後編

少し待って、彼が落ち着いた所で話し始めた。


「ひっく、な、泣き出してすみません。こんな自分に彼女が愛想を尽かしても仕方ないですよね。しかも酷い事を言ってしまった。本当にバカでした」


「最後に言っておきなさい。どうして好きだった妹に酷い事を言ったのか」


「・・・部活の歓迎会の時に、ギャルっぽい奴が絡んできて、やんわり断ったんだけど次の日から何かと絡んで来たんです。避け続けると、仲間を連れてきて複数人で付き合えだとか、デートしろとか言ってきて、無視し続けるとSNSで俺の悪口や女を弄んで捨てるとかあることないことを載せて嫌がらせ始めたんだ」


私とお姉ちゃんは呆然した。最近は、私もバイトで忙しく幼馴染の彼の現状を把握していなかった。まさか彼がこんな事になっているなんて!


「最近は夜も余り寝られなくて、すでに警察と学校にも相談しているんです。でもこんなこと、君に言える訳もなく秘密にしてた。・・・言い訳になるけど、ギャルっぽい女の子の顔がみんな同じに見えてしまって・・もう放って欲しくて酷い事を言った。ごめん!本当にごめんなさい!!!」


彼は私に土下座をして謝った。


お姉ちゃんもどうして良いのか分からずに、私と顔を何度も合わせる。


「わかったから!もう謝らないで!」


彼の手を握って立ち上がらせる


「貴方の事情はわかったわ。取り敢えず、今日は帰って?お互いに気持ちを整理する時間が必要だと思うの」


「・・・ああ、そうだな。あの、酷い事を言って本当にごめん。本当に、昔の君だと気付かないくらい綺麗になったんだね。どうして気付かなかったんだろう?」


彼はそういって帰っていった。


「はぁ~、あの子も大変だったのね。悪いことしたわ。もう少し話を聞いておけば良かったと私も後悔してる」


お姉ちゃんも強く言い過ぎたと反省しているようだ。


「ねぇ?貴女はどうするの?」


どうするって、どういうこと?私が首をかしげるとお姉ちゃんは苦笑いをしながら私に言った。


「彼の事がまだ好きなのかどうかって事よ!そして彼の気持ちに答えるのかってこと」


お姉ちゃんの言葉に、私の顔が赤くなる。私はまだ彼の事が好きなんだろうか?自分でもわからなくなっていた。彼に綺麗になったと言われて正直、嬉しかった。でも、それは単純褒められたから?好きな男の子に言われたから?どうなんだろう?


すると、お姉ちゃんから釘を刺された。


「貴女がどんな答えを出すのかわからないけど、1つだけ注意しなさい。間違っても同情してうなずいてはダメよ?しっかり彼の事を考えて、自分の気持ちに正直になりなって考えてね」


そうだ!迷惑な女の子に付きまとわれて、傷付いた彼に同情して答えを出しても、もっと彼を最終的に傷付けてしまうだろう。

本当にどうすれば良いのよ!!!高校に入って、綺麗になることだけを考えていた時はもっと楽しくてドキドキワクワクしていたのに!どうしてこんなに悩まないといけないの?

告白の?返事する難易度が凄く上がった気がするのよ。世間一般の方々はこんな難問をクリアしてゴールインしているのかね?


ああ、ダメだ。考え過ぎで熱が出てきたみたい。


「さっきも言ったけどすぐに答えを出しても良いのよ?ほら、部屋に戻ってゆっくり考えなさい。それと、休み明けからは学校行きなさいよ?」


お姉ちゃんの言う通り、これ以上学校を休むヤバいので学校も行かないとなぁ~


私は部屋に戻ると、返事の答えを考えた。


結論!


答えが出ません!


土日の休み明けには学校にも行かないといけない。彼に会う確率が高い。彼に会ったらどんな顔をすれば良いのだろうか?わからない。私はまだ幼馴染の彼の事を本当に好きなんだろうか?


次の日になっても答えは出なかった。でもお姉ちゃんがヒントをくれたの。


「んーー、恋愛は人それぞれだから決まった答えは無いのよ?でも、貴女がこんなに悩んでいることが答えなんじゃないかしら?」


コソッ

「好きでもない男の子の為に、こんなに悩むものかしら?」


お姉ちゃんは私の耳元で小さく囁くと、自分の部屋に戻っていった。そして私はー


休みが終わり月曜日、私は学校を休んだ。でも、家に居たわけじゃ無かった。またお姉ちゃんにお願いして美容院に行ってたの。お姉ちゃんの行き付けのお店だから学校を休んで行っても追及しなかったので助かったよ。世間一般の良い子は真似しないでね!


彼のスマホに、L○NEで連絡して近所の公園に

放課後に来て貰う事にした。


学校を休んだ私は、少し早く着いて彼を待った。不思議だ。公園のブランコに座って目を瞑ると頭の中がすっきりして落ち着いた気持ちでいられた。前回は放課後まで、まだかまだかと落ち着かない状態だったのに・・・本当に不思議!


「はぁはぁ、待たせたかな?」


目を開くと彼が居た。走って来たのか息が上がってる。約束の時間より早かった。


「ッ!髪型を変えたんだね。凄く似合ってる。お世辞抜きで・・・綺麗だ」


私は美容院でストレートパーマを掛けてもらい、先日までの盛ってる髪型を止めていた。中学の時の地味子に戻った訳でもなく、第2のイメチェンをしたのだ。


「・・・ありがとう。来てくれて嬉しい」


言葉が続かない。それは彼も同じ見たいだ。


「私、この数日考えたよ!いっぱい、いーぱっい!考えた。貴方の事が好きなのかどうなのか」


彼の喉がごくりっとなる。


「私ね、貴方に好意を抱いていたのは本当だった。でも今、冷静に考えてみると愛情の好きよりも友達しての好きの感情が強かったと思うの。英語で言うとloveよりlikeだったのよ。だから、告白する事を決めて綺麗になろうと決心したとき、その過程を楽しんでしまったの。貴方が苦しんでいるとき、私はバイトに充実感を覚えて、新しい交流に胸を踊らせていたの」


彼は黙って私の言葉に耳を傾けている。


「お互いに長くそばに居すぎて、愛情と親愛がわからなくなっていたと思うの・・・だから、私は新しい自分に生まれ変わった!もし貴方がまだ前の私を好きでいるなら忘れて欲しい。そして、新しい私と1から始めてくれませんか?」


私も最後の方は恥ずかしくて赤くなっていた。そして彼は─


「・・・初めまして!今、会ったばかりですが、一目惚れしました。俺と付き合って下さい!」


夕日が二人の影を長く染める。二人の恋愛はここから始まる


FIN

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恋する乙女は美しくなる naturalsoft @naturalsoft

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