ハエvs魔王

@hoge1e3

魔王を倒せ

 魔王は、世界を征服した。

 人間たちは魔法により、動物に姿を変えられてしまった。


 ある国の人々は、全員蠅になってしまった。


 しかし、魔法の副作用があったようだ。

 蠅たちは、時間旅行タイムリープの能力を手に入れた!


「よし、過去に戻って、魔王の侵略を阻止しよう!」

 そして、蠅の大群が一斉に半年前に飛び立った。


 それはいいのだが、


「で、俺たち蠅なんかで、どうやって魔王を倒すんだ?」

「みんなでたかれば怖くない」

「ダメだろ」


 そうやって不毛な議論が繰り広げられていたが、そのとき、魔王軍と戦っていた人間たちから、こんな言葉が聞こえた。


「伝説のアロー


 なんでも、それを使えば魔王を一撃で仕留められるらしい。ただし、使えるのは1回だけ。魔王の城に乗り込み、1回のチャンスで仕留めなければならない。

 しかも、その矢は意思を持っていて、使うものに無茶な要求をするとも。

 その噂は人々に広がった……いつのまにか、魔王軍にも。


 魔王軍は、その矢を使わせまいと、魔王の城から繰り出し、周囲の人間の町を襲い始めていた。


 蠅たちは、それをチャンスと見ていた。

 まずは、その「伝説の矢」のありかを突き止め、その矢が刺さっているほこらまで出向いた。


 矢の前に来ると、声が聞こえた。


「ねぇ、私のこと、好き?」

「「誰だっ」」と蠅たち。

「私よ、私」

 しゃべっているのは、矢自身だった。

「私のこと、好きって言ってくれないと、使わせてあげないわよ❤」

 

 矢の分際でしゃべるとは、しかもややキモイ。しかし、に腹は代えられない。蠅たちは大声で、

「「「「好きだーーーー」」」」

「もっと、体で表現して!」

 そこで、蠅たちは、数にものをいわせて、次のような蠅文字フォーメーションを組んだ。


 : ………  :     :  ”

…:…  : …∵∵…  …∵…… 

 ∴  :    :    :    

: :…∴…  …∴…   : ……

: : :    :    :    

 ∵  :  :      : …  

: : :   ………… :   …


 それを見た矢は、

「きゃー、素敵❤ わかったわ、あなたたちに、私使わせてあげる」 


 蠅たちは、矢を持ち運び、一気に魔王の城に向かった。

 魔王は、手下をすべて周囲の町に派兵していていたため、城には魔王しかいなかったのだ。まさに魔王軍のドーナツ化現象。まさか空中から敵が来るとは予想していなかったのだろう。


 そこを、蠅たちは見逃さなかった。

 魔王の城に侵入するや否や、蠅たちは魔王めがけて矢を放った。

「あんたには恨みはないんだけどぉ、大好きな蠅ちゃんたちのために、死んでね❤」

 と矢が言うと、瞬く間に魔王の頭蓋骨を打ち抜いた。


 魔王は倒された。


 こうして、1つの故事成語が生まれた。

 Time flies like an arrow.「時間蠅は矢を好む」

 違う。それは「光陰矢の如し」の誤訳だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハエvs魔王 @hoge1e3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説