Day.12 ふわふわ

 夢の中で何かふわふわしたものが足に触れた。はっと目覚めて寝ぼけ眼で足元を見てもなにもなく、再び寝直したが夢は見なかった。

 次の日、また夢の中でふわふわしたものが足に触れた。夢うつつに足元を確認し、なにもないな、と二度寝する。

 その次の日も、そのまた次の日も、ふわふわしたものが触れる夢を見た。夢なのか現実なのかわからなくなってきて、昼間ふとうとうとしたときにも足元にふわふわを感じることがあった。

 二週間ほど経った頃。町中を歩いている最中に足元にふわふわを感じて驚き足を止めたそのとき、目の前の店に車が突っ込んできた。もう少し進んでいたら巻き込まれていたかもしれない、とぞっとした。あのふわふわがなければ。思わず足元を見下ろすと、

「わん」

 犬の鳴くような声。そして、白いふわふわとした毛玉のようなもの。聞き覚えのある気がする鳴き声がもう一度、わん、と聞こえた後、そのふわふわは消え去った。

 その日の晩、母からLINEで実家の犬が死んだことを聞かされた。ここ二週間ほど寝込んでいて、つい数時間前に息を引き取ったらしい。

 犬の名は、シロという。

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