Day.6 双子

 その国の人間は全員双子でした。そして、双子は同じことを仕事にし、同じことを趣味にし、同じ一組の双子を愛し、同じ一組の双子と結婚することになっていました。それですべてがうまくいっていました。

 彼らは生まれたときは双子ではありません。子供が生まれたら神殿へゆき儀式を行うと、その双子が生まれるのです。まれに発生する自然発生の双子は、どちらかを間引いてから改めて双子を作ることになっていました。

 けれど、ある夫婦がその決まりを破って、こっそり双子を育ててしまいました。片方だけを神殿へ連れてゆき、その双子を授かったため、その家には子供が三人いることになりました。

 元々の双子と授かった子供は平等に愛されてすくすくと育ちましたが、神殿へゆかなかった方の子供は外へ出ることが許されなかったため他の二人よりも華奢で、二人に守られるような立ち位置になりました。そしていつしか、双子はそのか弱い三人目の弟を愛するようになりました。双子は同じひとを愛するものですから、当然のなりゆきでした。

 けれど弟は一人しかいません。双子たちは仕方なく彼を共有することにしました。弟はそれを受け入れました。彼もまた、双子の兄を愛していたからです。

 幸せな日々が続く筈でした。けれど、いつしか双子は苦しむようになりました。弟は一人しかいないのに自分たちは二人いるため、自分だけを愛してはもらえないことに苦悩するようになりました。思い悩んだ双子は、双子のかたわれを殺そうと思い立ちました。双子は同じことを考えるものなので、二人ともがそう思い立ちました。

 なので、双子は相討ちとなって二人とも死にました。弟は嘆き悲しみ、湖へと身を投げました。



「……ですから、必ず子供は届け出て双子にしないと駄目ですよ」

 再現ドラマを見た子供たちは、わかりましたと返事をしました。神殿が役場になり、儀式が機械化されても、その国には双子しかいませんでした。それですべてがうまくいっているのでした。

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