11月14日 午後 6時00分 邪魔者たち
さかのぼること3日。この日が俺の計画の出発点。
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肉たちが強羅温泉に同行すると決まった瞬間。1度は詰んだと思った。はるかと2人きりになりたいのに、それはできそうにない。
だが、時刻表をつぶさに見たところ、あることを思いついた。それを用いればわずか1時間ちょっとだが、はるかと2ショットに持ち込める。
身震いがした。俺って頭いい? 天才ではないが、総合力では負けない!
俺の計画は、他のみんなにひと足先に旅館に行ってもらうだけ。中には24時間入湯可能の旅館もあるが、あえてスルー。わざわざ22時までしか温泉を営業していない旅館を探した。あったあった、ここだっ!
俺は直ぐにその旅館を予約。あとは、この事実を誰かに伝えればいいだけ。
ひな板に白羽の矢を立てた。ひな板が1番のお節介、しかもバカ。俺は、困ったような顔をして「オタ番組が邪魔過ぎるよ……」と言ってため息を吐いた。
ひな板は、俺の計画通りに心配そうにしている。
「仕事を邪魔だなんて、昴くんの言うことじゃないわね」
「はぁ。配信後だとどうしても温泉に間に合わないんだよ」
あえてのため息だ。ひな板はまんまとオコ顔になって言った。
「温泉に間に合わないですって! なんて邪魔な仕事なの」
「だろう! 強羅の湯の営業時間は22時までなんだ」
「オタ番組はたしか、20時までだっけ」
「そうそう。だから配信終了後に車を飛ばしても温泉には間に合わない」
俺は、やっちまったぁというような顔をした。ひな板はここでも俺の予想通りに振る舞ってくれた。
「それは、おかわいそうに……」
簡単に俺たちを切り捨てた。
「まさか、ひなは薄情にも俺たちを見捨てて先に行く気じゃないだろうな」
「しっ、仕方ないでしょう! 22時までの温泉が悪いのよ、温泉が!」
「うぐぐぅ……」
こうして同居人たちは、俺とはるかを置いて先に温泉へ行くことになった。配信後に電車で小田原に行く俺たちを、車で迎えに来てくれる。
全ては、俺の計画通りにことが運んだ。
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11月14日。夕刻、18時。
白布は肉たちを車に乗せて、ひと足先に強羅温泉へと向かった。これでもう、邪魔者たちは1人もいない。
俺とはるかだけが東京に残り、もうひと仕事。オタ番組の生配信だ。その配信場所は東京駅の中のホテルの一室。俺とはるかが到着したのは、18時40分。
19時から配信開始、20時に終了の予定。
みんなには、21時発の私鉄の小田急ロマンスカーで小田原へ行くと伝えてある。配信終了が20時だから、そんなものだ。だが実際は、東京発21時45分の新幹線で小田原に向かう。こうすることで、ホテルを出る時刻を約1時間も遅らせることができる!
はやく20時過ぎにならないかなぁ……。
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