第10話 おもいきって子猫さんの餌付けにチャレンジしてみる。こいこい。
「菊市!!しっかりせぇ!」
「菊市さん!!」
菊市が薄っすらと目を開けた。
「………西崎…ごめん…。」
返事を聞いてオレは安心した。
「今回は酷かったな…花は消えるし、川町も倒れるし…」
菊市はぼーっとしたまま天井を眺めている。
「……そう…。…もう限界なのかな…」
「先生!!」
谷村が身を乗り出して菊市を眺める
「まぁ、危なかったけど、悲観的になんな。…てか、オレもそろそろ限界や、部屋出るで」
「…ああ…」
「谷村、菊市をこう…抱きしめてくれ。」
「は!ええ!?はいっ!」
気を引き締めた谷村が菊市を抱え、抱きしめると西崎に向き直った。
「こっ!これで!」
「そうしといてくれ。訳は菊市から聞け。…菊市、谷村お前のことずっと見えとったぞ」
「そう……」
ぼんやり返事をした菊市を置いて、部屋を後にする。明智をずるずると引きずって部屋に戻った。
菊市を抱きしめたまま、谷村は何が起こったか整理しようとしていたが、結局菊市から話を聞こうと待っているようだ。ぼんやりしたまま菊市が話し出す。
「えー…と…、このまま、キス…して…いいかな?」
「は」
「君の…精気…うん?エネルギー??……が欲しいんだ」
「…うん。いいよ。おれが先生好きなの知ってるっしょ?」
穏やかにまっすぐ見つめる谷村に菊市は少し目を逸らす。
「…知ってる。…から、巻き込みたくなかったのにな…。」
諦めと後悔がいりまじり、菊市は複雑に瞳を潤ませる。
「巻き込んでよ…消えて欲しくない」
谷村のほうから菊市にキスをする。菊市から甘い吐息が漏れる。
「んっ…ふ…うん。もっと…欲しい…ん…。」
キスを何度か繰り返す。
「ふう…。」
「はー…力抜けた感じ…。」
「大丈夫?」
「うん、誘ってくる先生、キレイでご馳走様です。テンション上がる。」
「バカ…。」
ゆっくりと菊市を横たえ、谷村がゆっくり覆いかぶさる。菊市の頬を優しく触る。
「ねぇ、顔色よくなってきたし…この先もアリデスカ?」
谷村は菊市に反応し始めている自身に照れながら問う。
菊市は表情を曇らせた。
「この先って…おまえ、下手したら明智くんみたいに倒れるかもしれないんだぞ」
「いいって、先生。逆に元気になるよ。それに…さっきのキスでその気になっちゃって、止まれなそう」
チュッっと菊市にキスを落とす。頬が染まっていく菊市。
「おまえ、倒れても看病なんて…しないんだからな…、ぐすっ…。」
ホトホトと菊市の瞳から涙があふれる。好きだから犠牲にしたくなかったのに。
「おれ、大丈夫だよ?泣かないで、いつもみたいに強気で怒ってよ?…でも泣いてる先生もキレイだな…。」
「ばあああーか」
「…やべぇ、止まらなくなりそぅ…。」
菊市と谷村はそのまま濃厚な接触に突入した。
西崎の部屋に菊市と谷村、そして、いまだ眠ったままの明智が横たわっていた。明智の寝息は健やかだ。
卓のそれぞれの前にはお茶が入っている。
「聞いたんか?」
「…いや、頑張っちゃって…あはははは!痛って!!」
菊市から谷村にパンチが入る。
「はぁ…まぁ菊市も元気なったし、ええか…。」
こんこんとドアをノックし、小松と川町がやってきた。
「あの…菊市さんが倒れたって聞いて、部屋にもいないから心配で…あ!」
「菊市さん、良かった~探したんですよ、ぼくもなんか倒れちゃって」
あとから平野と田嶋がやってきた
「小松、買ってきた…あの、お見舞いです…!」
「西崎、また水持ってきといたぞ、玄関に置いとく」
「みんな来よった…」
「…ねぇ、西崎さん…」
西崎のそばで転がっていた明智が目を覚ました。横たわったまま口だけ動かす。
「気ぃついたか、明智。」
「うん、大丈夫。ねぇ、菊市さんのこと話したほうが良くない?」
「うーん…菊市そうするかぁ?」
「いいよ…私から話すよ、あの…、落ち着いて聞いて。」
「うん!」
「「「はい」」」
それぞれが頷きをかえした。田嶋と明智はもう知っている。
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