第2話 「ごめんなさい、私やっぱり…」

そんなこんなで熱海旅行が決まり、3か月記念日行くことになった。

旅行先の熱海では海に入ったり、熱海プリンを堪能したりと充実した時間を過ごした。

ホテルに入り、少し早いディナーのコースを食べたらお楽しみのバスタイム。

「あー、おいしかったな。」

「私あんなおいしい夕飯食べたの初めて。ヤマグチ君と最高の夕飯食べられてよかった。」

「大げさだな。ところで、風呂は部屋の露天風呂だろ?」

「え?大浴場じゃないの?」

「そんなわけないだろう。せっかく露天風呂付きの部屋にしたんだから。」

「え、じゃあ…」

「覚悟しとくんだな。」

そんなんじゃ部屋につく前に私は緊張で潰れてしまうよ。

それは流石に覚悟してきて可愛い下着も持ってきた。

でもあんな風に言われると、急に実感がわいてきて今からすると思うしかない。

いや今からするのだから実感と言うより現実にこれから起こることだしって、私何考えているんだ?

頭の中を終わらない考察でいっぱいにしていると部屋についてしまった。

「ユウコ、先に入ってな。俺、あとから入るから。」

私が「えー…」と固まっていると、「それとも背中流すか?」とヤマグチ君は言った。

「それは遠慮させてもらいます。」


私が体を洗い終えるとすぐに彼は入ってきた。

身体のどこを隠すわけでもなく、堂々と私の目の前で体を洗っていく。

彼の割れた腹筋の腹が私の胸の奥をそっと締め付ける。

何とも私にはもったいない。

彼はしっかりと体を洗い終えると私がすでに浸かっている湯船に入ってきた。

私は恥ずかしくて少し広い湯船の端っこに丸くなる。

「おいで?そんなに遠くちゃ、一緒に入った意味ないだろう?」

私は顔が真っ赤になるのを感じた。

振り返って彼のもとに移動しようとすると彼の熱い胸板は私の小さな背中に押し当てられた。

肩から首、鎖骨のあたりへその長い腕は回される。

「ユウコ、大丈夫。俺は君を大切にすると決めたんだ。」

そういうと彼は私を正面に向かせた。

「うん。可愛い。」

そういうと彼は唇を重ねてきた。

私の薄い唇にその色っぽい唇を重ねて、その深みはだんだんと大きくなっていく。

「……んっ、」

私の息が荒くなってきたころ、彼の息も上がっていた。

いい雰囲気になったので次の段階に移ろうと彼は私の背中を撫でた後、胸に手を当てた。

そしてゆっくりと優しくとも、いやらしい手つきで揉みだした。

私の身体の中心の方ではもうすでに熱いものが溢れ出していた。

だが、彼が私の中心に手を這わせた時。

「いやっ。」

私はなんだか分からなかったが、すごく嫌になったのだ。

さっきまで彼を受け入れる気持ちが大きかったのに、無性に怖くなった。

彼が街で見たいやらしいことしか頭にない最低で汚いおっさんにしか見えない。

彼は手を止めた。

「どうしたの?」

「ごめんなさい。先、上がる。」

泣いてしまった私の顔を見ると彼は何も言わず、一度無性私を優しく抱きしめると言った。

「大丈夫。ゆっくり行こう。」


「それでそんなに落ち込んでいるのね?」

ユウコはあれからヤマグチが風呂から上がる前に床に就いた。

そして旅行中そういう雰囲気になった場面があっても一生懸命雰囲気を崩した。

それは怖かったからである。

旅行から帰ってきてしばらく時間が経ったが未だに彼の眼をしっかりと見られることはなくなった。

会わないとかそういう意味ではなく、怖くて見られないのだ。

ユウコは帰ってきてからずっと元気がなかったので、友人のリコは気を利かせて話す場を作ってくれたのだ。

「本当は私だって、愛の時間をまったりと過ごしたいのよ?でも怖くて。」

「なにが怖いの?そこが分からなければ克服の仕様がないでしょ?」

「ヤマグチ君の目が怖かったの。今にもすべて奪われてしまいそうな感じがしたの。」

「そういうものなんじゃないの?セックスって。」

え?と、振り返るとそこにはリコの恋人でユウコの友人でもあるハルタがいた。

「まぁ、ユウコちゃんがそう思ったのならあいつは下手糞なんじゃないかな?」

「ちょっと、あんた言い過ぎ」

リコになだめられて口をつぐんだがハルタはまだ言いたげだった。

ハルタは人間的に、同性としてヤマグチを理解できないらしい。

それと同じようにヤマグチもハルタのことを毛嫌いしていた。

その話はハルタの「まぁ、何も言われなかったってことは平気なんじゃないかな?」という言葉で収まった。

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