第9話 庭に子猫が最近迷い込んでくる、猫といちゃつきたい


さらに数日後、とうとう菊市が部屋で倒れていた。菊市自体の存在感というか…オーラが薄い。

こりゃ早く手を打たんと…。今回は酷いな…部屋の空気が重い。オレも気分が悪い。

田嶋に電話しようとしたところ、家に残っていた明智が降りて来た。

「西崎さーん、めっちゃ空気が重いいい~」

ふらふらと騒ぎを聞いた明智が近づいてきたが、今は間が悪い。

「明智!!お前来るな…!!」

「へ?菊市さんそんなにやばいの?」


そうこうしている間にもさらに空気が重くなってきた。明智の顔色がサッと悪くなる。

「………谷崎さん…ごめ…ダメだこれ」

「明智!!」

明智はその場でぶっ倒れてしまった。慌てて、菊市の部屋に寝かせる。巻き込まれおって、アホ。


明智もそのままに、スマホで田嶋に連絡を取る。

外を見ると、社にあった花は既にない。庭の花も萎れてきている。

『…どうした』

「菊市がまた倒れた、お前んとこの近くの神社から水持ってきてくれ」

『神社は移転したぞ、工事が入ってる』

「!?」

そうか、工事は神社の近くだったんやな…菊市が今回悪いのもそれか

『…どうする?』

「……あー、そしたら裏の山から直接やな…頼めるか!?」

『わかった』

電話を切り、考える…。菊市の寝ているところをみると、菊市の身体が薄っすらと消えかけていた。

今回は危ないかもしれん。スマホを取り出し、あいつに電話をかける。すぐに出てくれるといいんやけど…仕事中やったら、直接引っ張ってこないとあかんな。


トゥルルルルル…電話の呼び出し音が鳴り響く


『はい』

谷村がコール音のあと出た

「よかった…、菊市が倒れよったんや、すぐ帰れるか!?」

『!!…菊市さんが…!!はい、すぐに行きます!!』

電話は切れた。谷村の仕事場は結構近い、田嶋より早く着くだろう。

頼みの綱は谷村やな…さて、持つかな…。


バタバタと走る音と共に菊市の部屋の扉が乱暴に開き、息を切らした谷村が帰ってきた。

「先生!?菊市さん!!」

すぐにベッドに駆け寄る。

「早くて助かった、谷村」

「先生…朝から会えたんですけど…顔色悪くって…でも、大丈夫だから仕事行けって…」


「谷村、菊市いるか?」

「…??、いますよ?」

「やっぱ波長が合っとるんやな…。」

「??」


ガサガサと音と共に田嶋がやってきた。水と大きな花束を二つ抱えている。

「おい、西崎持ってきたぞ。水と…川町の花屋で花も調達してきた。」

「おお!ナイス!!」

「花は足りそうか?水はどうする、飲ませるのか?」

「いや、水は社の近くと花壇に撒いてくれ、あと、他に入って来んようにしてくれ」

「わかった。菊市はそこに…いる…のか?」

「え!?居ますよ…」

谷村は目の前に菊市がいるのに、みんななぜ聞くのか分からない。


「ねぇ?田嶋兄ちゃん、菊市さんどうしたの?…っていないじゃん」

「川町!付いてくるなって言っただろ、出るぞ」

花束を西崎に押し付け、川町を部屋から出そうとする。

「何…?気持ち悪い……」

川町がその場でふらりと倒れそうになるのを慌てて田嶋が抱えた。

「…川町!!西崎、後は頼んだ」

「おお、川町よろしく」

川町を抱えて田嶋が出ていく。

オレは花束を抱えるとベッドへ近づいた。菊市が見えない。

「谷村、オレ見えへんから菊市に花持たせてくれんか?」

「え!?見えない?…」

「早う!!」

「あ!!はい、すんません!…え…!!」

谷村の目にも菊市が透けて見えるようになった。谷村は慌てて花束を持たせる。

花束を持たせると淡い光と共に、みるみるうちに花束は枯れて二つとも消えてしまった。

「!?消え…」

驚く谷村。暫く経たないうちに菊市の身体がしっかり見えてくる。応急処置だが暫くは持つだろう。




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