第3話 うわああ、と彼は冤罪を主張した
シンヤは家の近所の公園に来ていた。
「あ――――……ビックリしたー……なんなんだあの面接会場……俺、道、間違えたのかなあ。死んだひとの面接ですー、とか、シャレになってないっつーの。そもそも俺死んでねーし」
ネクタイをちょっと緩めて、ひと休み。
ぐたーっとなっているところに、少女が――正確には、405号が――走ってきた。シンヤを見つけ、無言で立ち止まると、彼女はシンヤのそばをうろうろした。
間違いない、と、405号は思った。ゼロさまが探しているのは、このひとだ。
「あれれ、どうしたの、お嬢ちゃん」
シンヤはそうと知らず、405号に人懐っこく話しかけた。自分にも妹がいるから、なんとなく親しみがわいていた。
405号は黙って胸のペンダントを握る。このあたり、彼女はもしかしたら3103号よりも仕事にシビアなタイプかもしれなかった。
「…………」
「どこの子? お父さんやお母さんは……」
シンヤが言いかけた瞬間、405号は、ペンダントに模したブザーのボタンを一気に押した。
ブザーの音があたりに鳴り響く。
「わあ‼」
はたから見たら完全に幼女と犯罪者。シンヤはまたパニックになった。
「いやいやいやいや、俺まだ何もしてないしするつもりもないしできないしうわーおまわりさーん助けてー‼」
もう自分でも何を言っているのかわからない。あわわわわわとシンヤはその場をぐるぐる走り回って慌てた。
「405号!」
3103号と女子高生がその場に走り込んできたのは、シンヤが慌てすぎて文字通り前後もわからなくなってからだった。
「え、なに、このひとなの?」
「うん、そう」
言って、405号はようやくブザーを止めた。
女子高生がとても複雑な表情でシンヤを見ていた。
「エリ!」
「……おにーちゃん……」
何か言いにくそうな女子高生――妹のエリの姿に、シンヤはもっと慌てた。
「うわ、エリ、いやこれは誤解だ、俺なにもしてないんだよう」
妹に不審者扱いされるのはごめんだ、そう思って弁解しようとしたが、エリからの言葉は、想像のはるか斜めを行っていた。
「なんで透けてるの?」
「え?」
「おにーちゃんの身体の……向こうが見えるんだけど」
「透けてるって……なんで……」
身体が透けている? そんなことにすら気がつかなかったシンヤは、改めて自分の手を見る。手のひらを通して、地面が見えた――
3103号は、それはそうだ、当然だというふうに、聞いた。
「え、ゼロさまが言わなかった?」
「なにを……」
「あなたはもう、死んでいる」
3103号と405号がハモって、言った。それはまるで死刑宣告のようだった。
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