11月18日 午前 2時10分 流星

 校長室に集まった俺たち。その理由は様々。ひな板は自分の机でふんぞり帰って教頭を叱り飛ばしている。いつもと同じようにしているだけ。はるかは教頭に転入生と間違えられ、連れてこられただけ。鈴は転入生を呼びにきただけ。俺と白布は転入生のちえみを連れてきただけ。ちえみは俺たちに連れてこられただけ。


「なんで、お母さんがここにいるの」

「それはねぇーっ、何となくなのよーっ!」


 何となくで保健室を抜け出してきていいものかと思う。そんな頭のおかしいやつを雇っているうちの学校って、大丈夫だろうか。心配になる。


「何だか、面白いことがおこる気がしたのぉーっ!」

「そんなこと、おこるわけないじゃん!」


「うんん、教頭先生がひなちゃんに叱られてるわぁっ!」

「それって面白いかなぁ……」


「お母さん、思うの。他人の不幸は蜜の味だって!」

「それは言っちゃダメ……」




 そのあと、俺がちえみを校内見学ツアーに連れて行った。どういうわけかいつものメンバーもついてきた。7人でゾロゾロを校内をめぐる。


「あっちへ行くと更衣室があって、その奥にはプールがあるんだ」

「こっちには被服室と技術室だよ」

「この棟の1階には理科室と調理室があるんやで」

「2階が音楽室と美術室、3階が図書室とパソコンルーム」

「そして4階には、当校自慢のプラネタリウムと天体観察室!」

「ちえみさん、どこか行ってみたいところはありますか?」

「はいっ。ちえみです。音楽室に行ってみたい!」


 俺としてはプラネタリウムに行きたかった。けど、ちえみのリクエストを優先してみんなで音楽室に行った。誰も使っていない。中へ入ると、ピアノがある。ちえみはその前に座り、弾きはじめた。


 どこかで聞いたことのある曲だった。クラシックとかそういうのではなく、ノリのいい曲。最近聞いたけど思い出せない。


「何だか新しいわ」

「それでいて懐かしい」

「ちょっと前に聴いたような……」

「……聴いてないような」

「華やかで激しい!」

「つい、身体を動かしたくなる」


「うどん、おでん、チャーハン、茶碗蒸し、ちゃんぽん、パスタにピッツァ!」


 ちえみは歌も上手かった。


 次に立ち寄った体育館ではダンスを披露してくれた。激しいダンスも踊れるなんてすごい。けどこのダンス、どこかで見た気がする。思い出せない。




 学校が終わってから、はるかの仕事に付き合って、戻ったときにはもう夜の11時をまわっていた。


「みんな、待ってたの?」

「アタ坊よ!」

「お風呂、沸かしてくんなきゃ!」

「布団敷いてくんなきゃ眠れないし」


 ごもっともでございます。俺は慌ててお風呂の支度をした。肉から順番に入浴タイムとなる。番目のはるかが入っている隙に、俺は布団を6組敷いた。これでいつでも眠れる。

 そしてついに俺の番! ゆっくり湯船に浸かる。あれっ? 1人分、多くないかな。数え間違えたかな。


 風呂から上がったのが、日付変わって11月18日の午前2時10分。ようやく就寝できそうだ。みんなはもう寝静まっている。俺は空いている布団を探した。ところが、どこにも空いている布団がない。これは……。


 おかしい。また数え間違えたんだろうか。もう1度確認したが、どこにも空いている布団がない。俺は途方に暮れた。そして、庭へ出て黄昏ていた。




 しばらくして、部屋のあかりが灯った。そして窓が開いて、誰かがこちらに向かってくる。はるかだ。パジャマのまま。寒そう!


「昴くん、眠らないの?」

「はるか。そんな格好じゃ風邪ひいちゃうよ。ちょっと待ってて!」


 俺は慌てて部屋に戻り、上着を持ってもう1度庭に出た。


「お待たせ……」


 そう声をかけたときには、はるかはぼんやりと夜空を眺めていた。だからもう1度声をかけて……というのはやめて、そっとはるかの肩に上着をかけた。


「ありがとう。昴くん」

「星は見える?」


「……うん。流れ星!」

「そうか。そうだったね!」


 今日、11月18日は獅子座流星群がよく見える。午前2時10分。俺は流れ星を見つけて、願い事を唱えた。


 いつかきっと、男の天才になれますように!

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何をやってもダメな俺、男の天才として100点を目指します。天才美少女女優と俺のホットな生活! 世界三大〇〇 @yuutakunn0031

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