醜(しゅう)
玉井冨治
第1話 「今度、いいよね?」
朝、5時きっかりに目を覚ます。
珈琲を入れて、トーストを焼いてゆっくりと胃に流し込む。
6時半、家を出て少し遠い駅まで歩いていく。
今日は晴れ。
閑静な住宅街を15分歩くと駅に着く。
朝の満員とまではいかなくも少しだけ混んだ電車に更に10分揺られる。
その景色を眺めながら愛おしい彼のいる学校への電車を楽しむ。
家を出てから30分程、学校の近くのカフェに入る。
そのカフェは朝早くから開店していて、7時半でも空いている。
静かな空気に珈琲の苦い香りが漂ってくる。
「おはよう。今日も来たんだね。」
「おはようございます。日課ですから。」
こんな会話をマスターとしたら、ここでは暖かいはちみつレモンを飲む。
それをついばむ様にに啜って飲みながら講義の予習をするのが私の朝のルーティン。
「ユウコ、おはよう。待たせちゃったかな?」
私の愛する人、ヤマグチ君。
彼とは毎朝大学の正門前で待ち合わせしている。
同じ学部で専攻も同じだから講義やゼミを一緒にしている。
彼と私は大学では大抵の時間を共に過ごしている。
でも、友達付き合いも大切だから互いにそういう時間も作るようにしている。
まさに理想の大学生活。
そんな私達は付き合って早3か月。
もうそろそろそういう関係になっていてもおかしくない。
…世間一般的にはね。
でも私は少し違う。
どうしても臆してそういう雰囲気になると逸らしてしまうんだ。
この私の性質のせいで私達はまだキス止まり。
でも次は頑張るんだ。
「ユウコ?ちょっと話があるんだ。」
食堂で昼食をとっていると、ヤマグチ君はユウコに話しかけてきた。
友人達と昼食をとっていたので、少し気まずそうだ。
「じゃ、私はお先に失礼するね?」
了解と、言う友人をあとにお盆を持ったヤマグチ君と新たな席へ移動する。
「どうしたの?」
「俺達、もう少しで3か月だろ?どっか泊りに行かないか?」
このお誘いは、つまりそういうことだよね?
ここは断ったらまずい!
絶対行こう。
「うんっ。行きたい。」
「熱海に温泉旅行くってどうかな?」
「いいねいいね。でさ、部屋に露天風呂付いていたりして。」
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