ライバル

偶然、それは日常に多く紛れている。

この出会いもそれだった、剣を2つ帯刀した白髪の女戦士と長いランスを持った身長2m越えの男。

どちらも戦闘後なのか所々に血が付着しており、医務室の前で遭遇するとピタッ両者動きが止まり見つめ合う。


「…アークノイツか?」

「ロザリエ…?」


互いが自分の想定した人物だと理解するとなんとも言えない空気になる。

リーベス家とロストル家。双方先祖代々戦士職に着いており、昔から付き合いがあり言わばライバルのような存在だった。

その関係はロザリエ、アークノイツも例外ではない。何かあれば直ぐに競い合い、どっちが勝った、負けたかで散々揉めてきた仲である。

しかしその関係も、アークノイツの家族が亡くなり彼自身も消息不明になった時から消え去ってしまった。てっきりアークノイツのは死んだものだと思っていたロザリエはこうしてまた再会できたことに内心喜んでいた。


「まさか生きていたとはな、意外としぶといものだ」

「……そう簡単には死なん」


相変わらず表情の読めない鉄仮面ぶりにロザリエは眉間に皺を寄せつつ、しかし少し昔とは変わったように感じる雰囲気の正体を暴こうと探りを入れる。


「今まで何をしていた、群には最近入ったのか?」

「ああ……生きるのに必死でな」


アークノイツはロザリエの右腰に下がっている剣を見てすっと指を指す。その意図が読めたロザリエはこれかと呟き柄を軽く撫でた。


「ボロだろう、数年放置していたものでな」

「お前程のものが何故」

「元は私の剣ではないのだ」


そう言って軽く笑うと、アークノイツはそれ以上は何も聞かなかった。それを見て自分も詮索は辞めようと思ったロザリエだが、ふとアークノイツの鎧をじっと見る。

かなりの代物であろうアークノイツにお似合いの丈夫そうな鎧は1つ気になる点がある。


「何故右肩だけ鎧を外している、バランスが悪いぞ。お洒落か?」

「違う、これは……」

「これは?」


彼は無言のまま視線だけをどこかに向けて言葉を探していた。するとみるみるうちに頬が赤らんできて顔を片手で覆うとくるっとロザリエに背を向けた。


「な、なんだ?」


その時、自称恋愛マスターであるロザリエの直感が働きにまぁと上がる口角をそのままにアークノイツの前に周り鎧をペンペンと叩く。

この反応は、あの堅物鉄仮面くんにもそういう感情があるんだなとロザリエは心底嬉しそうに堪えるように笑う。


「恋か?恋なのか?何かそれが関係しているんだろ、ん?」

「や、やめろ……」

「はははっ、そんなに顔を赤くして…そうか、お前にも春が来たか」


ほれほれとからかうロザリエの脳天に手甲を嵌めた拳での一撃が落とされるとアークノイツはマントを翻し早足でどこかへ去っていった。

頭に出来たであろうたんこぶを擦りながらも、ロザリエは収まらないにやにや顔のまま耳まで真っ赤なアークノイツの背を見送った。

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