第14話
どのくらいたったことでしょうか。ふと気がつくと、顔の上に何やら暖かいものがしたたっています。
「ここは、どこだろう。ふしぎと息が苦しくない。もう、おれは死んでしまったんだろうか。」
一作はそう思いながら、そっと目をあけました。すると、そこには涙を流しながらじっと見つめている、あけみの顔がありました。一作は、あけみの膝に頭をのせて、横たわっていたのでした。一作は、おどろきのあまり声も出せませんでした。でも、そのうちに涙があとからあとから流れてきました。一作は、あけみの手を握りしめながら言いました。
「生きていてくれたんだな。」
あけみはだまってうなずきました。
そこへ、だれかがこちらへやってくる足音がしました。一作が足音のする方へ目をやると、一人のおじいさんが静かに歩いてくるところでした。まっ白な髪で、長くてやっぱりまっ白なひげをはやした、やさしそうで、それでいてたいそう威厳のある顔立ちをしたおじいさんでした。夏の透き通った川の水のような、深い藍色の着物を着ています。
おじいさんは一作と目が合うと、にっこりして言いました。
「どうじゃ、気がついたかな。わしはこの川の神じゃ。去年の今頃、この川に身を投げたあけみがあわれでな、助けてわしの屋敷に住まわせていたのじゃ。」
一作は、あわてて起き上がりました。そして川の神様にお礼を言おうとしましたが、神様は手をふって一作を黙らせ、また話し始めました。
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