Day.5 チェス
盤面は最悪だ。またひとつ駒が取られ、私はきつく目を閉じた。耳もふさいでしまいたい。……泣き叫ぶ声が響いたかと思うと突然途切れ、重たいものが地面に落ちたような音。
流れた血はどれくらいになっただろう。女王の気紛れの相手をさせられる私たちは、死んでゆく罪人たちの断末魔と怨嗟を受け止めさせられ心をすり減らしていく。
飢えた獣と戦わせる、檻に入れて海に沈めるなど、女王は罪人を様々な方法で間引いていく。今日の趣向は、チェスで駒が盤上より失われる度に対応する罪人が殺されるというものだ。女王は美しく、教養があり、ただ誰よりも残酷で悪趣味であった。
私はただの学者だった。だが、あるとき国の逆鱗に触れ罪人となった。その罰としてこのゲームをやらされている。女王が静かに私を見ている。手が震える。私の采配で誰が死ぬかが決まるのだ。この吐き気が、叫びだしたくなる気持ちが、私への罰だ。
……この一手で、また一人が死ぬ。
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