第1話 集う戦士たち
「何だこのメンツ……」
ヴィノスは群の施設にある一室に集まった面々を見て苦笑いを浮かべる。
『公国にて、夜になると頭のない死体が転がっているという奇妙な報告があり、群に原因の解明、解決を願いたい』という依頼が掲示板に張り出されていた。
その依頼を受けることになったのはこの部屋にいる8名。
「そんなこと言われましても……弱い人々を守るのは誇り高き竜族の役目ですから。こんな物騒な事件見逃せないだけですよ」
「へぇ……。そんで、そこのおっさんは?」
「……厄魔だ」
おっさん呼ばわりされても特に何も感じないのか厄魔は特に表情を変えずに名乗った。人助けとは無縁そうだとヴィノスは思ったが、ただ自分の技がこういう仕事でしか役に立たないだろうと特に理由もなく受けたと短く厄魔は語る。
「一緒に悪に立ち向かう仲間としてやっぱり自己紹介とかは必要だと思うわァ」
「俺も姉貴と同感だぜ!」
そう言ったマリーとチェリスは部屋にいる面々を見渡した。特に断る理由もないのか誰も文句を言わないのを見て、じゃあとマリーは立ち上がる。
「はぁい、私はマリニェ。気軽にマリーお姉さんって呼んでね〜。こっちは弟のチェリスちゃんよぉ」
「ちゃ、ちゃんはやめてくれよ姉貴……」
恥ずかしそうに頬をかくチェリスをにこにこと見たマリーは軽くぽんとチェリスの頭を撫でた。姉弟仲が良いらしい。「人前でやめて欲しいんだぜ……」と呟いたチェリスはマリーの手を払うことはしない。
困った人がいるのなら手を差し伸べるべきだと依頼を受けたマリーに、チェリスは1人で行かせる訳にはいけないとついてきたらしい。
「はい!私、猫塚って言います!よろしくお願いします!」
元気よく手を挙げた猫塚は名乗ると緊張した様子で周りを見る。今まで依頼らしい依頼を受けたことがなく役に立ちたいと今回受けたらしいが、緊張気味で気を張っている様子だった。
「大丈夫、私のように報酬目当てできた者も居ますから。そんなに固くならずとも貴方は立派だと思いますよ。」
「は、はい!ありがとうございます。えーっと……」
「ノルと言います」
仮面をつけた青年、ノルはそう言って軽く頭を下げた。知り合いなのか、マリーは彼に向かって小さく手を振る。
そして最後に……この部屋の中で空気の淀むような苛立ちを放つものが1人居た。
「……おい、ウィレス」
「僕になんの用?早くその元凶突き止めてぶっこ……いや、痛い目に合わせたいんだけど?」
「殺す気満々じゃねぇか」
ずっと鎌を持ち準備万端と言った様子で殺気立っているウィレスは無理やり笑顔を作りヴィノスにそう言う。この中で唯一自分が狙われたと言う理由で依頼を受けている。
冷静を取り繕おうとしているがどうにも腹が立っているらしく、まだかまだかと急かすのが雰囲気に出ている。
「これで全員か?」
「そうねぇ、私は自分達を含めて8人依頼を受けた人がいるって聞いてるわァ」
マリーがそう言ったのを聞き、ヴィノスはそうかと頷き、ふんぞり返り座った。
「俺様はヴィノス。まぁ俺がこの依頼を受けた理由は……これだ」
そう言ってヴィノスは1枚の白黒写真を取り出しテーブルに投げる。そこには2人の男女が写っており、片方の男性はピースサインをカメラに向けている。
「隠し撮りを頼んだんだが……まぁ容姿が分かれば問題ねぇ。こいつらは今回の依頼に関わってる便利屋、女の方がレンカ、男の方がリオ。俺達の業界じゃ結構有名だ」
「……貴殿は便利屋なのか」
「ああ、なんかあったら俺様に頼んでもいいんだぜ?」
厄魔にニヤリと相変わらずの腹立たしい笑みを向けるヴィノスは話を続ける。
レンカ、リオに大きい仕事が入ったとヴィノスは情報を得たらしい。どんな上手い話だと探りを入れたヴィノスはとある存在を知る。
人の首をこよなく愛する異常者、首刈。
そのコードネームの通り首を刈り取りコレクションする事が生きがいの変態。最近群に保護された兎の獣人に関わりがあるらしいが、深くは聞き出さなかったようだ。
「その首刈が今回の事件の犯人だろう。そんで美形の顔ばっか狙ってるらしいからウィレスも狙われたんだろうな。俺様がまだ無事なのが謎だが……」
「はぁ……、それでこの男女と首刈がなんの関係があったんです?」
何だこのナルシストはとため息をついたトルエノは早く話を進めろと促す。まあ大体想定は付くがと退屈そうに頬杖をついた。
「あいつらに入った大きな仕事ってのが、その首刈の護衛だ。俺があいつらに接触して色々探り入れてやるよ」
「じゃあ原因の解決っていう依頼の半分は実質出来てるんですね」
「ああ、そういうことになんな」
ノルの言葉にヴィノスは頷き小さく息を吐く。
自分が失敗すれば不味いことになるかも知れないなと若干の責任を感じる……まあ失敗してもどうにか出来るだろうと言うのが本音だが。
「では、解決に向けて頑張りましょう!えいえい、おー!」
「おめぇが締めるのかよ」
猫塚の元気の良い声で、作戦会議は終了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます