちゃんの頃に大樹があったんやけど、母ちゃんが生まれてから家を広くしよって、大樹をきったんや。もちろん大樹はうちのいろんなところに使われたで。残った欠片は人型に加工して神棚にお祀りしたんや」
「その話は知らなかったなぁ」
明智が、へーと相槌をうった。
「もともと大切に扱われていたんだけど、西崎のお母さんが学生の頃、『守り神になってくれますように』って私のために社を建ててくれと希望してね、おじいさんが建ててくれたんだ。」
小さな社は父ちゃんの手作りだ。大工だった父親がじいちゃんに頼まれて、住み込みで建築してくれて。そのうち母ちゃんと恋仲になった。お父さんとお母さんと、結婚して後から西崎が加わって祀られた。
「オレが小学生の時に、とうとう人型になったんや。こいつを母ちゃんが見つけて、兄弟になったわけ。」
「とりあえず、菊市は母の旧姓をもらったんだ」
「なんかぶっ飛んだ話ですね」
小松が平野に焦る。
「平野くん、ちょっと!」
「いや、オレの母ちゃんがぶっ飛んでたんや」
「まぁ、理解には苦しむよねぇ。ごめんね平野」
「いや…大丈夫ですよ、実際目の前にいるし。」
「うん!あの時消えて見えなかったんだ…ぼく…。菊市さん、体調は良くなったの?」
「そうですよ、体調は良くなったんですか?僕が話を聞いてもらったりして、疲れたんじゃ…」
「ああ、それは違うよ、小松くんは自分で立ち直ったんだから。安心して?」
「じゃあ、原因は…」
「土地の開発工事やな…」
「「ああ」」
「ちょっとやけど山削ったり、木ぃ倒したりしてるからなぁ、ちょっととは言え、今回は要の神社が移転しとった。地脈の流れが変わったんやな。大きい所は平気でも小さい地霊にとっちゃ大事やってん」
「私の力だけじゃ人型も支えられなくなっちゃってね…。」
「あ!社のお花が枯れてたのって?」
「ごめんね、苦しくなった時につい…」
「仕方ないですよ!ね、川町くん」
小松の言葉に川町が頷く。
「今後、オレたちは何か力になれないんですか?」
平野が心配そうに聞く。
「そこで、谷村の登場や!」
「へ?おれ!?」
「お前、菊市と抜群に波長が合うねん、せやから、菊市が悪くなったら、谷村からエネルギーを分けて貰えばええんや。今回もこの通り、二人ともぴんぴんしとるやろ?」
「…要するに」
「菊市さんには谷村が必要ってことだよ」
小松に平野が説明する。
「よかったぁ!!」
川町が喜びの声を上げる。
「これから頼むぞ、谷村」
田嶋が谷村の肩をぽんと叩く。
谷村は菊市を見つめ、感慨深げに頷いた。
「おれ…おれ…菊市さんが…人型でここに居るってだけで、すげぇ奇跡だと思う。大切にする…」
「…!谷村…うざい…」
菊市は顔を真っ赤にして目線をそらした。隠せていません、照れてるの。
「僕…お社にお供えするし、お庭も手伝います!」
「ぼくもー!!お花元気にするからね!!」
「みんな…ありがとう…。」
菊市は涙ぐみながら、谷村の後ろに隠れた。
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