いつかの未来
ソリッドとリアシアールのカプの話。
現在から100年。
────
「彼女で最後か....」
「うん、みんな死んじゃったね」
ソリッドは悔しそうに、リアシアールはいつも通りの様子でそう言った。ある人物の墓の前で、2人は佇んでいる。
「貴様はこれからどうする」
「そうだなぁ、私の使命は終わったし....死の──」
「死のうかな、などと言ったら我が許さぬぞ」
ソリッドは彼女がどう返事をするか知っていてあえて聞いた。正義を愛するソリッドは自ら命を絶とうとする者は勿論助ける対象となる。それも、100年近い付き合いとなれば尚更だ。
「我と共に歩むか?」
「え〜、やだよ」
「即答ではないか....」
冗談だったがすぐに断られるのも何だなとソリッドは思いながらリアシアールを見る。彼女はただただじっと墓を見つめていた。
「それに....私は幸せになる資格なんてないよ」
「何故だ」
「みんながみんな、幸せな最期だった訳じゃないし」
ソリッドかわそうかと一言返事をしたあと、リアシアールは不意に顔を反対側に向けると兜のスリットを上にあげて目元を拭った。それを見てソリッドは呆れたようにため息をつくと軽くリアシアールをどつく。
「いたっ、何!?」
「そろそろ顔ぐらい見せたらどうだ」
「そっちこそ」
これだけ共に居ながら互いに、まだ顔を見たことがない。今まで特に興味もなかったし、それどころではなかったというのもある。ならばとソリッドはベールの付いた冠に手を掛けそれをゆっくりと外す。
「さぁ、次は貴様の番だ」
「へぇ、あんたってそんな顔してたんだ」
「....聞いているのか」
小さく笑い声を上げたリアシアールは兜を同じようにゆっくりと外し、小脇に抱えた。スカイブルーの瞳がソリッドを捉え、リアシアールは笑顔を見せる。ソリッドもそれに釣られるように笑った。
「…帰るか」
「そうだね」
少しの間見つめ合ったあと急に気まずくなり2人はいつも通り顔を隠すと歩き出した。
森の中を2人で歩く。ソリッドは群の寮から出て今は亡き薔薇の戦士が住んでいた山小屋が居住になっていた。
いつもならソリッドはお得意の技で瞬時に姿を消して去っていくのだが、今日は何故かリアシアールの隣を無言で歩いていた。
「……ねぇ、小屋からどんどん離れてるけど」
「そうだな」
しかしリアシアールも、早く帰れ、今日はどうしたんだと言ったりする事もなく、気にしていない振りをしながら同じように群の施設の方へ向かうソリッドに意識を向けた。
「ねぇ、さっきの事だけどさ」
「ああ」
さっきの事。何を指しているのか理解したソリッドは短く返事をする。
森を抜けるまであと少し、リアシアールは自分の中に焦る様な気持ちがある事に疑問に思いながらも、どこかでその答えを知っているような不思議な感覚に言葉を紡げずにいた。
「一緒になるか」
ソリッドは立ち止まりただ一言そう言った。リアシアールも同じように足を止め振り返りソリッドと向き合う。
リアシアールは無言でソリッドを見ている。互いに相手の表情は見えない。が、その心はわかるような気がした。
「ははっ。またそんな──」
「冗談ではない、本気だ」
森の中、風に揺れ木の葉の擦れる音だけが聞こえる。
どちらかからだっただろう。同時だったかもしれない。
相手の顔を隠す邪魔なものを取り払い地面に捨てると、唇を合わせる。
何度も、何度も相手を心から求めるように口付けるとリアシアールはソリッドの首に腕をまわした。
「──はぁ……愛の言葉は?」
「要らぬだろう」
鼻で笑ったソリッドにリアシアールはデコピンで返事をして歩き出す。なんなのだと額を摩りながら、ソリッドはリアシアールの隣に並ぶ。
「おい、聞くが何が決め手だ」
「そんなの決まってるでしょ。あんたもそうなんじゃないの?」
「「……顔」」
今さっきそういう関係になったはずだが、少し前に歩いていた雰囲気と変わらない。
しかし2人の向かうのは群の施設ではなく、山小屋だった。
『いつかの未来』
―私の隣を歩むのは― END
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