3. 帝国

 フェゾンきょうこく遺跡の内部調査かんかつ権をアカデミーに完全移行した帝国軍特別騎甲大隊は、およそ一か月かけて本国に帰還した。各地にある帝国領で補給・休息を得ながらようやくだ。大隊の被害はかつてないほどじんだいだった。その被害の多くはフェゾン遺跡でそうぐうした少女イシュタルによるものだ。


「ふう、ようやく帰還か。まったくもう少し移動手段がどうにかならないものか……」

 は真上。ちょうど昼だった。


 帝国本土のがいかくは高いへいで囲まれ、監視塔が複数張りめぐらされていた。また、侵入者や戦闘生物が生活圏へ入り込まないように入り口は三か所だけで、多数の関所と坂道・まがり道で構成されていた。また《失われた旧世界》の技術により本土上空から外壁にかけてっすらと透明な障壁……すなわが張られていた。


 このバリアは大気の浄化フィルターとしても機能しており空気を透過する機能を持っている。銃弾や戦闘生物の生体弾のような物理的きょうも透過させることはなかった。もちろん戦闘生物も通過できない。このため、帝国は飛行型戦闘生物に奇襲されることも、陸生戦闘生物に襲撃されることもない。ただし、帝国は敵国の襲撃に備えるという意味もねて、定期的に飛行戦闘生物部隊による上空パトロールを行っていた。


「大佐、すでにこちらの伝令が上に届いています。しばらくのきゅうけい後、午後三時に皇宮・あかつきに来るようにとのことです」


 伝令役として先に本国に帰投し、再び大隊に合流した伝令兵が本国司令部の言葉をフェベルに伝えた。


「了解した」


 正門を通過した特別騎甲大隊は基地へ向かう。

 基地はアカデミーと隣接しており、軍に必要な装備や武器等の情報を現場兵士から得ていた。道具を作る側は道具を使う側の意見が必要なのだ。日々新しい装備や武器が試作され、多くの失敗作を出しより良いものを生み出す、これが帝国の方針であり軍備増強を支えていた。

 戦闘生物の管理部屋も基地敷地内あり、彼らのための専用競技場(実用試験場)も整えられていた。まれに、戦闘生物の脱走や暴走もあるため、周辺には〈危険〉の立札が複数個所に設置されていた。帝国が戦闘生物運用に成功しているかといえばそうでもない。戦闘生物もしょせんは生物だ。自然交配による個体増産では必ず個体差が出てしまい、人間の命令にさからう個体が出てくるものだった。当然だがそのような個体は基本処分された。


「報告したいことは山ほどあるが、取りあえず休息だな……」


 フェベルも含め大隊の疲労はかなりのもの。まともな休息は絶対欠かせなかった。本土の安心感は格別であり、質の良い睡眠もとれるだろう。


 帝国はこの時代における最初の国家にして《失われた旧世界》の技術を一部だが手にした大国だ。他の国家にはない整備された鉄道や地下通路、電気といったものが存在し、数千万のしんみんが生活している。統率がとれた大規模戦闘集団である軍隊を創設し、帝国支配による人類はんえいかかげ、周辺の集落や国家へ侵攻していった。その支配領域は日々、拡大のいっ辿たどっている。その一方、帝国内では完全なる階級社会が築かれており、実力ある者が優遇されその一族があんたいする。例え、帝国外部の者であったとしても認められれば、身の安全だけでなく様々な特権が与えられた。そのため帝国の支配下に進んで入る周辺集落や小国家が存在し、人生の一発逆転を狙う者が多数を占めていた。

 しかし、現実はそう甘くない。帝国外部の者は社会的信用が低いとされ、その扱いも帝国臣民下流階級よりも低かった。また新しく帝国領になった地域も厳しい制限が設けられ、長い時間をかけて完全な帝国領土としていくのが通例だった。外部の者が帝国の信用と評価を得るには相当の時間がかかる。これは帝国における国家防衛戦略上の問題として重要だ。反乱の抑止、敵国の工作員という内部にもぐり込んだ敵を見つけ出すために。


 帝国の存在そのものともいえる〈帝国軍〉は、徴兵制からなる予備えきと志願者制による常備軍をへいようしており、広がる領土の警備や暴動鎮圧には戦闘生物も運用されていた。帝国軍の訓練や装備、兵器は全てアカデミーによる科学的観点から生み出されており、その質は非常に高かった。志願者制の一部コース中には、帝国軍人の子供が将来約束されたエリート軍人となるための将校養成学校もあり、ここで一般教養と軍事教養の両方を身に着ける。

 そしてこの強大な帝国を影から支えるのは、研究機関兼軍学校の〈帝国アカデミー〉だ。アカデミーではにち、戦闘生物や《失われた旧世界》、周辺集落の文化、世界地理の研究等が行われていた。特に世界各地に点在している《失われた旧世界》の遺跡の調査・解読は彼らアカデミーの大きな仕事だ。世間的には多くの遺跡が解読され、帝国内で再現できていると思われているが、現状はほとんど解読が進んでおらず、その再現率は1パーセントにも満たなかった。


 そんな中、帝国アカデミーと言われているのが高度環境適応新型戦闘生物『ヴェーガ』の開発だった。あらゆる環境に適応することができ、高い知能と攻撃力をほこるヴェーガは帝国の象徴となっていた。たった一体のヴェーガが国を滅ぼすといわれ、帝国の対抗勢力はその存在におびえまともに動くことができない。ただ、ユランベルク諸国連合などの中規模抵抗勢力には戦闘生物を運用する対戦闘生物守備隊が組織されているとされ、帝国アカデミーはヴェーガ一体で国を滅ぼすことができるというのは今や過大評価であると報告している。



《帝国》

 出典「帝国アカデミー発行 国家大全 五訂版」

・国家体制:皇帝を頂点とする絶対君主制

・国民  :貴族階級、臣民階級、外部階級という階級制

・戦闘組織:戦闘生物を運用し、高度に組織化された軍隊を保持

・人口  :2301万(軍属、外部階級を含まない)



(皇帝陛下と最高司令部への報告書を作成しなくては。だが、あの少女と少年を報告するべきか?誰が信用する?)


 報告書はなおに書けばいいというものではない。なぜなら、報告書というものは状況を正確にあくできなければならないからだ。そう、内容は正確でなければならなかった。そこに虚偽があってはならない。もし、《失われた旧世界》の遺跡に少女や少年がいたと書いたら、上はどのように思うだろうか。特にフェベルは皇帝直属の特別騎甲大隊を率いる身だ。午後三時から皇宮に来るように言われているが、その場で直接皇帝に報告しなければならなかった。体験した内容はとても信じられないようなもので、これをそのまま皇帝に報告すれば彼の信用は確実に落ちるはずだ。それは彼自身容易に想像できた。


「実際、自分の目で見ていなかったら、私も書いた奴の頭を疑うことだろう」


 おまけにヴェーガまで率いてこのありさまだ。二人には逃げられ、《失われた旧世界》の武器も奪われた。だが皇帝からの信用をフェベルが自分から裏切るわけにはいかなかった。

 フェベルはありのままに報告書を書くことを決めた。


「……降格は間違いないな。最悪、けい罪で死罪だ」


 フェベルの後ろでヴェーガ達が小さく翼を広げ、彼の背中をじっと見つめていた。



〈皇宮セルデリア・浄罪のみち

 帝国深部にそびえ立つのは皇帝が住む皇宮セルデリア。

 厳重な警備体制が敷かれ、セルデリア内部のぜんぼうを知っている者は皇帝の側近や守護の役目をになう、ごくわずかな人間だけだ。軍の大将やアカデミー総合所長でもセルデリアがどのように造られているのかを知らなかった。

 ただ、基本的な建築様式から考えるに残されていた《失われた旧世界》の建造物を修復・改修したものだろう。所々に不思議な模様や光る壁などが見受けられるが、そのどれもがこの世界で一般的なものではかった。かなり幻想的で非現実的なものだ。


(やはり、セルデリアの雰囲気はいつまで経っても慣れない……)


 皇帝は帝国で絶対的な存在であり、帝国軍の最高司令官だ。いつでもどんな人間でも自由に処罰・しゅうかん・死罪にすることができる。フェベルの首もいつ飛んでもおかしくない。


(ふう、落ち着け。とにかく落ち着く必要がある)


 フェベルを先導する皇宮警護兵は、変わらない速度で規則正しく歩き続けており、ぶん路を迷うことなく進んでいた。フェベルの背後には警護兵二人がきっちりとついて来ているが、これはフェベルの護衛というよりむしろ監視だろう。


(相変わらず、ここの兵士達は冷たいというかあいそうというか。まあ皇帝陛下のそばにいるというだけで、常に緊張状態なのかもしれないな。自分だったら耐えられない)


 皇帝が自ら選抜したとされる皇宮警護兵及び近衛このえ兵は特徴的なかっちゅうに身を包んでおり、顔もかぶとで見えなかった。彼らの携行武器は銃ではなく剣であり、一人ひとり腰に二本差してあった。これがれい的なものなのか、それとも実用なのかはフェベルには判断できなかった。


「間もなくあかつきです」


 目の前には光る紋章が描かれた壁があった。そう扉ではなく壁だ。いちように同じ強さで光る扉。


「陛下、特別騎甲大隊長のフェベル大佐をお連れしました」


 先導していた皇宮兵が到着を告げる。すると壁の紋章が光り大きく壁が開き始めた。分厚い壁はかなりの重量があるはずなのだが、ひとりでに開くのは《失われた旧世界》のものだからだろう。


 光る壁の奥には広い部屋。天井も高くげんしゅくであるとともに、神秘的な光で大きな紋章が宙に描かれていた。これは帝国を表す国章だった。


「皇帝陛下、特別騎甲大隊長フェベル、ただいま参上致しました」


 玉座に座るのは帝国の皇帝。

 皇帝はふちが深い日よけフードを被っていた。そのためこちらからは素顔が見えないが、その圧倒的な存在感はひしひしと伝わってきた。


「よく戻ってきた大佐。遺跡での任務ご苦労。余はそなたの帰還を心待ちにしておった。そなたの発見にアカデミーもかんしておる」


 皇帝は巨大なこの国を治めている存在なのだが、近衛このえ兵なしに戦場に姿を現すこともある奇抜な人物で、その心内を読むことはできない。臣民に向けては一日一日を熱心に生きること、他者を上回る特技を身に着けることをとなえていた。これは帝国が広大であり、ちつじょを維持し発展していくためには欠かせないことだった。帝国には敵が多いことも事実。帝国は文字通り弱肉強食で成り立っていた。


「それでは詳細を聞かせてもらおう」


「ハッ。ご報告申し上げます」


 皇帝の左右には近衛このえ兵達が並んでおり、さらに目の前の廊下にも近衛このえ兵達が整列していた。


「では、フェベル遺跡で私が見たことをご報告します……」


 フェベルは二時間以上にもわたり、自分が遺跡で見てきた内容を皇帝に伝えた。内容については何も隠さず全てありのまま。遺跡には特定危険種が非常に多く見られたこと、そして人間をはるかに上回りヴェーガをも圧倒した少女と超古代文明の武器を手にした少年の存在……ヴェーガを率いていたにも関わらず二人を逃がしてしまったこともだ。

 皇帝はフェベルの話を熱心に聞いていた。フェベルの内容に関して質問もした。報告しているうちに少し緊張がほぐれてきたフェベルは皇帝の質問に対し全てていねいに回答した。


 皇帝との面会と報告を終えたフェベルはその五時間後、帝国軍の高官達からなる軍事もん委員会へ出席し同じように内容を報告した。ここではフェベルはある意味、予想通りの扱いを受けることになった。将軍達はフェベルの報告に出てきた少女と少年について、その存在をかい的に見ており、ほとんどの将軍が信用していなかった。比較的年齢が若いフェベルに対し、指揮のあり方に問題があったとする指摘も多く、が相次いだ。


 フェベルはもん委員会への報告も終わると皇帝ともん委員会の反応の違いを実感していた。遺跡調査を命じたのは皇帝であり、皇帝はフェベルの報告内容の全てを疑わず事実だと考えているように見えた。同時にフェベルの報告に出てきた少女や少年に対して、何の驚きもせず淡々とそれらの話を聞いていた。まるで皇帝はこのような事態になることを予想していたかのようだ。遺跡調査を帝国アカデミーの調査部隊ではなく、特別騎甲大隊に命じたことも全てはこのことに対しての予防ではなかったのか、と。


(いや、そんなはずないだろう。事前にわかっていたのなら何かおっしゃったはずだ)


 フェベルは皇帝に絶対の忠誠を誓う身だ。皇帝のために命をささげることはめいだ。何も疑問に思う必要はなかった。



〈帝国アカデミー・戦闘生物研究棟〉

 ここ帝国アカデミーは帝国の研究機関であり教育機関(帝国軍将校は帝国アカデミーを卒業する必要がある)。アカデミーでは超古代文明の研究や軍のための兵器開発、戦闘生物の研究・開発を行っており、日々研究が進められている。

 近年、アカデミーは連射が可能な銃や新型戦闘生物ヴェーガの開発に成功し、軍事力増強に大きくこうけんした。実際、ヴェーガの存在は他国に対し大きなプレッシャーとなっている。

 だが、帝国にとっていいことは長くは続かなかった。帝国以外にも戦闘生物を飼い慣らし、戦闘集団として機能するようにした国や、超古代文明の力をほんの一部だが帝国のように手にした国も出てきたのだった。さらに、国土が広大になるにつれて、治安維持の問題もけんちょになってきた。戦闘生物による居住区の襲撃や現地の反乱……これらに対処するため、軍の更なる機動力・火力向上は大きな課題だ。


「おい、こっちの個体は二次調節したのか?」

「いいや、まだだ」


 アカデミーは巨大な多層構造建築で、教育棟と研究棟の二つに大きく区画が分けられていた。

 教育棟は臣民高等教育学校と軍訓練学校及び士官学校に、研究棟は戦闘生物研究棟と超古代文明研究棟に分けられている。戦闘生物研究棟では文字通り、戦闘生物の生態・生体について研究が行われており、それらの研究成果を書籍「戦闘生物図鑑 帝国アカデミー発行」にまとめて一般人にも販売・公開している。帝国外の人々にもこの図鑑は知られており、戦闘生物ハンターや旅人にはひつじゅ品となっている。

 ただし、外部に公開される図鑑の内容にはいくつかはぶかれた内容や、国家安全保障上の都合により掲載されていない内容が存在する。特に帝国軍が運用する戦闘生物については記述がほとんど存在しない。


「〈ケリュタス〉は試験データを見る限り、まずまずだな」

「そのようですね。ただ量産体制にまだ課題が残っています」


 戦闘生物研究棟には戦闘生物を試験的に飼育する区画がある。ここ第三飼育室では〈ケリュタス〉と呼ばれる中型飛行戦闘生物が飼育されており、研究員が襲われないようにしんちょうに成長度合いを確認している。人工的な飼育環境で戦闘生物の管理は比較的容易なのだが、それでも脱走したり暴走したりする個体は出てくる。場合によっては研究員が襲われることもある。


「〈アルドヌ変異A型〉は野生型よりも戦闘能力が向上していると確認されました」

「〈アルドヌ変異B型〉は逆にきゅうかくと視覚が低下か……興味深いな」


 〈ケリュタス〉が飼育されている二つ隣の部屋では〈アルドヌ変異型〉の飼育が行われている。アルドヌの変異型には外見的特徴の違いからA型とB型に分けられていた。アルドヌ変異型が飼育されているさらに奥の部屋にはとりわけ大きな部屋がある……そこは帝国最強の戦闘生物ヴェーガの研究飼育室だ。いくつもの防御隔壁と多くの監視兵が巡回し、そこは他の戦闘生物の部屋とは次元が全く違う物々しさがある。


「ヴェーガはやはり成長が止まってしまっているな。一次幼体で止まった個体が23体、二次幼体で止まった個体が16体か。おまけに化していない個体は36。孵化・発育条件をもう一度検討し直す必要がある」

「一体、何がいけないんでしょうか?」

「わからない。最初の六体は成体まで成長したのが奇跡といっていい。感染症や栄養不足が原因ではないだろう。どうも各成長ステージで何らかのきっかけ、あるいは環境条件が必要なのかもな」


 巨大な部屋の中には透明なつつに入った幼体のヴェーガがずらっと立ち並び、それぞれのつつには数多くの管が天井からつながれている。つつ状の保育器は半透明の溶液で満たされていた。


「しかし、最初の六体と同じ環境条件でも成長せずに死亡という報告もあります」

「ヴェーガを量産することができれば我が帝国はあんたいなんだが」

「現状ではヴェーガの量産は難しいですね」

「ヴェーガの量産よりも〈ケリュタス〉の量産が進みそうだ」

「〈ケリュタス〉は飛行型戦闘生物として優秀ですね。知能も高く、また集団行動が得意ですから、空の戦力増強につながるでしょう。すでにいくつかの隊では試験投入されていますし」


 アカデミーでは生産困難であるヴェーガの個体数を増やす計画を進めているが、その計画はいまだ難航し先の見えない状況が続いている。しかし、皇帝や帝国軍幹部の強い要望もあり計画は当面中止することはない。アカデミーではヴェーガ量産化はあと少なくとも五年はかかると予測している。

 だが、帝国はヴェーガ以外にも新しい戦闘生物を開発しており、いくつか量産の候補に上がっている。量産化が早いとされているのは飛行型戦闘生物〈ケリュタス〉。人の言うことを理解できる高い知能を有し、集団戦闘を得意とする。単体でも武器を持った人間に勝つ十分な戦闘能力がある。ヴェーガを目指して造り出された戦闘生物だ。

 次に量産化される予定があるのは〈アルドヌ変異A型〉。アルドヌは四足歩行型戦闘生物であり、ウォンクスの後継種として運用が考えられている。ウォンクスよりも細い身体で非常にびんしょうである。長い尾はかたい戦闘生物の皮膚を一刀両断するほど鋭い。ウォンクスとの最大の違いは壁を難なく上ることができ、天井をわずかな時間ではあるが歩くことができる点である。さらに体色を外部の景色に合わせて変化させることもできる。


「《生命炉》は順調にどう中。第三班は第一セクターに移動せよ」


 帝国アカデミーが戦闘生物を一から造り出しているわけではない。そもそも戦闘生物は超古代文明《失われた旧世界》の遺産である。その生体はいまだ謎が多く、人工はんしょくも簡単ではない。

 そんな帝国が新しい戦闘生物を造り出す技術を有しているのは《生命炉》と呼ばれる《失われた旧世界》の実験施設を利用しているためである。《生命炉》の構造や機能の全てはわかっていないのだが、戦闘生物を製造するためのものであることは判明している。その機能を使って帝国は自然界にいない新たな戦闘生物の開発を行ってきた。


「《生命炉》に関する新しい実験を三週間後に実施するらしい」

「その実験の担当は確か生体構造研究所第一班ですね。なかなか面白い内容だと思います」

「まあ、成功するかどうかはわからないが。上手くいけば、戦闘生物の開発や改良が今よりも楽になるだろう」


 生体構造研究所は既存の戦闘生物や、新たに生みだした戦闘生物の身体の構造を科学的に理解し、その特徴や弱点を研究している。第一班から第六班まで存在しており、第一班はヴェーガや特定危険種の生体研究を主に行っている。《生命炉》の機能を駆使して、新たに戦闘生物を創造しているのも、主に第一班であり、帝国における頭脳集団である。


「それより、特別騎甲大隊の話を聞いたか?」

「ええ、ほとんど壊滅だとか……一般軍人への口外は禁止と上から通達がありましたよ。かんこう令です」

「あのヴェーガが……負けたのか」

「そうなりますね」

「敵は何者なんだ……」



〈帝国アカデミー・兵器研究棟〉

 帝国アカデミーの兵器研究棟では、帝国軍の銃や通信装備だけでなく軍服やぐんまで研究開発している。引き金を引き続けることで絶え間なく連射できる銃や、離れた人同士で連絡が取れる機械、さらに対戦闘生物用に設計された携帯式ロケット砲など、それら全てがここで開発されたものだ。


「主任、特別騎甲大隊のフェベル大佐から無線機の性能を上げて欲しいとの要望がありました。特に、無線で話せる範囲をより広く、無線機をより携帯しやすいように小型にしてほしいと。このままでは全く使い物にならないと厳しくおっしゃっていました」

「フェベル大佐はなかなか手厳しいお方だ。だが、確かに他の部隊長さんからも同様の要望は出ている。現場の兵士の貴重な意見だ。今のところ、ある程度の小型のはたっている。通信可能範囲に関してもなんとかなりそうだな」


 無線機の改良は現場の兵士達にとって非常に重要なことだった。なぜなら、離れた部隊や仲間と連絡を取り合うことで、迫りくる危険に対処を行い、敵への攻撃のタイミングをつかむ、敵の様子を伝えるなど、情報共有が戦いでの勝利に大きく関係してくるからだ。戦場で味方との連携は欠かせない。


「あと、フェベル大佐は式連射小銃に不満を少々持っているようでした」

式連射小銃か……携帯性と連射性能には自信がある銃なんだがな」

「はい。フェベル大佐も、携帯性と連射時の威力については評価されていました。ただ『連射すると反動が大きいために遠距離の敵に当たらない、閉所での戦闘ならば満足できる』と。できれば狙撃銃と連射小銃の中間の銃が欲しいとのことです」

「なるほど……その新型銃については第二工房の連中に任せるとしよう。上手く開発に成功すれば、今後の主力銃になるかもしれないな」

「そうですね。ところで主任、第四工房の三十式狙撃銃の試作はどうなったんですか?」


 兵器研究棟では第一から第九工房まであり、それぞれ研究開発しているものが異なっている。

 現在、第四工房では既存の狙撃銃の改良や新たな狙撃銃の設計と開発を行っていた。


「ああ、どうやらあまり上手くいっていないようだ。と言っても、銃の方ではなく使い手の方みたいだが」

「使い手?と、いいますと?」


 主任の言葉に研究員は思わず聞き返した。


「銃自体は長距離狙撃用として非常に素晴らしいものなのだが、その銃を上手く使いこなすことができる兵士がいないということだ。何せ、長距離の敵を射抜くためには高い技術が必要だ。だが、今の兵士達にそのような狙撃技術を訓練しているわけではない。だから、三十式狙撃銃の量産は難しそうだ」

「そうなんですか……なんだかもったいないですね」



〈帝都ルペリア〉

 帝都ルペリアは戦闘生物による襲撃におびえる必要がない、世界でゆいいつ安心して暮らせる都である。商売や教育、文化といったものは世界一であり、帝国には外部からも多くの人が集まる。

 戦闘生物という存在におびえることがない帝国臣民は、その代わりに成人年齢で軍に入隊することが義務付けられている。一部、免除されるものもいるがほとんどは三年間を軍人(予備兵力)として過ごすのだ。その後、そのまま職業軍人として軍に残るか、他の職業にくかを決めることになる。他の国にはほとんどない、芸術家や教師、研究員(帝国アカデミー)という職業に就くことも可能だ。


 フェベルは皇帝からきゅうをもらい、久しぶりに帝都を歩いていた。

 夜の帝都。帝国では電気が通っており、照明のあかりがみやこを照らしている。

 区画ごとに、高層部、中層部、下層部が存在し、高層部には空高くまで伸びた展望台、見張り塔がある。中層部には多くのらく施設や公園があり、下層部には商店街や兵士の駐在所、飲食どころが密集している。中層部と高層部にはそれぞれの区画を繋ぐ連絡道路がけられていた。

 貴族階級や軍の上級階級は眺めもよく、広い屋敷を上層部に持ち、比較的功績が認められた優秀な臣民あるいは認められた商業人は中層部に、一般臣民は下層部に住居を持つことになっている。


「いらっしゃい、いらっしゃい!本日は特別価格ですよ!、ご覧になってください!」

「奥様、これなんかいかがしょう?」

「うん、なかなかいいわね」

「こっちも見ていってちょうだいよ」

 下層部の商店街を歩くフェベルは別に買いたいものはなかった。ただこの街の雰囲気を全身で感じるのが心地よかった。やはり帝国出身ということもあるのだろう。この何とも言えない安心感がなければ、彼はこのすたれた世界で生きていく自信はない。

 まあ、彼にはヴェーガがいるのだが。


「大佐!」

 二人の巡回兵がフェベルを見つけ、敬礼を行った。


「構うことはない。任務に戻れ」

「ハッ!」


 軍による都の巡回は欠かさずに行われている。帝国は確かに弱肉強食の競争社会でもあるが、人身売買や売買春、れいの所有、戦闘生物の密輸などは全て禁止されているためだ。


 フェベルは上層部の展望台に向かった。

 目の前に広がるのは帝都の夜景。彼がここに来るには意味があった。


「多くの部下を失った。私は大隊長として何をしているのだ……」


 イシュタルの圧倒的な戦闘力の前に彼はほとんど無力だった。


「あの少女は何者なのだ。皇帝陛下は知っておられたのだろうか……なぜ我々に遺跡調査を命じられたのか」


 皇帝陛下に絶対の忠誠をちかった身だが、その忠誠心は揺らいでいた。

 これは疑いようがなかった。

 こんな状態で今後の任務を遂行できるのか、フェベルは不安だった。


「私は何をすべきなのだ……部下をどう率いるのだ。こんな揺らいだ気持ちで戦場になど出られない」


 彼は空を見上げた。バリアの外、上空にはケリュタス飛行部隊が定時の夜間警戒飛行をしているのが見える。


「ケリュタスの警備部隊か……」


 思えば初めてヴェーガと出会った時、彼は怖さよりもその存在感に心打たれた。このような素晴らしい生き物がいるのかと。堂々としたつらがまえ、翼で空を支配し、何をも恐れず世界を生きている。人工的に生み出された存在とは思えなかった。ヴェーガの方も彼に対してかくすることも、攻撃してくるしぐさも一切なかった。


 そして、次に頭に思い浮かべたのは帝都を守るということだ。

 それは心の底からの本心だった。


「私にはヴェーガがいる」


 フェベルは自分のすべきことを思い出した。

 そう、帝国軍の兵士としては失格だ。彼は気が付いた。

 帝国軍人は皇帝陛下を第一に考え、その命は皇帝陛下のために捨てなければならない。

 彼は皇帝陛下のために命を捨てる覚悟はあるが、第一ではなかったのだ。


「特別騎甲大隊として、私は帝国の平和を守る義務がある。死んでいった部下のためにも。私のこの命果てるまで。奴が何者であっても必ず倒す」



〈皇宮セルデリア・あかつき

 報告しに来たフェベルを帰した後、部屋に一人残っている皇帝は考え事をしていた。


「やはり予想は当たっていたか」


 皇帝は静かに言った。


「だが、彼女が目覚めたのは予想外だ。一緒にいた少年は何者だ……」


 その言葉にはまどいと若干のあせりが見て取れる。


「扉を開けることができる者はいないはずだ。それなのになぜ……なぜだ。遺跡には多くの戦闘生物もいたはず。そんな中、その少年はあそこまでたどり着いたというのか。いや事実たどり着いた。フェベルの隊は被害じんだい。当然だろう。いざという時のためにフェベルを向かわせたのだが、予想をはるかに超える戦闘能力。さすがDoLLドールということはある。彼女を早く見つけて手を打たなければなるまい」


 皇帝は椅子に座ったまま、右手の近くにある黒いボタンを押す。すると、ローブを着た者が一人。どこからともなく現れ、皇帝の前でひかえた。


「ウインド・アイ、ただいま参上致しました」


 えんじ色のマントをなびかせる女性。その背中には帝国近衛このえ騎士団の紋章がしゅうされている。


「彼女が目覚めた」


 皇帝のその言葉を聞いて女性はうなずいた。そして口を開く。


「彼女と言いますと、ゼロクイーンのことでしょうか?」

「そうだ」

「まさか、本当に彼女が生きていたとは……いかがなさいますか?」


 ウインドは皇帝に尋ねた。


「そうだな、とりあえず遺跡周辺地域の捜索を行うとしよう。ユランベルク諸国連合との国境も近いが、問題なかろう。もし戦争になってしまったとしてもそのまま戦争をすればよい。新しい戦闘生物の試験運用にもなる。さあ、ウインドきょう。彼女を見つけ出すのだ」


 皇帝はさらに言葉を続けた。


「そして完全に破壊しろ」

ぎょ



〈帝国軍第四二歩兵師団 西部戦線〉

「このままでは弾が持ちません!重傷者も多数出ています!」


『第四中隊、聞こえるか。おい、応答しろ!』


 今、帝国軍第四二歩兵師団がいるのは〈スザ公国〉国境近くの最前線。

 フェベル率いる特別騎甲大隊が遺跡に派遣され、ほとんど壊滅状態になって本国に帰還した日から、多くの日が経っているのだが、その話をいまだに第四二歩兵師団は知らない。これは最強と言われた戦闘生物ヴェーガ率いる特別騎甲大隊の壊滅的損害の話を聞いて、彼ら第四二歩兵師団の兵士の士気が低下するのを恐れてのことであった。しかし、現状兵士達の士気はそうでなくとも低下している。


 スザ公国は帝国から離れた西の国。帝国からは大きな樹海〈シュワルザ樹海〉を通る必要があるため、そこが戦略上大きなネックとなっており、加えてスザ公国軍の部隊が森にいくつか関所を築いていた。ただでさえ樹海には野生戦闘生物が多く危険なのだが、スザ公国軍は秘密の抜け穴でも使っているのか展開力が高い。

 その上、関所は攻めにくい高所に建てられており進軍は思い通りにいかなかった。戦闘生物部隊の支援が一切ないまま、樹海の関所を突破し、スザ公国に攻め込むのは現状から考えて不可能だ。帝国の誇る強力な武器も持久戦になれば、使い物にならない。本国が近いスザ公国軍とは異なり、帝国軍は物資の補給が間に合っていなかった。


「まずいぞ。九時の方向、敵の増援部隊を確認した」

「伏せろ、敵の狙撃だ。スザ公国の奴ら、狙撃部隊を各所に配備してやがる」

「おまけにきりが出ていても正確だ。我々が持っていない装備がある」

「くっ……世界にその名をとどろかす、我々帝国軍がこんなところで苦戦を強いることになるとはな」


『第四中隊からの応答がない』


「野生の戦闘生物は今のところ見えませんが、交戦地域に来ないとも言えません」


 第二中隊を率いているルド少尉はどうするべきかを考えていた。彼が判断を下そうと考えている間も様々な報告が耳から入って来る。


「報告!第四中隊の全滅を確認しました!」

「なんてことだ……本部中隊に無線を繋げ!」

「少尉!無線繋ぎました!」

「こちら第二中隊!本隊指示をう!」


「大尉、一時後退しましょう」

 第三大隊を率いる本部中隊長、デニック大尉は撤退するべきかこのまま敵を抑えておくべきかという決断に迫られていた。もしここを敵が突破した場合、最前線基地まで一気に攻め込まれる可能性がある。かといってこのまま戦闘を継続していけば大隊が全滅する可能性がある。すぐに指揮官として判断したいところだが、判断できないのが人間だった。


(このまま部下を死なせるわけにはいかない。しかし……後退すれば師団に大きな損害が出る可能性が高い。増援部隊は来ないのか)


 今、どこの隊も交戦中で身動きが取れない状況だ。他の部隊が駆け付けてくれるわけもない。


(ここを突破されれば一気にこのきんこうは崩れてしまう)


「第二小隊が弾切れです!」


 もう彼に残された時間はなかった。


「これより我々は……」


「大尉、上を!」


 部下の言葉でデニックの声がかき消された。同時に、部隊の上空を大きな影が横切った。


「何!?」


 そして彼は部下の言葉通り上を見た。


「あれは、まさか」


 上空を飛行する戦闘生物、その姿に彼は見覚えがあった。


「ギイィィシャアアアアアアアアアアーーーー」


「友軍だ!特別騎甲大隊だぞ!!」

「味方だ!」

 ヴェーガは口から光るエネルギー光線を出し、敵の関所を難なく破壊した。


「ヴェーガだ!逃げろ。退却!退却!」

「帝国のヴェーガだ!引け!引け!!」

「うわああああ!」

「あ、あ……助けてくれーー」

「引け!引け!」


 さっきまでの苦戦がうそのようだ。次々とヴェーガから放たれる攻撃は文字通り圧倒的だった。ヴェーガの到着により敵軍は敗走。帝国軍はシュワルザ樹海のスザ公国防衛線を突破した。第四二歩兵師団は特別騎甲大隊に救われた。


「負傷者を報告しろ、曹長」

 敵残存兵がいないことを確認するとデニックは部下に命令した。


「報告します。大隊の負傷者54名、死者23名、行方不明者42名です」


(助かったのはいいが、このまま進軍するのは危険だ)


 帝国軍の大隊は基本的に60名からなる中隊5つより構成されている。総勢119名という大隊約三分の一の兵力が失われたのだ。


(負傷者が多すぎる。弾ももたないぞ)


「大尉、戦略司令部より伝令!」

「なんだ?てっ退たい命令が出たのか?」

「いえ、、一日も早くスザ公国をかんらくさせよ、とのことです」

「なんだって、このまま進軍……」

「はい。これは皇帝陛下からのちょくれいであります」

「わかった。このまま進軍する。皇帝陛下のために!」


 特別騎甲大隊長のフェベルは複雑な思いでこの場にやってきていた。後ろでは部下達が負傷兵の手当てに従事している。ヴェーガ達は野生の戦闘生物が来ないように周囲を警戒中。


「少し、違和感があるな」


 フェベルは考えていた。国家戦略上、《失われた旧世界》の遺跡を入手するのはわかるが、他国に進軍してまで遺跡を手に入れる必要があるのかと。遺跡の力は確かにすごいが、そのほとんどは解読できていない。宝の持ちぐされではないか。占領して支配下に置いた遺跡は警備部隊も置かなければならない。ほどのことがない限り、遺跡内部に入ろうとする物好きはいないはずだ。警備を置くのは割に合わない。

 さらに今、帝国は多くの国や地域を相手取り、戦争あるいは戦闘を行っている。いくら強力な軍隊とはいえ、複数の地域で戦力を分散されるのは得策ではないように思える。


(陛下は何かをあせっていらっしゃる?)


 帝国軍の力を使えば確実に世界は取れるとフェベルも思っている。ただ世界中で同時に戦闘を行うのはかなり現場として難しい。


(アカデミーでは軍の戦闘力と機動力強化のために、新しい戦闘生物を量産する予定だと言っていたな。さらに新しい実験もすると)


 一人でそう考えていると、フェベルの相棒ヴェーガが彼の横に寄って来た。


「……あの少女と少年。我々が知らないことを皇帝陛下は知っておられるのか。陛下は帝国の繁栄のために何かなさるのだろうか」


 皇帝に対する絶対的忠誠心は、今のままでは維持できないと彼は感じた。過酷な現場を見ている。目の前の現実を無視できるはずもない。


「遺跡調査よりも先にこちらの戦線に来ていれば……多くの仲間を救えたかもしれないな」


 フェベルはヴェーガにそう言った。そして部下にも聞こえているだろう。



「大佐、先ほどは助けて頂き、まことに感謝する」


 第四二歩兵師団長アズーク中将はフェベル大佐に感謝の言葉を述べる。


「到着遅くなり、申し訳ございません。アズーク中将」

「そんなことはない。殿でんはフェゾンで大変な状況にあっていたのだ。しかたあるまい。それに殿でんらのおかげで我々は助かったのだ」

「負傷者は前線基地に下げましょう。護衛としてヴェーガ二体をずいはんさせます」

「了解だ。こちらもいくつか隊をずいはんさせよう」

「戦闘では我々が先に立ちます。これ以上、被害を出すわけにはいきません。我々が全力で敵を排除します」

「そう言っていただけると心強い」



《皇歴215年、森の月》

 ヴェーガを引き連れた帝国軍はスザ公国へ侵攻。スザ公国が有する戦闘生物部隊はまたたく間に壊滅し、スザ公国軍はその圧倒的な戦闘力を誇るヴェーガの目の前に、戦意を早くにそうしつした。このためわずか数時間で戦闘は終了し、スザ公国が帝国との戦争に敗北した。これによりスザ公国は帝国領へ編入され帝国領スザ地区となる。さらに同じく森の月、帝国南西部に位置する都市国家〈アリファデール〉、帝国北部に位置する大規模集落〈カンカラ〉が帝国軍の侵攻により帝国領となった。

 これらの話は数日のうちに世界の主要国家へ伝わり、帝国きょう論がより一層高まる結果となる。各国は帝国軍の組織編成を参考にしながら軍隊の近代化を急速に推し進めていった。各国は単一国家だけで帝国に勝てないことを理解しており、帝国の侵略をきょうとする国同士で、密かに連携を取り合うようになっていた。反帝国連合の誕生が現実味をびてきており、強力な対帝国包囲網が形成されつつあった。これにより帝国ちょうほう部の活動が昔よりも制限され、帝国内では情報戦ならびに国家間戦争での帝国優位が失われるというねんの声が続出した。これに対し、帝国軍事もん委員会は「すでにこのような事態になることは想定済み」であるとして、周辺国がとりわけ帝国にとってきょうにならない考えを臣民や軍関係者向けに発表した。

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